7話・あの日の日常
〜翌日〜
『ん…うぅんっ…』
ガンカンカンと言う金属と金属がぶつかり合う音でマスターが目をさますとそこは見知った場所だった。自分の家の自分の部屋。
そのベットの上で目覚めたマスターは薄っすらと記憶が途切れる間際の光景を脳裏に浮かべる。
飛んでくる砲弾、それを見ていた自分
死を覚悟した瞬間に彼女は"白い機人"に助けられた。
その顔は忘れることは無い人物の物だった。
その時、不意に部屋に漂う香ばしい珈琲の匂いに気がつく。
『ん…?
アダムが珈琲でも淹れているのかな…』
マスターは寝間着のまま階段を降り下へと降りてゆく。
その途中、声が聞こえてきた。
1つはアダムの声、もう1つは聞き覚えのある優しい女性の声だった。
『博士、この泥水のような物を飲むのですか…?
このような物がエネルギー源になるとは思えませんが…』
『泥水じゃないよ、それはコーヒーと言う飲み物で豆を煎った物を細かく挽いて、成分を抽出した飲み物なんだよ!』
マスターの家のリビング、アダムはその女性の問いに苦笑しながら答える。
他人から見れば何気無い日常の風景だが、マスターからしたらそれは彼女がもう二度と見れないと思っていた光景だった。
その楽しそうな光景を暫く見つめていたマスターだったが、不意に熱いものが目から零れた。
『全く…もう少し知識を増やしていかないとな…
ん?あぁマスター、もう起きた…って大丈夫かい⁉︎
どこか痛むところがあるとか…』
『博士、マスターさんの体をスキャンしましたが負傷箇所も炎症も見られませんが』
慌てる2人を見て、涙を流しながらはははっと笑いマスターはゆっくりとリビングの椅子に腰掛け涙をぬぐった。
『いやぁ、なんか昔のアダムとあの子を見てるみたいで懐かしくてねぇ…
ごめんね、心配かけて』
『そうか…何も無いならよかったよ!』
『ごめんごめん、そんで大体想像はつくけどこの子は?』
『この子がマスターに話してた子だよ
機人…と言っても身体の70%以上はバイオパーツで出来てるから殆ど人と変わらないかな?
名前は…』
その機人が途中で口を挟む。
『イヴ…イヴと言います』
マスターは納得した表情でイヴをまじまじと見つめるとイヴの髪をわしゃわしゃと撫でる。
イヴも目を瞑りそれをじーっと受けた。
『ははっ、本当にあの子そっくりだ!』
『…』
『そうだねぇ…なら私も自己紹介だ、私はマゼンタ・リュフィル・アルセリアって言うんだ
長いからみんなマスターとか、頭文字だけとってマリアって呼んだりする』
『マリアさん…』
『よし、よろしくねイヴ!』
あの日、アダムがすべてを失った日など無かったかのような
そんな優しく笑顔に溢れた朝を3人は過ごしていた。