第百二十一話 完全平和とは?
こんにちわ!
ウインメタルも最終章突入です!
ここはオーストラリア北部にあるカーペンタリア湾。ある日の早朝、50代位の男性が趣味であるランニングをするために愛犬と共にこの海岸を訪れた。
「おお、いい天気だ!絶好のジョギング日和だ!ロッキー、行こう!」
男性は愛犬ロッキーと共に海岸を軽くジョギングし始めた。晴れていれば、ほぼ毎日ここでのジョギングは日課となっているが特にハプニングみたいなことは起きたことはない。今日もいつも通りジョギングをして家で朝食をとるつもりだったが、予想外の事が起きた。
「ウゥゥゥ…ワンワン!」
ロッキーが突然唸り声を上げて吠えたかと思うと、猛スピードで男性を置いて前方へと走り去ってしまった。
「おおい、どこに行くんだロッキー?!私を置いていかないでくれー!」
男性はロッキーを呼びとめるがロッキーの方は聞く耳を持たず、走り去っていく。400メートル走った所でようやくロッキーに追いついたものの、男性はすでに息切れしたいる。
「はぁ、はぁ…一体何なんだ?」
男性はその場に倒れ込み、少し息が落ち着いた所で顔を上げるとロッキーが何かに吠えているのを見た。一体何儀とかを目を凝らした時、男性は驚きのあまり後ろに跳ね上がってしまった。
「な、な…何だこりゃー!!!」
そこには全長およそ20メートル近くはあろう巨大な黒い物体が横たわっていた。体の高さは3m近くあり、全体にクジラのように流線型をしているものの、4枚の鰭とワニやオオトカゲに似た頭部と思しき部分にはびっしりと鋭い歯が生えそろっていた。得体の知れない物が打ち上げられている様子を見た男性は、しばらく慌てふためくしかなかった。
その頃、日本にある隼人の自宅のアパートでは…。
「日本時間の今日未明、オーストラリア北部にあるカーペンタリア湾にて巨大生物の死体が打ち上げられました。発見したのは海岸をジョギング中のマーク・ピーターソンさん(53)で、愛犬が突然吠えながら走り去ったの追いかけたところ、巨大生物を発見したそうです。現地の専門家の間では、クジラではないかという意見が有力視されているものの、4枚の鰭や爬虫類に似た頭部と尻尾など、古代海生爬虫類の生き残り説を訴える学者もいるなど意見が割れており、正体の解明を急いでいます。」
授業が午後からだった隼人はワイドショーを見ながらお茶を飲んでいた。そのニュースを見た隼人もふと思った事を呟く。
「どう見てもクジラじゃないよこれ。江ノ島でクジラの死体処理やった僕が言うんだからこれは間違いない。でも何だろう、僕も見たこと無い生物だ。」
隼人も巨大生物の正体に関しては見当がつかず、少し考えていた。幽霊屋敷以降、隼人の周りでは人の命に関わるような大事件は起きていない。たまにウインメタルが出動する事がある時は、精々町のチンピラの撃退や迷子探しなどの探偵の様なものである。正直隼人としては、ウインメタルの力が必要なほどの大事件はなるべく起きて欲しくないと思っているものの、ウインメタルが必要なのか疑問に残るほどの小さい事件に引っ張り出されるのも少々腑に落ちないなど複雑な気持ちでいた。そうこう考えているうちに学校へ行く時間になり、隼人は荷物を整理して大学へと登校した。
放課後。
「おう、隼人。今終わりか?」
「広人か。うん、さっき終わった所。」
「じゃあ、帰るか。」
「うん。」
授業終わりに広人に会った隼人は二人で下校することにした。
「ねえ、朝やってたオーストラリアの巨大生物のニュース知ってる?」
「ん?ああ、見たよ。ジンベエザメの死体じゃないの?」
「どう見ても違うでしょ?4本の鰭がまるで手足の様に発達してるし、何せ口には鋭い歯があったんだよ。」
「いや、知らないけど。もしかして、隼人は海に住んでた恐竜の生き残りだって言いたいのか?」
「正直言って分からないよ。それに、恐竜は海にすんでなかったよ。」
「え、そうなのか?プレシオサウルスとかいるじゃん!」
「あれは首長竜であって恐竜とは別の生き物。ついでにプテラノドンも恐竜じゃなくて翼竜だよ。」
「そうだったのか。知らなかったわ。」
隼人は朝にオーストラリアの巨大生物の話題を繰り出した。広人はジンベエザメだと思っていたみたいだが。
「で、どうすんの?お前は調査に行くの?」
「いや、僕が行くまでも無いよ。人的被害なんて無いし、出動要請も来てないしね。」
隼人は広人に対してそう答えた。そこで広人はもうひとつ質問する。
「後、一つ聞いていい?」
「どうしたの?」
「ウインメタルが平和のために戦ってくれるのは嬉しいよ。そしてそんなヒーローが俺の友達なのも嬉しい。だけど、もしもウインメタルがいらなくなる位の完全な平和が訪れたら、お前はどうすんの?」
広人の質問に隼人は少し驚くと同時に考え込んだ。今まで平和のために戦い、時には命を落としそうになりながらもウインメタルとしての使命を貫き通した。平和な世の中にしたい、誰よりも強くそう願ってきた隼人だったが、今まで戦っているうちに一つ思った事があった。
「完全な平和か。それは僕も嬉しいよ。嬉しくない人はいない。だけどね、平和と災いは表裏一体。何かのバランスが崩れれば一度平和になっても別の災いが訪れる。それは仕方ない事だと思うんだ。」
隼人の説明に広人は少し頷いていた。そして、最後にひとつ質問をする。
「でも、災いを止められないって言うんならいたちごっこじゃない?平和にしても別の災いが起きたらきりがないじゃん。」
「それでも僕は戦うよ。だってウインメタルなんだから。」
隼人は改めてウインメタルである自分の決心を口に、戦う事の使命を自覚した。だが、この後世の中を恐怖に陥れる事件が起きることはまだ考えもしていなかった。
こんにちわ。
ウインメタルの最後の事件。
一体どんな事件なのか?
次回もお楽しみに!




