第十一話 協力
こんにちわ!
初日から事件に巻き込まれた隼人。
果たして無事に日本へ帰れるのか?
夜のサハリン市街地で、武装した男性二人組による強盗事件が発生。男性達は改造銃と改造ワゴン車を使って売上金を奪い、逃走を図った。しかし、銀色の戦士、ウインメタルにより計画は呆気なく阻止されたのだった。犯人二人は間もなく逮捕され、現在地元の警察署で保護され、取り調べが実施されていた。
「随分と我々警察の手を焼かせてくれたな、強盗め。ウラジオストクへの逃走前にお前達を逮捕できてやっと肩の荷が1つ下りたぞ。」
ここはユジノサハリンスク警察署の取調室の1つ。ここで犯人のうちの一人を壮年の男性警察官が取調べしていた。警察の名はアンドレイ・エゴルチェフ。ユジノサハリンスク署で長年凶悪事件解決に携わってきたベテラン刑事だ。
「チッ、あの変な格好をした坊主さえいなければこんなことにならなかったのによ!」
犯人の男は不満そうに吐き捨てる。二人共ショックビームをまともに受けたが、これは本来敵の足止めや確保が目的なので、大事には至っていない。気絶してからおよそ15分後にはすっかり意識が回復している。
「ふん、そんなことなくても俺がお前達を逮捕していたがな。こんなことして軽い罪で済むと思うなよ。覚悟しておけ。」
アンドレイはその後も取り調べでみっちり男を絞り上げた。取り調べが終わると、男は留置所へ連行され、アンドレイも取調室を出る。
「警部、お疲れ様です!いかがでした?」
署内の廊下を歩いていたアンドレイに一人の若い長身の男性警察官が声をかけた。
「ニコライか。ブツブツ文句言っていたが、まぁ何とかなったよ。」
若い刑事の名はニコライ・カバレフスキー。アンドレイとコンビを組む若手の有望株で、共に数々の事件を解決してきた。
「そうですか、こっちも少し手こずりましたが、無事あの二人を逮捕できて何よりです。」
ニコライはもう片方の強盗犯を取り調べていたが、そちらも無事にいったようだった。
「所で、あの銀色のやつはどうしているんだ?」
「第五取調室で事情聴取を受けています。」
「わかった、行こう。」
「はい。」
アンドレイとニコライは急ぎ足で第五取調室へ向かったのだった。
その頃、第五取調室ではウインメタル=白金隼人が若い女性警察官から取り調べを受けていた。
「それは分かったわ。あともう少しだけ詳しく教えてくれないかしら?」
「まだ聞くの?いい加減にしてよ。こっちは初日から変な事件に巻き込まれてウンザリしてるんだよ。」
二人を確保した後、隼人も事件に関わった人物として警察署に連れて行かれ、こうして事情聴取をされることになった。怪しいものではないことを証明するためにすぐアーマーを解除したが、それでも取り調べを免除されることはなく、疲労もあって不機嫌な隼人だった。
「何だ。東洋人か?それもまだ若い。珍しいな。」
「ええ、名前は白金隼人。18歳。ごく普通の日本人大学生で悪人ではないと言っております。」
「その日本人男性が何でこんな所であんな物をを持っていたんだ?」
「いえ、それはまだ…。」
アンドレイとニコライは窓の外から取り調べの様子を窺っていた。やはり、外国人がいきなり変身して凶悪犯をあっさりとやっつけてしまうことに疑問を持つだろう。
「もういいでしょ?早くホテルに帰してよ!」
「あのね、凶悪犯が手も足も出ない武器を持った、それも外国人の君を警察としては野放しには出来ないの。」
「僕はこんな所でのんびりしてる暇なんてないのに。どうすれば分かってくれるのさ?」
しつこく質問をされ、それに棘のある言葉で言い返す隼人。するとドアが開き、アンドレイとニコライの二人が入ってきた。
「あ、警部!お疲れ様です。」
「手を焼いているようだな。」
「ええ、ずっとこんな感じで中々答えてくれないんです。」
「散々答えてるじゃん!これ以上何を聞きたいのさ?」
隼人は頭の中で何かが切れたかのように激しい口調で噛み付いた。
「まぁ、落ち着け。白金隼人とか言ったな。」
「ふーん、責任者登場って訳か。少しは楽になりそうだね。」
アンドレイに挑発的な言葉を投げかける隼人。アンドレイは真顔で隼人に問いかける。
「ほう、日本人は謙虚で礼儀正しいと聞いたけどこいつは例外みたいだな。私はアンドレイ・エゴルチェフ。この警察署で刑事をしている。」
「へぇ。」
「もう一度聞く。なぜここに来た。それとあのアーマーは何だ?」
「だから、あれは正義のための切り札だよ!ここにだって害悪の排除に来たのに。」
隼人は露骨に嫌そうな表情で答える。すると横にいたニコライが目を見開いて言った。
「警部!思い出しました!この少年はウインメタルですよ!日本で起こったあのアンドロイドによる連続テロ事件を解決したっていう。」
「そこのお兄さんは少しは理解があるみたいだね。良かった。」
隼人がニコライに言う。するとアンドレイは少し笑みを浮かべて言った。
「ほう、てことはこのユジノサハリンスクにも事件を解決しに?」
「分かってるんでしょ?例の惨殺事件だよ。」
隼人はアンドレイにその事を持ちかける。するとアンドレイは…。
「なるほど、わかった。いいだろう。解放しよう。」
「警部!」
「いいんですか?」
ニコライと女性警察官が驚く。
「あの事件に関しては我々も手間取っていたんだ。それにこいつの力で解決出来るならそれも悪くない。」
「ちゃんと情報提供してよね。それなら協力してもいいよ。」
「フッ。その力、とくと見せてもらおう。くれぐれも足は引っ張るなよ。あと、捜査の邪魔は許さんぞ。」
「そんなことしないよ。ここまで来た意味無いからね。」
隼人はそう答えた。アンドレイはその後もごきげんな様子で事情聴取をし、隼人をホテルに帰した。
「やっと開放されたよ。疲れた。」
ホテルに戻った隼人はベットに横たわりながら呟いた。
「明日から忙しくなる。休まないと。」
隼人はそんなことを考えながら明日に備えて眠りにつくのだった。
こんにちわ!
キャンプ場に続き、またも取り調べを受けた隼人くんでした。
さて、事件はどうなるのか?
次回もお楽しみに!