第百二十二話 死体の主
こんにちわ!
2週間ぶりです!
大雨ですが書きます!
オーストラリアのカーペンタリア湾にて謎の死体が打ち上げられてから3日が経った。まだ死体は砂浜の上に横たわっているままだが、これは専門機関が研究するためと、その巨体ゆえに移動させることが困難なためである。現在、照りつける日差しの下、地元の大学による専門的調査が続けられていた。
「それにしてもデカイな。だが、やはりクジラではない。この立派な4本の鰭とワニみたいな頭部。どこかで見たことあるような。」
「先生。本日は気温が高く、このままでは死体の腐敗が進んで分析が困難になります。」
「分かった。それじゃあ、直ちに肉片を回収。冷凍保存しておけ。それと、ドローンにスキャナーを点けて飛ばせ。全身骨格のデータも取りたい。」
「分かりました。」
教授は助手に指示し、分析が続けられる。その後、外でのデータを回収した一同は大学に戻り、回収したデータをさらに詳しく分析していた。
「間違いありません。遺伝子を分析した結果、海生爬虫類のものです。」
「そうか。」
「先生!ドローンに取らせた全身骨格の画像です!」
「どれ、見せてくれ!」
教授はパソコンに表示された全身骨格を覗き込んだが、その瞬間息を飲んだ。
「まさかと思ったが、これで確証が持てた。俄かには信じられないが、これは…クロノサウルスだ!」
「先日、オーストラリアのカーペンタリア湾で打ち上げられた謎の巨大生物の正体が判明しました。地元の大学によると、中生代白亜紀に生息していたとされる海生爬虫類の一種、クロノサウルスで間違いないとのことです。」
死体の研究結果は瞬く間に全世界のトップニュースになった。勿論この日本も例外ではなく、隼人は田中の研究所でそのニュースを見ている所だった。そして、画面は研究をした大学の記者会見の場面に切り替わる。
「回収した肉片と、ドローンで撮影した全身骨格を分析した結果、クロノサウルスであると断定できました。しかし、現在発見されている化石の推定全長は大きくてもせいぜい10m前後なのに対し、今回発見された死体の全長は約20mとかなり大型な上、何故現代に発見されたのかは不明です。今後、更に詳しい調査を致します。」
「尚、近隣住民からは巨大生物に対して『死臭をどうにかしてほしい』『邪魔だから早く処理してほしい』といった声が上がっていますが、死体が大きすぎるために処理の方法は検討中とのことです。」
「もし日本に打ち上げられてたら、間違いなく僕がやるんだろうなぁ。」
ニュースを見た隼人は、江ノ島でクジラの死体処理をした事を思い出しながらそう呟いた。それに対し、田中は微笑みながら隼人に話しかける。
「まぁ、今回はオーストラリアだし、それにあのときだって周りの人が喜んでくれていたじゃないか。」
「そうなんだけどね。やり過ぎだって叩かれたり、時には便利屋の如く頼られたりして…僕って、ウインメタルって何なんだろうって時々考える事があるよ。」
「気にするな。お前は間違った事は何一つしてないし、お前に救われた人だっていっぱいいるんだぞ。そこは自信持っていきな。」
田中は隼人をそう励ました。すると、エリカが先程のニュースに関する話題を切り出す。
「先程のクロノサウルスの死体をテレビ越しに解析してみました。まず、大型化した理由ですが温暖化による海水温の上昇が原因でしょう。白亜紀も温暖でしたが、今はさらに熱くなっています。死体の損害状況を見て死亡したのはおよそ10日前ですが、ここまで生き残った理由としては深海に逃げ込んで、あの大絶滅を回避できたからとするのが有力です。シーラカンスも同じ理由で生き延びてます。」
「凄いなエリカ。何か、解析能力上がってない?」
隼人の疑問に田中が答えた。
「この間の幽霊屋敷騒動の際に随分やられたから修理したんだが、そのついでにAIの解析回路を新しくした。だから直接見なくても映像や写真からでも細かい解析が出来るようになったぞ。」
「田中博士のお陰でこれからの任務の幅が広がりました。」
エリカは微笑みながらそう言った。
「それと、ウインメタルも同様に強化しておいたぞ。アーマーの耐久力を10倍に引き上げた。これで一万mの深海の水圧でもびくともしない。それと同時に武器の出力も上げておいたぞ。強化されたアーマーの防御力なら、反動を受けることはない。」
「本当?田中さんありがとう!」
隼人は田中に礼を言った。由宇レ4位屋敷での松平との戦いでは、あわや敗北寸前まで追い詰められ、ハイパーウインメタルに合体して何とか勝利を収めたもののエネルギーを大幅に費やし、ボロボロの状態で帰ってきた。そう言う事があった故、隼人は今回田中がウインメタルとエリカを強化してくれたことにより、安心と感謝の気持ちでいっぱいだったのだ。
クロノサウルスに関する記者会見が行われたその深夜、死体が横たわっている砂浜では異変が起きていた。真っ暗な砂浜にはまるで人の気配がない。横たわったクロノサウルスの死体と、波の音が聞こえてくるだけ…だった。突然どこからか砂を踏む音が聞こえてきて、死体を目の前まで来て止まる。
「こいつは使えるぞ。」
そう言ったのは大柄の男だった。夜の闇に包まれて姿かたちまでは分からないが、男は死体を前に嬉しそうにしている。
「見てろ、私の頭脳を、力を見せつけてやる。」
そう呟いた男。そしてこの男が引き起こす騒動がとんでもない事になるとは誰が思ったであろう。
こんにちわ。
最後の戦いなんですが、どう戦わせようか非常に悩んでます。
何とか熱く、カッコよく、綺麗に終わらせられるよう頑張ります!
それではまた次回!




