第百二十九話 操る男
こんにちわ!
前回クロノギラスと互角に戦ったウインメタル。
果たして、黒幕に尻尾を掴めるか?
「ウインメタルめ!またしても私の邪魔を!この世界最高峰の天才である私が、あんな子供騙しな奴に手こずるなんて!こんな屈辱はあってはならない!」
中国海南島沖にてクロノギラスによる貨物船襲撃事件が発生したが、事前に居場所を突き止めて先回りしていたウインメタル達によって、クロノギラスの作戦は失敗、被害は最小限に収められた。そして、男はウインメタルに作戦の邪魔をされた事に猛烈に怒りを感じ、海南島から逃げるように深海へと潜っていった。
「こうなったらあいつごと世界を滅ぼしてやる!このクロノギラスの本当の恐ろしさを思い知らせて、私が世界の支配者となるのだ!フハハハハハハ!」
男は高らかに笑い声をあげながら、クロノギラスと共に深海へと姿を消して言ったのだった。
-中国海南島 午後1:15(現地時間)-
その頃、戦闘を終えたウインメタルは、エリカと共に宿泊先のホテルに戻っていた。テレビをつけると、すでに地元のメディアが先程の襲撃事件を速報で伝えている。
「今日午前10:00頃、海南島沖にて巨大生物による貨物船の襲撃事件が発生しました。この事件によって貨物船は大破し、船員2人が死亡、30名が重軽傷を負いました。襲撃した巨大生物は以前ニュージーランド、マレーシア、カリフォルニア、青森を襲撃した物と同一と思われ、ウインメタルと交戦後に沖へと姿を消しました。現地当局では、当分の間近海を航行する船に制限を設け、海水浴場での遊泳を全面的に禁止するとともに、巨大生物を捕獲して正体を確かめることに全力を挙げるとのことです。」
「結構いい勝負だったんだけどな。海に逃げられちゃあ、前回の件もあるしやっぱこっちが不利なのは仕方ないな。」
隼人はホテルの椅子に腰かけながら残念そうな表情でテレビを見ていた。それをエリカがなだめる。
「気にしないでください隼人。隼人が頑張ってくれたおかげで、クロノギラスが人に操られていることが証明できた訳ですし、街への上陸も阻止出来ました。」
「そうなんだけど、速く食い止めないとまた次の場所が襲われる。何とかしないと。」
隼人はクロノギラスに取り付けた発信機の場所を示した端末の画面を見る。相手は現在インド洋お気をゆっくりと航行中で、まだ発信機を取り付けられていることには気づいていないようだった。
「そう言えばエリカ。この間オーストラリアの大学に頼んでいたクロノサウルスの遺伝子データの件はどうだった?」
「ハイ、先ほどデータの方は送られており、青森での戦闘の際に採取したデータと照らし合わせてみました。」
「結果はどうだった?」
ウインメタルの問いかけに、エリカは真剣な面持ちで答える。
「DNAは完全に一致。やはりカーペンタリアに打ち上げられた死体を持ち去って改造した物と断言できます。」
「やっぱりか。にしても問題はどこの誰がこんな事をしてたのかだよ。一応男性で、自分の事を世界最高峰の頭脳とか言ってたけど。」
予想通りの結果を知ると同時に、クロノギラスを操っていた男の正体を気にする隼人。そんな時、二人に連絡が入った。
「二人とも、大変だったな。大丈夫か?」
連絡の主は田中だった。今回田中は研究所に残り、情報収集や武装の整備などを行っていた。
「田中さん。クロノギラスはどこかの男性が死体を持ち去って改造したものと断定できたよ。に規制も確認できたし、どう操っているのかはまだ謎だけど戦闘中にサーチをかけたらクロノギラスの体内に生命反応が一つあったから中に乗り込んでいるのは間違いないよ。」
隼人は先ほどの戦闘時の事と、エリカから聞いたデータに関する情報を田中に伝えた。
「そうだったのか。遠隔操作か直接乗り込んでいるか分からなかったが、それが分かれば十分だ。クロノギラスを捕獲と同時に引きずり出して確保しよう。」
田中はそう提言したが、今度はエリカが問題点をあげる。
「ただ、その操っている男の正体、目的、そしてどのように死体を持ち去った後にクロノギラスに改造したのかはまだ分かりません。ウインメタルが交戦中に言葉を交わした際に、世界最高峰の天才と発言しておりましたが。」
その言葉を聞いて、全員が悩んだ。そして、少し間をおいて田中が口を開く。
「よし。とりあえず、遺伝子工学、ロボット工学、古生物学などを研究し、不祥事等で学会を追放された者、行方を晦ましている者を探して見よう。」
「畏まりました。少々お待ち下さい。」
先程の戦闘や、先日提出された遺伝子のデータ、そして田中のアドバイスによって情報が少しずつ集まり始めた中で、ようやくエリカのデータベースの検索範囲を絞る事が出来た。数分後、エリカは目を見開きながら伝える。
「一名ヒットしました。この人物です。」
エリカはそう言うと、端末の画面にその人物のデータを出した。
「エドワード・ウォールズ氏、54歳。オーストラリアの学者で古代生物の再生などを研究していました。しかし、博物館や研究施設などで無断で化石や剥製のサンプルを持ち出した罪で検挙された上に、衰弱した象をマンモス型のサイボーグに改造するマンモス復活計画を学会で発表、大バッシングを浴びて学会を追放された後に行方を晦ましています。」
「今回の事件そのまんまじゃん。決まりだね。クロノギラスは自分の研究を認めてくれなかった腹いせだと思うけど、あのシステムが気になるな。弱点が分からなければ止めの刺しようがないかも。」
隼人はやや不安げにそう言った。田中の方は冷静に返す。
「まあ、こっちは奴の居場所が分かるんだし、今は食い止めるしかない。隙が出たら一気にとどめを刺そう。」
「「了解!」」
田中の提案に隼人とエリカは力強くそう答え、端末を切った。
「少しだけどダメージは与えた訳だし、あいつもすぐには動けない筈。一度研究所に戻って作戦を練り直そう。」
「畏まりました。」
そう言って隼人とエリカは荷物を整理して、海南島のホテルを後にしたのだった。
こんにちわ。
ようやく事件の詳細が分かってきました。
ウインメタル達はクロノギラスをどのように追い詰めていくのか?
次回もお楽しみに!




