第百十四話 霊道(ゴーストロード)
こんにちわ。
アーニャ登場で事態は動くのか?
田中とエリカから屋敷が立っている場所の悲しい過去を聞いた隼人は翌日も大学に通っていた。案の定、就寝中もポルターガイスト現象の発生や女の幽霊がベッドに潜り込んでいた等の事態にはなったものの、ほとんど慣れて気にならなくなっていた。この日、隼人は普段通り大学に通学し、エリカとアーニャは聞き込み調査、田中は屋敷に残って内部の分析を行っている。
「だけど、僕だけ何もしない訳にはいかないからな。今できる事をやろう。」
隼人がそう言って向かったのは大学の図書館だ。ここにきて古い文献や新聞を調べれば何か分かるかもしれない。そう思った隼人は早速図書館に入り、受付カウンターへ向かった。
「すみません。」
「はい、どうされました。」
隼人は司書の女性に話しかけた。
「40年くらい前の古い新聞を見せて欲しいのですが。」
「ふ、古い新聞ですか?それもそんなに前の…。」
隼人にそう言われた司書の女性は戸惑っている。隼人はそれを見て少し申し訳なさそうに思い…。
「無理言ってごめんなさい。厳しかったら結構です。」
「しょ、少々お待ち下さい。」
司書の女性はそう言うとバックヤードの方へ向かった。しばらく待っていると、女性は重そうな紙の束を持ってカウンターへ戻ってきた。
「お、お待たせしました。こちらでよろしいですか?」
ウインメタルは女性が持ってきた紙の束を見る。それは古い新聞だった。年号を見ると1977年の物であった。
「すみませんわざわざ。ありがとうございます。」
隼人は司書の女性に礼を言い、新聞の束を持ってカウンターを後にした。そして、隼人は怪奇現象に関する本を何冊か持ち出し、空いているスペースに座ると徐に開いて読み始めた。
「えーっと。まずは新聞からっと…。」
隼人は77年度の新聞をしらみ潰しに読み、屋敷の事件に関する情報を拾い集めた。そして、何部か読んでいる内にある記事を見つけた。
「なになに…。建築家、鳩河原喜十郎氏(80)、第一線を引退。上田市に自ら作った別荘にて隠居。これって…。」
隼人はその記事と写真を見て驚いた。なぜならそこには老年の男性と今自分が住んでいる幽霊屋敷が真新しい状態で映っていたからだ。
「なるほど、この人が幽霊屋敷を作ったのか。よし…。」
隼人は一度席を外してトイレに行くと、ある場所へ連絡を入れた。
「もしもし田中さん?」
「どうした隼人?」
相手は田中だった。隼人はさらに続ける。
「鳩河原喜十郎っていう人物を調べて欲しい、大学にある古新聞で見つけたんだけど屋敷の建造者なんだ。」
「何だって?分かった。エリカ達にも知らせよう。」
「ありがとう。」
隼人は礼を言うと再び席について新聞を調べる。すると、その記事から5ヶ月後の記事に奇妙な事が乗っていた。
「ん?鳩河原喜十郎氏変死。遺書はなく原因不明。屋敷が出来てから半年も経ってないのにどうしたんだろう?」
記事は鳩河原が屋敷内で変死体として見つかった事を書いたものだった。結局死の真相は謎のままだったが、その後も屋敷に関する記事は乗っていた。
「(故)鳩河原氏の屋敷で怪事件続く。40匹の犬の変死体発見。深夜に異音発生で住民から苦情も。この頃から怪現象が起きていたのか。じゃあこの鳩河原って人も悪霊に呪い殺されたのかな?」
そう首をかしげながらも隼人は古新聞とオカルト本を読みながら調査を続けたのだった。
その夜。
「ただいまー。」
隼人は屋敷に戻ると急ぎ足で居間に入ってきた。既に田中、エリカ、アーニャの3人は揃っている。
「おう、お帰り。」
「お帰りなさい。」
「待ってたわ。隼人。」
3人は隼人を迎え、隼人の方もすぐに椅子に座って説明を始めた。
「早速だけど僕から説明するね。一応大学の図書館で調べた結果、この屋敷は鳩河原喜十郎という建築家が晩年に作ったもの。そして、自ら住みついたのちに謎の死を遂げ、その後も怪奇現象が続いている。この結果からして、どうやら鳩河原が屋敷をこんな場所に作った事で怪現象が人的被害をもたらしたんじゃないかと思うんだ。」
隼人の説明に対し、エリカとアーニャは頷きながら説明を始める。
「我々の方でも鳩河原氏に関して調べてみました。彼は新潟県の妙高で農家の末っ子として生まれました。その後、単身大阪へ渡り建築学を学んでおりましたがその頃父親が病死。建築家として腕を上げて大阪の街の発展に貢献しましたが第二次大戦で上の兄弟をすべてなくし、母も後を追うように他界。一時は引退を考えて有れた生活を送っていたみたいでしたが、結局周囲の説得に折れて復帰。この屋敷を作って引退したのち変死しております。」
「かなり壮絶な人生を送っているわねこの人。それと、この人い子供いないし一度も結婚していない天涯孤独の人だったから情報集めるの大変だったわ。でも、長野の人じゃないからこの辺りの悲しい歴史は知らなかったみたいね。それで、作った結果恐怖の瞬間が始まったってことだと思うわ。」
エリカとアーニャの説明を隼人は頷きながら聞いていた。そして、田中もこの日の調査結果を説明する。
「私の方でもこの屋敷に出現する幽霊を調査してみたのだが、この屋敷に出現する幽霊は主に2種類。一つは和服を着ている自縛霊。この幽霊はかつて疫病にかかり、生き埋めにされた人たちだろう。だから服装もかなり昔のものだ。そしてもう一つはその自縛霊の怨念が作り出した霊的エネルギーに引き寄せられる浮遊霊。この幽霊は別の場所で死んだ人間が成仏できずに浮遊霊となってここに引き寄せられたもので、着ている服も様々だ。」
田中の説明にウインメタルはふと疑問を感じた。
「じゃあ、犬が次々と死んだり解体業者が事故に遭っているのはどっちの仕業なんだろう?」
「これは両方だな。奴らはこの辺り一帯を幽霊のコミュニティにしている。だから邪魔者を排除しているとみていいだろう。」
田中の説明に対し、今度はアーニャが質問した。
「鳩河原喜十郎が死んだのも幽霊に殺されたってこと?テリトリーに無理やり作ったから?」
「恐らくな。だが、それ以前は何もないただの山道で、特にこれといった事件は報告されていない。怪事件が起きるようになったのは屋敷が建ってからだ。」
その説明に対し隼人は何か気づいた。
「もしかして、鳩河原が屋敷を建てたせいで幽霊を目覚めさせちゃったのかもね。」
「推測だが間違っては無いだろう。きっとこの辺りの土地を弄繰り回した影響で眠っていた幽霊が覚醒しただけでなく、他の幽霊を引き寄せて尚且つこの世とあの世を行き来させる霊道、ゴーストロードまで開いてしまったようだ。」
エリカがその説明に対し、ある提案をした。
「つまり、今回の作戦は霊道を探したのちに塞いで他の幽霊たちを眠らせる事ですね。」
「その通りだ。だが、どこにその霊道の出入り口があるのか分からん。徹底的に探そう。」
田中はそう言った。そして、やるべき目標が決まった隼人とアーニャも気合が入っている。
「了解。今度は幽霊を消滅させずに追跡に重点を置かなきゃだね。」
「よし。ジャーナリストの卵の血が騒ぐわ。徹底的に調べつくして正体を暴いてやる!」
こうして4人は幽霊だらけの屋敷の中で決意を表明したのだった。
こんにちわ。
さあ、屋敷の秘密も明らかになってきました。
果たしてゴーストロードは見つかるのか?
次回もお楽しみに!




