第九十八話 星の悲鳴
こんにちわ。
前回レイダー星人に追い回されたウインメタル達はどうなったのでしょうか?
地球に帰る方法とレイダー星の秘密を探るために一度は捕らえられていた町に戻ってきたウインメタルとエリカだったが、すぐに見つかってしまい再び逃亡した。そして今、町のはずれにある寂れた廃墟のような場所に隠れている。
「こんな所にこんな場所があって助かった。何とか立て直す方法を考えないと。」
「しかし、町で大騒ぎになってしまった以上長く隠れていることもできません。」
「そうだね。余裕はなし…か。」
ウインメタルは廃材の様な塊の上に腰かけながら溜息交じりにそう言った。先ほどウインメタル達が町で逃げ回ったことにより、二人の存在が町中の人に知られてしまった。今下手に動けば見つけた住民によって通報されて、再び捕らえられて処刑されてしまう。
「他の町を探すしかないかな。これだけの文明だ。町が星の中にここしか無いってのはさすがに無いだろうし。」
「そうですね。近くに町が無いか探しましょう。」
エリカは辺り一帯を分析し、他に町が無いかをサーチした。
「見つかりました。10km先に建物が集結している場所があります。」
「仕方ない。そこに行って適当にUFOでも頂戴しよう。」
そう言って二人は立ち上がり、見つけたばかりの別の町に移動しようとした。その時だった。ガタン!
「「!!!!」」
前方に物音がしたと思ったら、出入り口の方に一人のレイダー星人が立っており、ウインメタル達と目があった。
「やばい!もう見つかっちゃったよ!」
「急いで逃げましょう!」
ウインメタルがエリカを乗せて飛び立とうとした時…。
「ちょっと待ちなさいってば!」
そのレイダー星人の声が耳に入ってくる。二人をとらえていたレイダー星人の男性的で低い声とは違い、こちらは女性的で比較的高い声のように聞こえた。
「あなた達が連れて来られたっていう異星人ね。私はあなた達を攻撃したり捕まえたりする意思はない。でも、少し話を聞かせてもらえないかな?」
そう言ったレイダー星人。ウインメタルはスピリットセンサーを起動させて様子をうかがう。
「確かに敵いみたいなものは無いみたいだね。話だけでも聞こう。」
「了解しました。」
ウインメタルはエリカを背中から下ろし、二人でレイダー星人のもとに近づく。
「ありがとう。みんなも入ってきて。」
レイダー星人がそう言うと、仲間と思われるレイダー星人数人が廃墟の中に入ってきた。
「しかし、他の星にすんでいるだけあってやっぱり私達とは違うわね。」
「うん、その言葉そっくりそのまま返すよ。」
ウインメタルはそうレイダー星人に言った。レイダー星人達はそんなウインメタルに対して特に怖がるような仕草を見せていない。
「まあいいわ。ここは私達のアジト。そして私の名前はルーン。宜しく。」
ルーンと名乗るレイダー星人はそう二人に伝えた。そして、ウインメタルとエリカも変身を解除しながら名乗った。
「僕はウインメタル。本名は白金隼人っていう、ごく普通の地球人の学生だよ。」
「私はそのサポート用アンドロイドのエリカと申します。形式番号はSOW-002。宜しくお願いします。」
お互いに自己紹介がすんだ所で、ルーンが質問する。
「あなた達はどうしてこの星に来たの?っていうかどうして政府に捕まってたの?」
ルーンの質問に隼人は少しイライラしながら答えた。
「お宅の星の人がうちの星の女性に非道な行いをしていたから注意して追い払おうとした訳。でも聞く耳持たないからそいつらが乗ってきた円盤に乗り込んで説得したら、処刑してやるとか言われて連れて来られたよ。そして、そこから脱走して地球に帰る方法を探している所なんだ。っていうか、君達もあんな政府の下でよく生活していられるね。」
棘棘した隼人の言葉にルーンは首をかしげる。
「非道な行い?一体どういうことですか?」
「もしかして知らないの?」
ウインメタルもルーンに聞く。そして、エリカが詳しく説明した。
「レイダー星人達が地球の女性の腹に穴をあけて子宮を抜き取って殺すという事件が多発していました。おまけに地球人の女性に無理やりレイダー星人の子供を産ませようとしていたので追い払おうとした所、レイダー星は女性が激減したおかげでこのままでは滅んでしまうからと主張し、優れた文明をもつ自分たちが地球にふさわしいとも受け取れる言動を述べております。ですので何とかやめさせようとした所、失敗して今に至るというわけです。」
エリカの説明を聞いた直後、ルーン達はざわつき始めた。
「政府め。追い詰められてとうとうトチ狂ったのね。本当にごめんなさい!同じ星の者として謝るわ。」
ルーンは隼人達に謝罪に言葉をかける。そして今度は隼人が質問する。
「あ、いや全然。所でこの星に関して少し教えてくれないかな。奴らは女性が減ったことによってレイダー星がほろぶとか言ってたけど、そこんところはどうなの?」
隼人の質問にルーンは答える。
「そうよ。今は100:1の割合で女性が圧倒的に少なくなっているわ。それに加えて、レイダー星人の平均寿命は40歳~50歳前後だからこのまま行くとあと10年もつかどうかも怪しいわ。」
「でも見たところ、あなたはその数少ない女性の様ですが。」
エリカがそう言うと、ルーンは再び答えた。
「ええ、そうよ。今女性は貴重だから行かれた政府の監視下に置くために、各国の直轄施設の中に強制的に入れられるわ。私もいたんだけど囚人みたいに閉じ込められて常に監視されたり、子供を産むためにやりたくも無い人工授精の道具として使われる生活に嫌気がさして脱走したわ。そして、今の政府のやり方に反対の仲間を見つけてここで潜伏しながら機会を窺っていたってわけ。」
ルーンは少し怒りを覚えているような言動でそう答えた。そして、隼人は一番聞きたかった事を聞いた。
「教えてくれ。この星で今何が起こっている?どうしてこんなことになっちゃったの?」
隼人の質問に対し、ルーンは深刻な面持ちで答えた。
「全ての元凶はあの…ゲラウスのせいよ。」
こんにちは。
今回の騒動の原因になったゲラウスとは一体何なのでしょうか?
次回、その謎を少しずつ明らかにしたいと思います。
お楽しみに!