第百二十話 恐怖の終焉
こんにちわ。
幽霊屋敷編もラストバトルです!
強大な霊的エネルギーを駆使して猛威を奮う松平にウインメタルとエリカは苦戦を強いられている。半ばボロボロになった二人に対し、松平は大人しく出て行くように促したが、あっさりと身を引く二人ではなかった。よろめきながら立ちあがった二人は、この戦いを終わらせようと最後の切り札を出そうとした。
「大昔の恨みに囚われ、関係のない現代人を脅かす生活も終わりだ!覚悟しろ松平忠志!」
「ふん!やられても減らず口だけはご立派な事だ。いいだろう、今すぐ地獄へ送ってやる!」
「そう言っていられるのも今の内だ!エリカ!」
「はい!」
挑発する松平に対し、ウインメタルはめげずに立ち向かおうとした。そして、松平を倒す為の奥の手を繰り出した。
「「コンバイン、ハイパーウインメタル!」」
二人は勢いよく飛びあがり、ハイパーウインメタルへの合体を始めた。エリカの金色のボディが分解され、ウインメタルの銀色のボディに強化パーツとして装着されていく。そして、金色と銀色の二色に輝く戦士が冥界の空に現れた。
「「連結合体戦士、ハイパーウインメタル!」」
ハイパーウインメタルへの合体を終えた二人は、ゆっくりと地面へと降り立ち、松平と対峙した。
「二つの力を一つに合わせたか。だが、何をしようと貴様ら出は我を倒せん。」
「それはどうかな?こっちは頼れる仲間がいるけど、そっちは一人だよね?君一人に負けるほど僕達も弱くないよ。行くぞ!」
自信満々の松平に対し、ハイパーウインメタルは臆せずにマキシムダガーを手に松平へと刃を振りかざした。松平は一瞬それを受け止めたものの、強化されたハイパーウインメタルのパワーに耐えられるはずもなく、闇を纏った剣は真っ二つに折れた。
「バカな!我の剣が折れるなど!」
「やっぱり一人より二人でしょ?!今度はこっちから攻めさせてもらうよ!」
武器を失って動揺している松平に対し、ハイパーウインメタルは至近距離からメタリックガンを展開して強化されたビームを打ち込む。
「ぐあぁぁぁぁぁ!」
悲鳴を上げながらビームに飲み込まれる松平。ハイパーウインメタルはとどめをさせたと思ったが、ビームが止んだ場所には松平がボロボロになりながらも立ち上がろうとする姿があった。
「しかししぶといね。これで消えれば楽になれたのに。」
「我はこのまま死ぬわけにはいかん。特に貴様のように不幸など知らん者には…。」
幼少期から修羅場を潜り抜けてきたハイパーウインメタルは松平に対して少し勝手なことを言っていると思ったものの会えて口には出さなかった。代わりにずっと気になっている事を聞いた。
「一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「どうして犬を大量に殺したの?」
屋敷では、犬を飼うと必ず変死すると言う怪現象が相次いだ。また、迷い込んだ野良犬の群れが皆志望すると言う事件も起きている。屋敷を調べてもその原因がいまいちわからなかったが、ハイパーウインメタルの質問に対し松平は表情を険しくして答えた。
「流行り病で死んだ者たちは、皆捕らえられて生き埋めにされた。中には逃げ延びた者もいたが、捕らえられて磔にされた上、生きたまま犬の餌にされた。こんな非道な事、人であろうと居ぬであろうと許せん!」
理由を聞いてハイパーウインメタルもさすがにひどいとは思ったものの、罪もない者にまで手をかけている事を許せないという気持ちだけは変わらなかった。
「どうやら君はすっかり復讐の鬼になってしまったみたいだね。そんなんじゃ、今すぐ成仏して天界にはいけないかもしれないけど、このまま君を放置するわけにはいかない!覚悟しろ!」
「ほざけ。貴様こそ、今すぐ我の手によって倒されるがいい!これでも食らえ!」
松平は両手を前に出し、そこに黒い渦を発生させた。先程二人を巻き込んだ黒い竜巻になり、再びおハイパーウインメタルに向かって襲いかかる。しかし、それに怯むハイパーウインメタルではなかった。
「同じ手にやられてたまるか!ハイパーリフレクトバリアー!」
すると、ハイパーウインメタルの前に透明な壁の様な物が出現し、黒い竜巻を跳ね返した。この技はリフレクトモードの応用で、物理的、量子的エネルギーを完全に遮断、反射してしまうものである。だが、エネルギーの消費が激しいのであまり多様はできない。
「う、うわぁぁぁ!こんな、こんなバカなことがあってたまるか!」
跳ね返された自分の渦に飲み込まれて悲鳴を上げる松平。やがて、渦が止んでドサッと落ちてきた後、よろめきながら立ちあがった。
「ウインメタル、時間がありません!ここで決めましょう!」
「分かってる!止めはもう刺せるからね!」
ハイパーウインメタルは再びマキシムダガーを取り出して、松平に向かって飛び上がった。そして、目にもとまらぬ速さで松平に斬りかかると同時に刃が白金色に輝き出す。
「ハイパー…」
「エナジー…」
「「クラーッシュ!!!」」
自分のエネルギーの大半を犠牲にする代わりに、どんなに強力なエネルギーも量子レベルで分解して完全に消失させてしまう大技。その技を驚異の霊的エネルギーを身にまとった、否霊的エネルギーその物の松平の亡霊めがけて繰り出す。眩しく輝いている刃で切り付けられた松平は、光につつぃまれながら断末魔を上げる。
「ぐわぁぁぁ!我は…我は村の皆と幸せに暮らしたかった。村の民たちを守りたかった!だが、守れなかった揚句我も病になり、破滅を招いた!そんな我はまだ死にたくなかった!寿命尽きるまで生きたかった…。こんな死に方はしたくなかった…!」
そこまで叫ぶと、松平は煙のように消え去ってしまった。
「か、勝った、のか?」
「霊的エネルギーは完全に消失しています。勝ちましたよ、ウインメタル!」
タイムリミットぎりぎりで大技を出したハイパーウインメタルは、エネルギーを使い果たしてその場に倒れ込んだ。ついでに合体も解かれて隼人と人間体のエリカに戻った。
「手強かった…。とにかく元の世界に帰ろう。」
「まだ霊道は開いている筈です。急ぎましょう。」
二人はよろよろになりながら、元来た道を戻る。そして、最初に入ってきた霊道の出入り口へたどり着くと、案の定入口が狭くなっていた。
「い、行こうかエリカ。」
「了解です。」
二人は最後の力を振り絞って、霊道へと飛び込んでいった。
「あの二人、大丈夫かしら?」
「正直、冥界という場所は科学という常識が通用する場所ではないからな。でも、私はあの二人を信じる。」
その頃、屋敷の庭ではアーニャと田中が心配そうに待っていた。ウインメタルとエリカが霊道を見つけてこれから中に入ると言う連絡を最後に、通信が途絶えてしまったので何が起こっているのかが全く分からない。
「まぁ、確かにサハリンでも負けそうになった所を大逆転したから私もウインメタルを信じてるわ。」
「そうだな。でも、通信が出来ずに状況を知り得ないと言うのはやはり心配になるな。」
不安げに二人の帰りを待ち続ける田中とアーニャ。すると、離れに異変が起きた。ドォン!
「な、何だ?」
「どうしたって言うのよ?」
何かが爆発したような轟音と共に、古い木造の離れが少し揺れたように見えた。田中とアーニャは新手の悪霊が出たかもしれないと思い身構えるがその不安はすぐに払拭された。
「あ、あれは隼人よ!」
「エリカもいる!無事だったんだ!」
離れからよろけた状態で出てきた所が見えたアーニャと田中はホッとしつつ、急いで二人の所に駆け寄った。
「た、田中さん。アーニャ…全ての元凶は昔疫病にかかって生き埋めにされた上田藩、松平家の末裔の一人だった。復讐の鬼と化してかなり手強かったけど倒したよ!もう大丈夫。」
「松平忠志の亡霊を消し去った事によって、屋敷の霊的エネルギーは完全に消失しました。もうここは幽霊屋敷ではありません。」
二人の説明を聞き、無事に事件を解決した事を察したアーニャと田中は肩の荷が下りたように安心し、二人の帰還を喜んだ。
「ホント、ウインメタルってすごいわ!さすが無敵のヒーローね!」
「とにかく安心したよ。お帰り。二人ともまず、ゆっくり休め。」
隼人とアーニャは田中達に支えられながら屋敷の中へと戻っていった。
数日後。
「長野県上田市にある幽霊屋敷が、ウインメタルによって除霊され、怪現象が完全に消失しました。尚、屋敷は事件解決前にウインメタルによって買い取られており、現在は彼個人所有の別荘として使われている模様です。」
事件を解決し、隼人達は埼玉に戻ってきた。勿論隼人も自宅に戻り、いつもの生活が再び始まったのである。朝のニュースを見た後支度をして家を出て、学校へとたどり着いた。すると、そこへ友人の広人に会う。
「おはよう隼人。大変だったみたいだな。」
「広人か。まあ、危なかったけど助かったよ。これでわざわざ長野から飛んで通学しなくて済む。」
「でも、お前凄いよな。結果的に200万であんな豪邸手に入れちゃったんだから。」
「一応追加料金払った方がいいか、しなの不動産に聞いてみたんだけど、『事件を解決して店の信頼を取り戻してくれたんで十分すぎる位感謝してます』って言われて断られたよ。でも助かった。これで老後に住む場所も決まったし。」
「安心する所そこか?」
「いいじゃん別に。ホームパーティやる時は招待するよ。大丈夫、もう幽霊は出ないから。」
「じゃあ、お邪魔させてもらおうかな?」
そんな感じで談笑する二人。こうしてウインメタルによって長年続いていた恐怖の怪現象は終わりを迎えたのだった。
こんにちわ。
幽霊屋敷編もこれで終わり!
次回からは新章…と同時に最終章です!
最後までウインメタルの活躍を応援してくれると嬉しいです。
それではまた次回!




