第百話 助けに行こうよ
こんばんわ!
まさかまさかの、記念すべき百話目です!
隼人達がレイダー星にてゲラウスの情報を掴んでいたその頃、地球でも今回の件は大騒ぎになっていたのは言うまでも無い。UFOが現れて町を襲撃しただけでなく、人々の最後の希望であるウインメタルを連れ去ってしまったからである。これを受けて勿論田中が指をくわえて待っている訳がなかった。
「今隼人達はケンタウルス座系のレイダー星という惑星にいるそうです。」
「ほほう、そんな所から生命体が。あそこは前から地球外生命体の可能性が仄めかされておりましたが、まさか本当にいるとは。」
研究所で田中と話しているのは勿論、今回の調査協力を依頼してきた宇宙研究家の寺澤幸次郎である。二人はどうやって連れ去られた二人を救出するか話し合っていた。
「ケンタウルス座は太陽系から最も近い恒星系です。田中さんの力ならあの円盤には劣らずともそこまで行ける宇宙用救命マシーンの開発もできると思ってますが。」
「確かにできないことはないですが、開発には最低でも3カ月は見込んでおくべきでしょう。しかし、もしその星の環境が地球人が長生きできないような状態でしたら、隼人の命が危険です。大気の成分によってはエリカの物質変換装置も作動せずにエネルギー切れを起こすでしょう。正直言って、我々に時間は無いと思った方がいいです。」
田中の言葉を聞き、普段は陽気な寺澤もさすがに深刻な表情で黙り込んでしまった。寺澤自身は宇宙研究家として昔から地球人と宇宙人の共存に憧れを抱いていたが、初めて間近に接触できそうな宇宙人が凶悪な殺人鬼だという目の前の現実に対し、少し残念に思っている。
「そうですよね。どうやらもう呑気なことを言っている場合ではなさそうですね。」
寺澤も状況が分かってきたものの、田中と主に中々いい救出案が思い浮かばずに悩みこんでいる。するとその時田中のパソコンに通信が入った。
「隼人か?!」
田中は急いでパソコンを覗き込んだ。残念ながら相手は隼人でもエリカでもなかったものの、意外な人物だった。
「田中さん。お久しぶりです!」
「君は…一体どうしたんだ?」
TV電話の画面に映し出されたのは、赤毛に白い肌と青い目の少女…かつてウインメタルがサハリンで出会った女子大生のアーニャ・スルツカヤだった。
「ウインメタルがUFOに連れ去られたってロシアでも大騒ぎになってますけど、本当なんですか?」
「残念ながら本当だ。今はレイダー星という星で宇宙人に拘束されているだろう。」
ジャーナリストを目指して大学で勉強しているアーニャは、かつてサハリンで起こったバイオビースト事件で友人を失ってから独自で真相を追っていたが、その時同じく事件を追うウインメタルにであって以来何かと気にかけていた。そんなアーニャだからこそ、ウインメタルが実質敗北したような結果が信じられなかったのだ。
「助ける方法はあるんですか?」
「あるにはあるが、最低でも三カ月はかかる。その間にあいつらが生きている保証もできない。」
「そんな…。ロシアでも被害が出てたし、ウインメタルも動いてるって聞いたから倒せると思ったのに…。」
アーニャは残念そうにそう言った。すると寺澤が質問する。
「田中さん。そちらはどちらさまで?」
「彼女はアーニャ・スルツカヤ。サハリンのバイオビースト事件でウインメタルに助けられた子です。」
「初めまして。アーニャ・スルツカヤです。」
「どうも、私は宇宙研究家の寺澤幸次郎です。今は田中先生と共にどうやってウインメタル達を地球に戻そうか協議していた所です。」
「それで、どうなんですか?」
アーニャは画面越しからのぞきこむような姿勢で二人に聞いた。
「正直言って厳しい。連れ去られる直前に連絡は来たものの、今頃何をしているのかもわからん。」
「何を連絡してきたんですか?」
アーニャはさらに質問を続ける。
「あいつらは連れ去られる前にその…レイダー星人達を問い詰めたそうだ。そしたら今、レイダー星では女性の数が減っていてその人口減少を食い止めるために地球の女性を実験台にした挙句、自分たちの子供を産ませようとしたそうだ。」
「屑じゃん!」
「うーん、許せませんな。」
田中がウインメタルから受け取ったメッセージの内容を聞いてアーニャも寺澤もご立腹だった。すると、田中のパソコンがまた別のメッセージを受信した。
「今度は何だ…?お、隼人からだ!」
「えっ?!生きてたの!」
「これは良かったですな!」
隼人がメッセージを送ってきたので、田中だけでなくアーニャと寺澤も喜んでいる。メッセージにはこう書かれていた。
『田中さん。連絡が遅くなっちゃってごめん。僕もエリカも何とか生きているよ。レイダー星人の奴ら、僕達を処刑するためにめんどくさい所に閉じ込めてね。何とか脱出したけど、また見つかっちゃって今隠れている所なんだ。あ、でも悪いことばかりじゃないよ。味方になってくれたレイダー星人もいて僕達に事情を教えてくれたんだ。レイダー星は優れた文明をもつ半面、環境汚染も深刻でね。その結果全ての元凶であるゲラウスっていう怪物を生み出した。ゲラウスは怪物って言っても動くことはできないけど、細胞や染色体を狂わす毒性の粒子をばらまくやばい奴でね。お陰で近くの町は壊滅して、毒粒子も星中に広がったんだって。僕達が今いる所はゲラウスとは離れているから大した被害はないけど、この粒子の影響でレイダー星人の生殖細胞や性染色体が狂わされて男しか生まれなくなっちゃったんだって。だから女性は政府の監視下に置かれて保護という名の拘束を受けているのが現状だよ。今回僕に協力してくれたレイダー星人の女性もそんな窮屈な生活に嫌気がさして逃げ出したうちの一人だよ。とりあえず僕達は一緒にそのゲラウスを駆除しにいくよ。レイダー星人の寿命は長くても40~50歳位だからこのペースで行くとレイダー星はもう10年も持たない。それに、こいつが現れたせいで地球もレイダー星も面倒なことになっているから消せば解決するはず。じゃあ、行ってくる。因みに毒粒子が混じった空気は煙くさいけど地球人には平気らしい。エリカに調べてもらったけど僕の体は全くの健康体だったよ。帰る時は多分UFOを一機借りることになると思うから大丈夫だよ。何か動きがあったらまた連絡する。』
と書かれていた。
「流石隼人。ウインメタルは一筋縄ではいかないわね。」
「良かった。こうなったら私はあいつらが結果を残して帰ってくるのを信じるよ。」
「おお、素晴らしい!異星人との接触、更に未知なる驚異。貴重な経験が出来て羨ましいぞー!」
一人だけテンションがおかしい寺澤に少し呆れていた田中とアーニャだったが、隼人達の無事が確認できて嬉しいという気持ちは3人とも一緒だった。
こんばんわ!
今回は地球サイドの動きを書きました。
次回から本格的な動きを入れていくつもりです。
それではまた次回!




