第百三十話 次の一手
こんばんわ。
痛み分けから膠着状態になったウインメタルとクロノギラス。
これからどう出てくるのか?
隼人とエリカはクロノギラス対策を練るべく、一度海南島から日本に帰国した。帰国してすぐ、二人は研究所に戻り、田中にこれまでの経緯を報告。すると、田中の方も情報を掴んでおり、二人にその事を伝える。
「「DN-AI?」」
「そうだ。」
DN-AIという言葉を聞いて二人はきょとんとする。聞いたことも無い言葉だから仕方ない。田中は二人に説明する。
「これは…例えば生物が何らかの影響で体に損傷を受けて死亡したとする。そして、残った体の使える部分をそのまま利用し、加えて欠損部などを機械などで改造、補修して復活させるものだ。体の稼働は残った神経系統をメインに行う事により、生物本来のとっさの判断力、身体能力を強化して残す事が出来る。クロノギラスの動きがやけに生物的で滑らかなのもそれが理由だろう。つまり、生物の体と機械を合体させた遺伝子コンピューターといった所だな。」
田中は二人にそう説明すると、隼人は一つ疑問に思った事を口にした。
「それって、ダークメタルに使われていたゲノムドライブに似てるよね。実は、前に逮捕された山崎が一枚噛んでましたとかじゃないよね?」
隼人は心配そうにそう言った。悪徳科学者の山崎が技術を悪用して作り上げたダークメタルによって、ウインメタルは敗北寸前まで追い込まれた事がある。ハイパーウインメタルに合体した事によってダークメタルを破壊出来たものの、そのダークメタルに使われた技術、脳細胞から遺伝子を取り出して記憶と人格を別の媒体に引き継がせるゲノムドライブの恐ろしさを身をもって知った。ダークメタル破壊後にゲノムドライブはウインメタル達によって、共に使用されていたラドミウム合金もろともデータごと消し去られた。そんな隼人の疑問に田中は冷静に答える。
「流石にそれは無い。あいつが悪用したゲノムドライブと、今回のDN-AIは似て非なる全くの別物だ。」
「そうなの?どっちも肉体を利用した遺伝子コンピューターじゃん。」
「ゲノムドライブはあくまで脳細胞から遺伝子を取り出して記憶と人格を別の媒体に移植する物、対してDN-AIは肉体そのものを再利用して生物本来の能力を強化して稼働させるものであって、仮に人間に利用したとしても記憶や人格は引き継がれない。」
「つまり、あくまで能力を高めて動かす為だけの物という事ですね。」
田中の回答に対し、エリカはそうまとめた。
「そうだ。DN-AIは上手く義肢や義眼に利用すれば、失った部位を元通り復元できるものだが、今回のウォールズのように悪用するとクロノギラスのような恐ろしいサイボーグ兵器を生みだしてしまう。」
田中は真剣な面持ちでそう二人に説明した。振り返ってみると、確かにクロノギラスは生物的な動きをしていた。噛む力の強さ、水中での俊敏な動き、ウインメタルと互角に渡り合うパワーは、本来クロノザウルスが持ち合わせていた能力をウォールズによって強化されたものだと思うと納得できる。
「でも、何であいつはクロノギラスに乗り込んでいるんだろう?自分がやられて死ぬリスクまであるのに。」
隼人は再び疑問を口にした。
「恐らくだが、自分の脳に直接リンクさせて思い通り動かす為だろう。仮にそのまま蘇らせたとしても言う事を聞く保証はない。だから自分抜きでは稼働できない代わりに、乗り込んでリンクする事によって最大限の能力を発揮できるようにしたってわけだろう。」
「それだけの技術力があるのに、どうしてこんなバカなことしたんだろうね。」
隼人は呆れながら溜息交じりにそう言った。
「とにかく、このままではキリがありませんし、また新たな被害が出てしまいます。何とか次で食い止めなければなりません。」
「そうだけど、あの化け物相手じゃあそんなに上手く行かないでしょ。なんとか被害を出さずに奴をクロノギラスの体内から引きずり出せればいいんだけど。」
エリカの説明に対し、隼人は悩ましげに呟く。
「一つ方法はあるが。」
「え、本当?教えて教えて!」
田中のその言葉に隼人は嬉しそうに食いついた。
「だが、難しいぞ。チャンスは一回しかないと覚悟しておいた方がいい。」
「大丈夫。どの道奴との勝負は次で最後にしたいからね。」
「私も同意見です。作戦の説明をお願いします。」
田中のその言葉に対し、隼人もエリカも真剣な表情でそう言い切った。
一方その頃、クロノギラスとウォールズは…。
「フフフ、見てろウインメタル。次こそは絶対倒す!」
不気味な笑みを浮かべながらクロノギラスに乗り込み、海中を潜行していた。海南島でウインメタルと一戦交えてダメージを受けたクロノギラスは、そのままインド洋沖の無人島に逃げた。そこで損傷した部分を修理して、自身も長らくクロノギラスに乗って海中ですごしてばかりいたからか疲れがたまっていた。そして休息を取って落ち着いたタイミングでまたクロノギラスに乗って動き出した。
「これで済むと思うなよ。クロノギラスの本当の恐ろしさを、今こそ見せてやる!」
狂気に満ちた表情でそう言い切ったウォールズは、そのまま次の目的地に向け、海の彼方へ消えていった。
こんばんわ!
最終決戦も近づいてきました。
さあ、勝つのはクロノギラスか、ウインメタルか?!
次回もお楽しみに!




