第十二話 手掛かり
こんにちわ!
風邪引いちゃいました。
でも頑張って書きます!
隼人がユジノサハリンスクに到着し、夜の街で二人組の強盗犯と格闘した翌日。隼人が目を覚ますと、済んだ空に日が昇りかけていた。
「いい天気みたいだね。よかった。」
隼人はホテルのベッドから起き、シャワーを浴びて着替えた後に日本から持ってきたインスタント食品を取り出し、食べ始める。食べ終えると、連絡用端末を取り出して、研究所へとコールした。
「もしもし田中さん?」
『おう、隼人か。どうした、こんな朝早く?』
「これから捜査に行ってくるよ。地元警察の邪魔をしないって言う条件を付けられたけど。」
『そうか。ところでお前昨日テレビ出てたぞ。強盗団やっつけたらしいな。』
「取り調べでしつこく聞かれて大変だったけどね…」
隼人は昨日の事を思い出しながら溜め息をついた。
『まぁ、とにかく頑張ってこい。それと、こっちでも少し情報を掴んだんだがな…。』
「何?教えて。」
隼人は田中に聞く。
『ニュースでも言っていたと思うが、巨大な足跡が残されていたのは知っているな?』
「うん。」
『どうやら、人間の仕業ではないらしいが、アンドロイドでもないっぽいんだ。』
「じゃあ、何なんだろうね?」
『さぁな。それはまだ掴んでいない。まぁ、お前がこれから行くなら何かしらの情報は掴めるだろう。』
「そうあってほしいよ。じゃあ、行ってくるね!」
隼人は端末を切って、ホテルのフロントに部屋の鍵を預けて外に出た。時間はまだ早朝なので、繁華街の真ん中でも人通りは少ない。
「行くよ!装甲起動!」
隼人はウインメタルに変身して、猛スピードで目的地へと向かったのだった。
その頃、例の親子惨殺事件の殺害現場では、引き続き捜査が行われていた。現場には勿論、アンドレイとニコライもいた。
「そっちの状況はどうだ?」
「さっぱりです。これだけの被害にも関わらず、人為的な要素が見当たりません。」
犯人は派手に部屋を破壊し、親子を惨殺したが、目撃者もおらず、人為的に不可能な部分が多い為、犯人の特定が全く出来ないでいた。現場の捜査官達が頭を悩ませていると。
「何だ君は?」
「ここは関係者以外立入禁止だよ!」
家の外では若い男性警察官二人が銀色のアーマーに身を包んだ隼人=ウインメタルと言い合っていた。
「僕は呼ばれてきたんだよ。呼んどいてその対応はないんじゃないの?」
「ふざけるな!誰がお前みたいなガキを呼んだんだ?」
ウインメタルは現場に入ろうとしたが、二人の男性警察官は昨日の事をよく知らないのか、ウインメタルを不審者だと思い、足止めをしていた。
「とにかく入れてよ!」
「ダメだ!貴様みたいなやつを呼んだ覚えはない。」
ウインメタルは必死に説得するが、二人は拒み続けた。するとそこに…。
「おお、来たな。待っていたぞ!」
「あ、エゴルチェフさん。この人達何とかしてよ。」
アンドレイが現れて、ウインメタルを見るなり笑顔になった。
「警部、こいつは一体何者ですか?」
「私が呼んだんだ。昨日の強盗事件を解決してくれてな。今回の捜査にも協力してくれるんだ。」
「そ、それは失礼しました!どうぞ!」
アンドレイが説明すると、若い警官はあっさりとウインメタルを中に入れた。
「随分と荒らされているね。」
「ああ、これだけやってるのに手掛かりゼロだ。あの巨大な足跡も謎のままだ。」
ウインメタルは部屋中を見回しながらハイパーサーチで分析をしていた。部屋のあちこちは荒らされ、人間の大人の3倍はあろうかという大きさの足跡が残っている。
(なんだろう、この足跡?4本指で鋭い爪があるな。でも、こんな足跡見たことないぞ。)
ウインメタルは足跡を細かく分析する。
「どう、何かわかりそう?」
「もう少し待って。結果がそろそろ出ると思うから?」
ニコライの問いかけにそう答えるウインメタル。すると、分析が終わり、ウインメタルのモニターに結果が表示された。
「うん、一応分かることは分かったよ。」
「何?!そうか。で、どうなんだ?正体は何者なんだ?」
アンドレイがウインメタルの言葉に反応する。そしてウインメタルは冷静に答えた。
「足跡にはわずかだけど、細胞が残っていたからそれを分析したんだけどね。これまでにいるどの生物とも完全にこれと同じ物には合致しないよ。」
「何だと?新種の生物という事か?」
アンドレイが更に声を張って聞いてきた。
「いや、正確に言うと改造されて遺伝子の原型をなくしているってことだね。多分これはオオコウモリの遺伝子を元にしたんだろうけど、かなり書き換えられているね。もはやただのコウモリじゃない。立派な生物兵器だよ。」
ウインメタルの言葉にアンドレイとニコライは勿論、現場にいた全員が唖然としていた。
「じゃあ、これだけ大きな生物が目撃されていないのはなぜなんだ?」
今度はニコライが聞いてきた。
「それはまだはっきりとはわからない。恐らくものすごいスピードで飛んできて被害者を瞬殺して、見つかる前に逃げたんじゃない?」
ウインメタルは冷静に語りかけているが、現場の捜査官達は動揺を隠せなかった。なにせそんな大きな生物が人間を襲うなんて前代未聞な上、サハリンにはオオコウモリは生息していない。しかも遺伝子を改造されているとなると、謎は深まるばかりである。
「とにかく、今わかったのはこれだけ。あとは犯人が僕達の目の前に出てきてからだね。」
ウインメタルは冷めた様子でそう言い放った。その後も部屋を捜査し、部屋中の足跡や傷痕などから犯人体長4メートル近いという事が分かった。しかし、目撃者などはおらず、この日の現場捜査は終了。捜査班たちは一度署に戻って情報を整理しようとした。その時だった。
『緊急連絡、緊急連絡!市内の大学にて謎の巨大生物が学生を襲撃!応援を頼む!繰り返す…!』
アンドレイが運転する車に緊急無線が入った。急なことで動揺するアンドレイとニコライ。しかしウインメタルは…。
「どうやら敵さんからお出ましみたいだね。行こう。応援頼まれてるんでしょ?」
車の横で走りながら二人を促した。二人はそれに応じ、みんなで大学に向かう。一方アンドレイはこんな事を考えていた。
(こいつ、恐怖心というものが無いのか?いや、感情そのものがほとんど無いような気がする。一体何者なんだ?)
少し戸惑いながらも、ウインメタルとアンドレイ一行は次の現場へと急行したのだった。
こんにちわ!
ようやくサハリンでの初捜査です。
次回はいよいよ敵と対峙する予定ですのでお楽しみに!




