第十話 サハリン上陸
こんにちわ!
隼人君、いよいよ次の目的地のサハリンへ上陸します!
ここは成田空港第一ターミナルの北ウイング。これからユジノサハリンスクヘ向かう隼人は見送りに来た田中と別れ、保安検査場で荷物検査を受けていた。持っている荷物は連絡用端末以外は筆記具などの日用品中心なので検査で引っかかることはないだろう。
「どうぞ、お通り下さい。」
荷物をX線に入れた隼人は検査員に誘導され、金属探知機を通過。金属探知機は鳴らなかったのでそのまま荷物をまとめ、出国審査へと向かった。
「しかし、これだけの装備なのに鳴らないのは凄いな。流石は田中さんだ。」
隼人は出国審査ヘ向かいながらそう呟いた。メタリックアーマーは田中が開発したシルバニウム合金という金属でできているが、これは頑丈でステルス性が高く、金属探知機に反応しないという特性を持っている。ましてや今はブレスレットの状態になっているので検査で止められることはなかった。その後隼人は出国審査を終えて保安エリアにある出発ゲートへと向かった。
「ロシアか。初海外が意外な場所だったな。しかも旅行とかじゃなく、敵勢力の討伐だし。」
隼人は今まで海外に行ったことが無い。元々出掛けるのもあまり好きじゃない隼人は昔から修学旅行以外で遠出をしたことが無かった。しかし、友達もほとんど居ない彼は修学旅行で遠出してもただ暇を潰すだけであまり楽しいと思ったこともなかった。隼人はこれからの初海外に少し緊張と期待を胸に秘めながらチケットに書かれた出発ゲートにあるベンチに腰掛けて待っていた。
「ヤクーツク航空550便、ユジノサハリンスク行は間もなくお客様を機内へとご案内致します。ご搭乗のお客様は保安検査を受け、23番ゲートまでお越しください。」
空港内に隼人が乗る便のアナウンスが流れ、隼人はゲートに並び、チケットとパスポートをスタッフに見せて機内に入り、座席に座る。平日の上、ユジノサハリンスクはまだ旅行地としてマイナーな事もあり、機内はそれほど混んでいない。
「ガラガラでよかった。混んでたらトイレに行きづらいしね。」
人混みが嫌いな隼人は空いている機内の状況を見て喜んだ。そうこうしているうちに、すべての旅客を載せた飛行機は滑走路へ向かう。
「当機は間もなく離陸いたします。喫煙及び通信機器のご使用はお控えください。」
機内アナウンスが流れ、隼人を乗せた飛行機は定刻通りに出発、離陸した。
「行ってきます、殺しの旅へ。」
隼人は段々と小さくなっていく日本の大地にそう語りかけ、ユジノサハリンスクへと飛び立ったのだ。
およそ2時間半後。
「こんにちはユジノサハリンスク。長い付き合いになるかもしれないから宜しくね。」
隼人を乗せた飛行機は無事予定通りにボムトヴォ空港へと到着した。ロシア軍と共同で使っているこの空港は成田空港に比べて規模が小さく設備が整っているわけでもない。隼人は飛行機から降り、入国審査と税関の検査を終えて空港を出る。時刻は既に現地時間の夜9時回っているので空港周辺は真っ暗だった。
「まずは市内に出てホテルに荷物を置こう。」
隼人は空港から出ているバスに乗り、ユジノサハリンスク市内の中心部に向かった。バスの車内は人が少なく、外国人も隼人以外乗っていない。バスは特に渋滞に巻き込まれることなく30分かけて市内の繁華街へ到着した。市内はもう夜だというのに街頭が道路を照らし、車もそこそこ走っている。しかし、やはり日本とは違う独特な雰囲気を醸し出していた。
「えーっと…。ホテルはこの辺だったよな。」
隼人は田中が用意したホテルへ向かって歩き出す。リュックとスーツケースを背負った日本人男性の姿は地元の人々にとって珍しい存在だったのか、隼人はすれ違う人々にジロジロ見られていた。しかし隼人は長旅で少し疲れているので、あまり気にする余裕はなく、ひたすらホテル目指して歩いていた。そんな時だった。
「キヤァァァ!強盗よ~!」
道路を挟んで反対側にある飲食店からガラスが割れる音と銃声、そして女性の悲鳴が聞こえてきた。隼人は慌てて横断歩道を渡り、様子を見に行く。ガラス張りになっている店の壁はすでに破壊され、道端には夥しい量の破片が散らばっている。店内も滅茶苦茶に破壊され、怪我をした店員と客が店内に座り込んで悶ている。
「オラァ!この店の売上は俺達が貰った!」
「変な真似すんじゃねぇぞ!逆らったらこいつで頭ふっ飛ばすからな!」
犯人は二人組の男性で、二人共黒い上着を来ており、顔はマスクで隠している。更に、二人共銃身をいかついパーツで覆った見たことがないライフルを持っていた。恐らく違法改造で威力を増幅させたものだろうと隼人は察した。売上を奪った二人組の男性は車体を特殊な装甲で改造したワゴン車に乗り込み、そのまま走り去っていった。
「全く。着いて早々余計な仕事増やさないでよ。装甲起動!」
隼人は不満を言いつつもウインメタルに変身し、走り去った改造ワゴン車を追いかけていったのだ。
「ハッハッハ!やったぜ兄貴!今日も大量だな!」
「ああ、これで当分安泰だな!今月は中々の収穫だぜ!」
二人の男は車を運転しながら、この日の収穫を喜んでいた。車はエンジンも改造されているのか凄まじいスピードで市内の道路を走り抜ける。
「どうする兄貴?警察に顔が割れる前に市内から出るか?」
「そうだな!今週中にでもウラジオストクに逃げるか!」
二人はそのまま車で逃亡を図ろうとしていたが、バックミラーに何か写っているのに気づく。
「おい、なんか銀色の物が追いかけてくるぞ!」
「ホントだ!何だあれは?」
その銀色の物とは紛れもなくウインメタルだった。ウインメタルは車に追いつくとそのまま車体の上を飛び越え、前に出る!
「うわぁっ」
「何だこいつは!」
犯人の男二人は突然現れた銀色の戦士に驚きを隠せず、慌ててブレーキを踏む。
「折角初日くらいは休もうと思ったのに、よくも邪魔してくれたね!二人共ただじゃ済ませないから!」
ウインメタルは二人の男性にそう語りかける。その手にはすでにマキシムダガーが展開されていた。
「何だ?ガキンチョの声だぞ!」
「生意気言いやがって!てめぇこそただで済むと思うなよ!」
二人は車の窓から見を乗り出し、違法改造のライフルをウインメタルに向けて発砲。しかし…。
「改造されて威力は上がっているけど所詮その程度か。デスガマルの足元にも及ばないよ。」
改造ライフルの火力ではメタリックアーマーに傷一つつける事が出来なかった。ウインメタルは二人を挑発しながらそこに立ち塞がる。
「兄貴!全然効いてないよ!」
「クソッ、化け物め!このまま轢き殺して逃げるぞ!」
運転していた男性は車をウインメタルに向けて猛スピードで発進させる。
「攻撃が効かないと思ったら特攻か。だけど相手が僕だったのが運の尽きだね。マキシムダガー!」
ウインメタルは突っ込んできた車をマキシムダガーで斬りつける。車は直後に縦半分にされ、道路に転がった。
「わぁっ!どうしよう兄貴?」
「いてて、くそう逃げるぞ!」
二人はよろけながらその場から走り出そうとした。しかし…。
「僕の休憩時間を奪っておいて逃げるとかありえないから!メタリックガン、ショックモード!」
ウインメタルはメタリックガンを構え、ショック光線を二人に放つ。
「ぎゃぁぁ!」
「そんなバカなぁ!」
光線をまともに受けた二人は悲鳴を上げながらその場で気を失い、倒れ込んでしまった。
「初めての海外だってのに、初日からこんなんじゃ、前途多難だな。」
ウインメタルはそう呟く。その場には倒れた二人の他に真っ二つにされた車の残骸、そして直後にサイレンを鳴らしながら現れたパトカーがあり、騒然とした雰囲気となっていた。
こんにちわ!
ついにユジノサハリンスクに到着した隼人でした。
これから隼人は異国の地で事件の謎を解決していくわけですが、果たして襲撃事件の犯人は誰なのか?
次回から少しずつ分かってくるので、長い目で見てください!




