第百二十四話 海の怪物
こんにちわ。
暑さに負けず書きます!
-カルフォルニア沖 午前5:00(現地時間)-
「よーし、今日はこんなもんか。みんな、引き上げだ!」
ここはアメリカ西部のカルフォルニアの海。早朝、一隻の漁船が漁を終えてサンフランシスコの港に戻ろうとしていた。
「今日は何だか魚が少ないですね、親方。」
「まあ、こんな日もあるさ。でも、潮の流れも天候も特におかしかった訳でもないのにどうしてだろうな?」
船員たちは海にこれといった以上が無いのにこの日の漁獲量が少ない事に寂しさと疑問を覚えていた。そんな気持ちを抱えながら港に向かっていたのだが、その時異常事態が起きた。
「お、親方!前の方に何かいます!」
「何だと!」
舵を担当していた漁師が慌てた様子でそう言った。よく見ると、前方の水面には何か巨大な生き物の影の様な物が泡を吹きながら蠢いている。10m以上はありそうだった。
「クジラだろ。気にするな。」
「そ、そうですか。人食いザメじゃなくてよかった。」
船員たちはすっかり安心していたが、そんな空気は一瞬にして壊された。巨大な影は泡を吹きながらどんどん浮上する。そして、その姿を水面に現した。
「う、うわぁ!」
「ば、化物だぁ!」
悲鳴を上げた船員たち。急いで舵を切って正体不明の巨大な物体から逃げようとするが、巨大物体は一度水中に身を潜めたかと思うと、船体の下に回り込んで巨大な口を開く。そして、鋭い歯が生えそろった口は船底をいとも簡単に噛みつぶして破壊し、船体は真っ二つになった。
「ぎゃぁぁぁ!」
「助けてくれぇ!」
海に投げ出された船員たちはもがきながらも必死で助けを求めた。しかし、その叫びも巨大物体によって青かった海面を真っ赤に染め上げながら消えていくのだった。
-日本 田中三郎の研究所 22:00(日本時間)-
「速報です。本日日本時間の午後9時頃、アメリカカルフォルニア州サンフランシスコで、漁に出ていた漁船が巨大な物体に襲撃され、船員5人が死亡、1名が重傷を負い病院に搬送されました。尚、近くを航行し、救助をしたという別の漁船の船員によると、バラバラになった船体の横にワニに似た巨大な影が猛スピードで沖の方へ去っていくのを目撃したそうです。警察では、ニュージーランド、マレーシア、中国で起きた謎の海難事故に酷似しているとして、詳しく調査をする予定です。」
「これで4件目だと?何がどうなっているんだ!?」
ニュースを見た田中はデスクを拳に叩きつけながら声を荒げた。クロノサウルスの死体が消えてから1週間が経過したが、その後各国で漁船が襲われると言う事件が相次いでいたのだ。共通しているのが、事故が起きた際に巨大な影が猛スピードで泳ぎ去るのを見たと言う事なのだが、その正体が何か分からず、世間を恐怖に陥れている。すると、隼人が言葉を発した。
「ねえ、もしかしたらだけど、クロノサウルスの死体が無くなった事と関係あるんじゃない?」
「ん、どういう事だ隼人?」
田中は隼人に質問する。隼人は冷静に答えた。
「だって、最初の事件が起きたのが死体が無くなった2日後で、それから1~2日ペースで事件が起きている。そして今回だよ。余りにもタイミングが良すぎない?」
「確かにそうだが、一体だれがどうやって?」
「それはこの目で確かめないと分からないかもしれない。えーっと、エリカ。確かその巨大な影って言うのは沖の方へ逃げたんだっけ?」
「はい、現地のデータベースにアクセスして分析しましたが、西方へ逃げたとのことです。」
エリカの話を聞いた田中は少し考えると、何かに気付いたのか顔を上げて言葉を発する。
「カリフォルニアから西へまっすぐ行くってことは、まさか?!」
「ええ、あくまで推測ですが直線状には八戸港があります。」
「つまり、予測が当たれば次の襲撃地は日本ってことか。」
隼人はそう言った。敵が何者で、どうして漁船を次々と襲撃するのかは分からない。だが、このまま放置するわけにはいかないので田中は決断を下した。
「隼人、エリカ。これは賭けだ。奴が本当に来るとしたら先回りして正体を暴こう。青森へ向かうぞ!」
「了解!」
「畏まりました!」
こうして3人は次の襲撃予想地点である青森県の八戸へと向かったのだった。
-青森県八戸港 午前5:00-
「は、怪物?」
「そんなことある訳ねえべ!」
翌日、八戸へと飛んだ隼人達3人は港に向かい、漁に向かう漁師達に注意を促していた。だが、突然の事に地元の漁師たちは信じられないでいる。
「何かあってからじゃ遅いんです!ですから警護させてください!」
「僕からもお願いします!」
必死で漁師たちを説得する田中と隼人。漁師たちは首をかしげながらもしつこく説得する3人に折れる形で漁に同行させることにした。船に乗り込む3人は慎重な面持ちで出港した。ちなみに、どうやって朝の青森に間に合ったかというと、ハイパーウインメタルに合体後、特殊防護スーツを着た田中を乗せてやってきたのだ。
「装甲起動!」
「フォームシフト!」
隼人はウインメタルに、エリカもアンドロイドモードに変身し、臨戦態勢を整える。漁自体は順調に進み、初めの内は特に異常は見られなかったが…。
「今日は何だか魚少ねぇな。」
「ホントだ。おかしいな。」
漁師たちは魚の少なさに違和感を覚える。ウインメタルとエリカもその違和感に対し、警戒を強める。
「エリカ、僕のハイパーサーチには巨大な影は無い。そっちは?」
「私にも反応ありません。」
しかし、ウインメタルにもエリカにも巨大物体の存在を裏付けるものは確認できなかった。そして、異常事態はさらに続き…。
「何だあれは?」
「えらくでっかいな!」
漁師たちは前方に巨大な何かを発見した。ウインメタル達も急いで確認しにいくと、船の目の前に泡を吹きながら巨大な影が浮上してくるのが見えた。
「バカな、二人のレーダーには何も反応が無かったのに!」
田中は突然の事に動揺している。一方エリカとウインメタルは嫌な予感がした。
「これはまずいです!」
「漁師さん達、急いで船を戻して!」
エリカとウインメタルは漁師たちに引き返すように促したが遅かった。浮上した巨大物体は水しぶきをあげてその姿を現した。
「うわぁぁ!」
「出たぁぁ!」
その姿を見た漁師たちは船の後ろの方へ逃げだす。現れた巨大物体はクジラでもシャチでも鮫でもない。全身を青黒い装甲の様な物で覆われ、ワニに似た頭部には不気味に光る赤い目、刃物のように鋭い歯、水面に出ている胴体には前足のような巨大なひれがついている。その姿を見た田中、ウインメタル、エリカは確信した。
「これは…。」
「間違いない…よね?」
「ええ、信じられませんがクロノサウルスです!」
目の前に現れた敵。それは消えたはずの死体と同じ物だった。
こんにちわ!
さあ、最後の強敵が姿を現しました。
ウインメタル達はどう戦うのか?
次回もお楽しみに!




