6話・機人の戦闘
「なに…機人だと⁉︎」
「話が違います隊長ッ‼︎私達はアダムの抹殺と未起動の兵器の回収を命じられたはず‼︎」
「慌てるなッ‼︎たかが機人一機…!武装も無い‼︎
撃てッ‼︎撃ち続けろ‼︎」
バリバリと言う轟音と共に兵士達はイヴへ向け機関銃の一斉射撃を始める、しかしそれは全てイヴの両腕に内蔵されている粒子障壁発生装置による障壁により弾き飛ばされる。
しかし、このままでは防戦一方であり障壁を張るのもかなりのエネルギー消費がかかる。
この場を切り抜けるためには早めに目の前の3人を片付ける必要があった。
「…博士、制圧行動に移ります
障壁を消失させますので台の後ろに…」
「あぁ、わかった!」
アダムは言われるがままにイヴを寝ていた診察台の陰に隠れる。
「弾道計算、パターンと射出間隔をインプット…
回避ルートを算出…行きます…」
それを見計らい、この場に存在する様々な情報で回避ルートを導き出したイヴは、障壁を解除し機関銃の弾が自身のバイオパーツに当たる場合のみ回避する事で弾丸を無効化し兵士達の先頭にいる隊長と呼ばれた兵士まで急接近。
「ば、化物めっ‼︎」
「貴方達が博士を狙うのなら…私はいくらでも化物になりましょう…」
「ひぃっ‼︎」
突然接近され竦んだ兵士に向け、両腕から粒子障壁を薄く引き延し、剣状に展開した物を振ろうとした際にアダムが咄嗟に叫んだ。
「イヴッ‼︎殺しちゃダメだッ‼︎
僕は君を人殺しの道具にはしたくて作った訳じゃ無いッ‼︎」
「…‼︎」
それを聞いて、イヴは兵士の背後に素早く回り込むと首筋・腹部を目掛け殴りつけ気絶させた。
その攻撃は見事に兵士達にヒットすると兵士達はその場に崩れ落ち気を失った。
イヴが行動に移ってから制圧するまで僅か数秒の事であり、機人と兵士の戦力差をアダムは改めて実感する。
「す…凄いなイヴ…
まだ起動したばっかりで慣れてないだろう…?」
アダムもまさか起動したてでここまで動けるとは思っていなかった。事実、制作されたばっかりの機人は人間で言う"二日酔い"に似た感覚になり動きが鈍くなるからだ、イヴの様に直様戦闘出来るような機人は殆どいないのだ。
「えぇ…少し気分は悪いです…
でも、貴方が私を必要とした声が聞こえた…だから私は大丈夫なんです…」
「ははっ…理屈じゃ無いって事か…
だったらごめん、もう一仕事だけお願いしてもいいかな…」
「街の事ですよね…インプットされたデータにこの街の地図は入っています…制圧してきます」
「あぁ、ごめんなイヴ…帰ってきたらゆっくり話をしよう」
「…はい!」
そう言うとイヴは勢いよくドアから出て行き、街へと向かった。
ーブラキの街ー
街には火の手が周り全体の3/1の民家が焼けていた。
「ボサッとしてたら死ぬよッ‼︎
魔法が使えるやつは二人一組になって交互に交代で撃ち続けな‼︎
間を開けるんじゃ無いよ!」
「マスター、負傷者は‼︎」
「街の広場に運びな‼︎
回復魔法使いはそっちに回してある!」
最前線で指揮を取っていたのはマスターだった。
マスターは的確な指令で街の前線を支えていた、しかしそれも徐々に押され始めていた。
「ヤバイねぇ…このままじゃ」
「…! マスター危ないッ‼︎」
「ぁ…」
その時、1発の砲弾がマスターの頭上に現れた。
その光景を目撃した誰しもが、もう間に合わないと思ったその時一筋の白い閃光が戦場を駆けマスターの身体を攫って行った。
マスターにとって、それは"二度目"の出来事だった。
「…無事ですか?」
「あぁ…悪いねぇ助けてもらって…
白い装甲に機械の手脚…あんたは機人かい?」
そして、聞かずにはいられなかった。
「あんたの名前は?」
「…私はイヴ……アダムの娘です」
マスターはそう聞くと微笑み、気を失った。