第二十三話 撃滅
こんばんわ!
さぁ、日焼けで痛いですが、負けずに書きます!
ホムルクス郊外にある廃れた研究所跡。ウインメタル及びアンドレイ率いるユジノサハリンスク警察署バイオ怪物抹殺部隊、そしてアーニャは襲いかかる改造生物達をなんとか撃退し、最深部までやってきた。そして、今回の事件の黒幕、ユリー・ザガースキーと遂に対峙したのだった。
「随分手こずらせてくれたね、ザガースキー。化物との戦闘は僕でも少々骨が折れたよ。負けなかったけどね。でも、何も関係がない街の人を巻き込んだのは許さないよ。豚箱送りにしてあげるから覚悟して。」
ウインメタルはメタリックガンの銃口ををザガースキーに向けながら挑発する。すると、それに続いてアーニャも…。
「あなたねぇ!私の…私の大切な友達があんたの作ったコウモリ野郎に殺されたのよ!この恨み、一生忘れない!さっさと捕まって地獄に落ちろ!このろくでなし科学者!」
涙を流しながら、これまでの恨みや悲しみを吐き出すようにザガースキーに怒鳴る。しかし、ザガースキーには反省の色はなく、まるで他人事のように笑みを浮かべながら話始めた。
「ハッ!うるさいね。殺される方が悪いのさ!あのコウモリ型のバイオビーストを作るには多少手こずりはしたが、私的には中々の傑作だよ!その私の可愛こちゃん達を尽く葬ってくれたウインメタル。貴様だけは許すわけにいかないな!」
不敵な笑みを浮かべならふてぶてしくその場に佇むザガースキーに、今度はアンドレイが手に持っていた拳銃を構えながら言った。
「ザガースキー。お前、やはりあの事を根に持っているのか?お前が前に出した遺伝子改良による食糧難解決案。それが批判され、認められなかった事に対する腹いせなんだろ?」
皮肉めいた口調でザガースキーに疑問を投げかけるアンドレイ。そしてザガースキーも相変わらずふてぶてしく答えた。
「せっかく俺が食糧難を解決してやろうと思ったのに、やれ『遺伝子汚染だ』『生物虐待』だの言って私を追い込みやがって!だから私は教えてやったのだよ!お前たちには何もできない。力を持つ私こそ、世界の上に立ち、貴様達を牛耳る資格があるとな!」
「ふざけるな!もうあの化物は全部やっつけた!お前もすぐに逮捕してやる!」
アンドレイがそう言うと、ザガースキーは動揺するどころかさらに笑いながら言い放った。
「ハッハッハ!私を逮捕するだと!そんなことがお前達にできると思っているのか?」
「僕がいるからね。殺しはしないけど、少し痛い目に遭って貰おうか。」
ウインメタルがメタリックガンで威嚇射撃をしながらザガースキーにそう言う。しかしザガースキーは涼しい顔で言った。
「痛い目にあうのはウインメタル、貴様の方だ!」
「何だと?」
ザガースキーの言葉に疑問を持つウインメタル。だからその答えはすぐにわかった。
「私の遺伝子改造、人間に対してはできないと誰が言った?」
「まさか…貴様!」
ウインメタルの予感は的中していた。ザガースキーの体の筋肉がみるみるうちに増え、着ていた衣服を破くほど筋骨隆々な体格になり、手足には鎌のような鋭く長い爪が生えてきた。そしてそして、身長も急激に伸びていき、あっという間に4メートルはあろうかという巨体に変化。さらに顔も鬼のような醜悪な形へと変貌し、頭には二本の角のようなものが生えてきている。
「ハッハッハ!どうだウインメタル!これでも私を逮捕すると言えるかね?」
「やはり貴様、自ら遺伝子改造をしたというのか?」
先程の人間体とは見る影もないほど原型を留めていないザガースキーにウインメタルは動揺しながら聞く。
「そうだとも!私は遺伝子改造術を使って可弱いコウモリ、カブトエビ、トカゲに力を与えた。だが、この改造術によって最大の力を手に入れられるのは私だ!私のような選ばれたものだけなのだよ!ハッハッハ!」
鬼の様な姿になったザガースキーは尚もウインメタル達を見下ろし、高らかに笑っている。そして、鋭い爪が生えた右手を振りかざした。
「まずは雑魚から葬ってやる!覚悟しろ!」
「みんな、避難して!」
ザガースキーの右手が襲いかかるのを見て、ウインメタルがアンドレイやアーニャ達に撤退を促す。辛うじて避けて部屋の外に避難したアンドレイ達に、ウインメタルは言った。
「ここは危険だよ!あいつの始末は僕がやるから!」
「そんなバカな!」
「そうよ!下手したらあんた、殺されるのよ!あんたを失ったら、今度こそこの街は終わりよ!」
ニコライとアーニャは必死でウインメタルを静止した。しかし、ウインメタルはと言うと…。
「大丈夫。僕を誰だと思っているの?無敵の甲鉄戦士ウインメタルだよ!倒して生きて帰ってくるし、街を滅ぼさせはしないから安心して!」
そう言ってマキシムダガーとメタルウイングも展開し、ザガースキーに飛びかかる。しかし、それをすぐに左手の巨大な爪が襲い掛かってきた。
「死ねぇ!」
「よっと!」
ギリギリで躱したウインメタル。上を見上げているザガースキーを天井付近から見下ろしながらウインメタルは出方を窺う。
「すごいスピードだね。でも当たらなきゃ意味ないけど。」
「このガキが!舐めやがって!」
ザガースキーはその強靭な足で巨体にも関わらずウインメタルに手が届きそうなほどジャンプしてきた。ウインメタルはそれをあっさりと躱し、背中に回り込み、マキシムダガーを切りつけた。
「ぐぁぁ!」
背中から血を流し、床に落ちてきたザガースキーに、ウインメタルは言った。
「決めるつもりだったけど、意外と硬いんだね。だったら次で決めるまでだよ!」
「ふん、そうはいくか!これでも喰らえ!」
ザガースキーはそう言うと、緑色の液体を牙がびっしり生えた口から吐き出してきた。液体はウインメタルに向かっていたが、彼はこれをあっさりと躱す。
「血迷ったみたいだね。そんな攻撃じゃ、僕を傷つけることもできないよ。」
「そいつはどうかな?後ろを見ろ!」
「何?」
ウインメタルが後ろを見ると、先程避けたことにより液体が直撃した壁にポッカリと穴が空いていた。しかも、ここの壁はそれなりに頑丈な合金なのにである。穴の縁から湯気のようなものが出ていることから、これが強力な溶解液であることはすぐに分かったウインメタルだった。
「今度は貴様も跡形もなく溶かしてやる!覚悟しな!」
そう言うとザガースキーは溶解液を連射来てきた。ウインメタルの方も当たるまいと、薄暗い空間の中を飛び回りながら攻撃を回避する。そして、再び背中側に回り、攻撃しようとしたその時だった。
「空きあり!」
ザガースキーがそう言うと、肩の部分から更に二本の腕が生え、そのうち右側方がウインメタルを掴む。
「うわっ!」
四本腕になったザガースキーに掴まれ、ウインメタルは完全に身動きを封じられた。
「このまま握りつぶしてやる!死ね!ウインメタル!」
力を込めてウインメタルを握りつぶそうとするザガースキー。その衝撃でウインメタルのメタリックアーマーが軋み始め、バイザーには『Emergency!』の表示が出る。
「このままやられるわけにはいかない!仕方ないけど、あれを使うか。」
ウインメタルは握られたままマキシムダガーに思考を集中させる。すると、全身のアーマーが突如青白く輝き始めた。
「な、何なんだこれは?」
ザガースキーの方も何が起こったか理解できずに動揺する。そして、ウインメタルが声を上げた。
「行くよ!そのふざけた思考回路は吹き飛ばさないとね!エナジーバスター!フルスキンモード!」
ウインメタルがそう言うと、アーマーは更に輝きを増し、ものすごい爆発が起こった。
「ぐぁぁ!」
ザガースキーは悲鳴を挙げながらその場に倒れ込む。
「ふう、エネルギーたくさん消費するからあんまり使いたく無かったんだけどね。」
そう言ったウインメタルの目の前には、右半身が吹き飛んで殆ど無くなりながらも辛うじて生きているザガースキーの姿があった。エナジーバスターフルスキンモードとは、本来マキシムダガーのみを媒体としたエナジーバスターのシステムを、全身のアーマーに接続することにより、全体をエナジーバスターの状態にするものである。威力は普通のエナジーバスターの30倍近くになるが、エネルギーの消費は更に激しく、一度戦闘中に、使うと、もう一度その戦闘で使うのは不可能と言っていい。そんなギリギリな状態になりながらも、右半身を失って半ば瀕死一歩手前まで追い詰められているザガースキーにメタリックガンを向けた。
「やめろ…俺が…俺が悪かった。刑務所でもなんでも行く!だから殺さないでくれ!」
ザガースキーは必死にウインメタルに命乞いをした。しかし…。
「お前が人間をやめなければ逮捕で済ませるつもりだったけど、もうそれじゃあ人間に戻れないよね。それに、お前が殺した街の人々の命は何をやってももう戻らない…。消えろ、ザガースキー。ウインカノン!」
エネルギーをほとんど使い果たし、最後の力を振り絞ってウインメタルはエネルギー光弾を放つ。それはザガースキーの脳天を貫通し、中枢をやられた彼は完全に沈黙。ウインメタルは辛うじて勝利を手にしたのだった。
「終わったのか…?」
「終わったのよね…?」
静かになったのを見計らって、アンドレイやアーニャ達が物陰からぞろぞろと出てきた。
「ああ、終わりだよ!これで平和が戻ったし、僕も日本に帰れる。」
すべてのエネルギーを使い果たし、アーマーも解除された隼人が疲れた表情でそこにいた。かくして、サハリンを恐怖に陥れ続けたバイオビースト事件は終焉を迎えたのだった。
こんばんわ!
遂に決着がつきましたね!
隼人くんももうすぐ帰国します!
ここまで書くのに結構長引きましたが、なんとか書き終えられたので良かったです。
それではまた次回。




