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奈落の男  作者: HYG
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奈落の男35

 洋子は媒体内のデータをすぐさまコピーして自分のパーソナルスペースに転送する。パーソナルスペースには既に洋子が展開して居た様々なツールやプログラムのウィンドウやアイコンが幾つも浮遊し、様々な処理を行っていた。洋子は転送された内容を確認した。一つは神田が雅臣から鑑定を依頼されたエクステから吸出しを行ったプログラム、そしてもう一つは神田の言う事が正しいならば、そのプログラムを加工出来るソフトウェア。恐らくエクステ内のアプリケーションプログラムを組む時に使用された開発環境なのだろう。

洋子はそれら二つを幾つかコピーし、その中の一つずつをソフトウェア解析ツールに読み込ませてソースコード出力処理をさせる。その間にコピーしておいた両方を個別にそのまま実行して内容を確認する。プログラムの方は、洋子が今まで雅臣を通してモニタしてきた内容と同じ動作を実行しようとして処理が中断された。これはパーソナルスペースが洋子の意図的に閉鎖された環境として上手く作用している事を物語っていた。ソフトウェアの方はどうだろうか。こちらは何の変哲もないプログラム開発環境の様に見えた。神田の主張が正しいのならば、今雅臣が装着しているエクステ内で動作しているアプリはこの開発環境で作成されたのであろうと考えて間違いないと洋子は思った。開発環境ソフトは何らかのロックがかかっていて使用が出来ない状態だった。簡単なチェックを済ませて開発環境ソフトを終了させると、洋子はパーソナルスペースのセキュリティプログラム監視ログを確認する。監視ログには明らかに洋子が意図していない――だが予想はしていた――外部への通信を試みた形跡があった。

洋子は監視ログ内のデータを精査する。それはエクステ内アプリの外部通信とは別に、開発環境ソフト自体が何処か別な所に通信しようとした形跡だった。洋子は開発環境ソフトの通信先をログデータから読み取る。どうやら、神田が入手した開発環境は、通信的に孤立していない場所でソフトウェアを起動させると自動的にNSAに通報する様に細工が施されていた様だった。

『神田も、単に偏執的って訳じゃなかった様ね』

この開発環境ソフトを正規動作をさせる為には定期的にライセンスキーの様な物をNSAにチェックしに行く様な仕掛けになっているらしい。洋子はこれは神田じゃあ荷が重すぎると思った。洋子は解析ツールが出力し終わった開発環境ソフトのソースコードの中から、NSAへの通報動作を処理するコードを注意深く切り離し、それによってソフトウェアが動作しなくならない様に新たにコードを書き加えるとそれをコンパイルし、出来上がったソフトを起動する。ソフトは問題無く起動した。洋子はその状態でもう一度セキュリティプログラムの監視ログを参照した。今度は外部通信を試みた形跡がログには見当たらなかった。ひとまずは安心だろうが他の仕掛けにも注意が必要だ。

洋子は警戒しながら組み上げたソフトをチェックする。開発環境ソフトからエクステのアプリを選択して開いた。プログラムは問題無く環境上に展開される。これは解析ツールが吐き出したソースコードを追うよりも遥かに簡単にプログラム内容を理解出来ると洋子は思った。洋子は早速、アンインストールプログラムの作成に取り掛かった。

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