第十九話 次の場所へ
こんにちわ!
二週間ぶりの更新です!
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市街地の下水道にて巨大なカブトエビの形をした怪物との戦闘で、ウインメタルははじめは苦戦しつつ、見事に勝利を収めた。そのウインメタルは倒した巨大カブトエビの死骸を片手に持ち、アンドレイたちのいる地上に上がってきた。
「お待たせ!倒してきたよ!こいつが今回の犯人だ!」
ウインメタルがドサリと巨大カブトエビの死骸を路上に放ったので、アンドレイを含む現場の捜査員たちや被害を受けた水道局の職員たちは驚きのあまり黙り込んでしまった。
「こ、こいつが…。こんなのが我々の見えないところにいたなんて…。」
水道局職員が、怯えたような表情でそう呟いた。巨大カブトエビは、ウインメタルの攻撃によって体のあちこちが焦げているが、原型は留めている。
「手強かったよ。甲羅は硬いし動きは素早いし、おまけに水生生物のくせに陸でも動ける。これ以上被害が広がったら間違いなくこの街は滅びるね。」
ウインメタルは装甲を解除しながら冷静にそう言う。しかし、装甲が解けて現れた隼人の表情はどこか疲れ切っていた。
「しかし、よりによって今度は下水道か。おまけにまた犠牲者が出てしまった。一体どこの誰がこんな酷いことをしているんだ。」
アンドレイは唇を噛み締めながら半分怒りを込めた表情でそう言う。そして横にいたニコライも同じように憤りを込めた表情で口を開く。
「全くです!罪もない人間を次々に襲撃して平和を乱すなんて…。警部、隼人くん!一日も早く黒幕を捕まえましょう!」
「ああ!」
「勿論だよ。」
アンドレイと隼人もニコライの言葉に頷く。すると、その横から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「う…。なんて邪悪な生き物なの。あのコウモリもすごかったけど、今度のこいつはそれ以上ね。」
声のする方向を見ると、やはり隼人の見覚えのある顔がそこにあった。
「アーニャ…。」
そう、殺された友人の報いを晴らすために一人奔走するジャーナリスト志望の赤毛の女子大生、アーニャ・スルツカヤがそこにいた。
「また来たの?アーニャ。危険な真似しないでってこないだ言ったばかりなのに。」
「なによ!こっちだって事件を解決したい気持ちは同じなんだから!」
「今は死んでるけどこいつは僕でも手こずったよ。もし居合わせたらアーニャが殺されていたかもしれないんだよ。」
「お気遣いどうも!でも私は死なないから!それに倒せたんならいいじゃない!」
「そういう問題じゃないよ。」
「とにかく、私は事件の真相を知って黒幕を暴いて死んだ友達の無念を晴らすまで諦めないから!」
「やれやれ…。」
一度殺されかけたのに懲りもせず現れたアーニャに隼人は溜息をついた。
「しかし、こいつも改造されてるんでしょうね。」
「うん、さっきの戦闘中にデータは取らせてもらったから今から言うね。」
ニコライの発言に隼人はそう返し、端末を開いてハイパーサーチでの分析結果を読み始めた。
「こいつは見た目通り、カブトエビを改造したやつだよ。それと、微量だけど放射性物質が体内に含まれているね。あと、血液中の酸素濃度が高い。普通に暮らしていればこんな数値はあり得ないよ。」
「放射性物質に高濃度の酸素だと?」
隼人の分析結果にアンドレイは首を傾げた。
「それじゃあ、こないだ田中さんとやらが言っていた…。」
「うん、可能性は高いね。」
隼人は冷静に返す。すると隼人の連絡用端末が鳴り響いた。その相手は勿論田中だった。
「やぁ、田中さん。」
『おう、隼人!調子はどうだ?ん?何だ後ろのデカいカブトガニみたいな奴は?』
「新手だよ。手強かった。後でデータ送るから。」
『そうか、ありがとう。大変だったんだな。』
田中は画面越しに隼人を労った。すると隼人が田中に聞いた。
「連絡してきたってことは、何か分かったからでしょ?」
『そうだ。実は犯人として有力な人物が浮かび上がったんだ。』
「そうなんだ。」
「ほ、本当ですか?詳しくお願いします!」
冷静に返す隼人に対し、アンドレイは身を乗り出して画面越しの田中に食いついてきた。そして田中は端末の画面にその犯人らしき人物の顔写真を映し出した。
「こいつか。随分危ない顔してるね。」
隼人は画面を睨みながらそう言った。
『こいつの名はユリー・ザガースキー、55歳。元々モスクワ科学技術大学の生物学研究所に所属していた科学者だ。食糧難対策として遺伝子改良による生物の大型化、多産化の研究で注目を浴びていた。』
「知ってる?アンドレイさん?」
「ああ。当時は国内でニュースになっていた事もあったな。これで畜産・養殖業界に革命を起こせるかもしれないとな。」
アンドレイが隼人の質問に答え、田中はそのまま説明を続けた。
『一時はそれで食糧難の革命児と言われて賞賛されたこともあった。しかし、実際は放射能と高濃度酸素を用いた強引な遺伝子改造による大型化だとわかると、健康問題や人道的問題を考えると危険だと判断され、学会は彼に研究の中止を求めた。しかし、彼は断固拒否し、自ら学会を去り、今も詳しい行方は分かっていないそうだ。』
田中の質問にその場にいた全員が息を飲んだ。確かに、ザガースキーの研究はロシア国内でも一部で話題になっていた。畜産業界としては、これまでと同じ予算でより大きい家畜を育てられるし、それにより大量生産が可能になり、売上に大いに貢献できる可能性があったからだ。しかし、ザガースキーは行方不明になり、計画も中止されたまま、世間は彼のことをもはや忘れかけていた。
「それで、その腹いせに今回改造した巨大怪物を使って攻めてきたってこと?」
『あくまで推測だがな。可能性はある。』
田中は隼人の質問に対し、冷静に返した。すると今度はアンドレイが質問した。
「そいつが今どこにいるのか分からないのか?目撃証言は無いのか?」
『まだ完全に掴んだわけではないが…。ホムルクス近郊で似たような人物の目撃証言及び、巨大生物も目撃されている。』
「それだけ分かれば十分だよ田中さん。ありがとう。」
隼人はそう言って端末を切った。そしてアンドレイたちに向かって言った。
「じゃあ、行こうか。」
「まて、どこに行くつもりだ隼人くん?」
「決まってるでしょ?ホムルクスだよ。」
「な、何だと?本気で行くつもりか?」
隼人の提案にアンドレイは驚きを隠せなかった。しかし隼人は相変わらず冷静に言った。
「少しでも可能性があるなら動くべきだよ。」
「だが、そんなあっさりと行っても…。」
「隼人の言う通りよ!」
アンドレイの言葉に横槍が入った。発言したのはアーニャだった。アーニャは真剣な表情で続ける。
「このまま黙って過ごすなんて私は嫌よ!一日でも早く解決するためには飛び込んでいくしかない、そうでしょう?」
「ま、まぁ確かにそうなんだが。」
アーニャの言葉にアンドレイはたじろいだ。
「アーニャの言う通りだよ。とにかく行こう!もうそれしかないんだから!」
隼人もアーニャの意見に賛成だった。アンドレイ隼人も悩んだ末…。
「分かった!ホムルクスまで行こう!だが、準備するのも大切だからな。一度署に戻って作戦会議だ!」
「ありがとう、アンドレイさん。」
隼人はアンドレイに礼をいい、捜査員達は作戦を立てるべく署に戻っていったのだった。
こんにちわ!
しかし、暑いですねぇ。
まるで夏みたい。
それと、更新が遅くなってしまい、誠に申し訳ありませんでした。
事件も進展があったので、次回もしっかり書きます!
お楽しみに!




