3話・偽りの光と真実の闇
ーシリシア帝国・城内会議室ー
シリシア国の城内会議室、そこには軍の上層部が集まり様々な議題に関しての論議を行っていた。
シリシアは元々、機人を主力として戦闘を進めてきた国家であり国の様々な場所で軍事用は勿論、執事用であったり商業用であったり多少なりとも機人を目にすることがある国だった。
勿論、シリシア軍にも"異名持ち"と言う国内で極少数の軍人特化戦力も存在するが基本彼らは自身が忠誠を誓った者や国王の命令が無いと動かない為軍の上層部が動かせる確証が無いものだったのだ。
しかし、その様な機人を生産するにもシリシア国内にある鉄や鋼などの鉱石資源も無限ではなく、それらは戦争で機人を使い続けるごとに無くなって行くものだ。
更には一時期続いていたベガン、アルターとの冷戦状態も両国の戦力の回復に伴い解け始めていた。
「このまま行けば我がシリシア帝国は敗戦への道へ真っ直ぐ突き進むことになる
何としてもその前に、次の一手を…」
「機神を新たに改修し運用すると言う計画、あれはどこの段階まで進んでいますかな?
あの計画さえ動けば自ずと我が国の士気も、戦力的にも格段とマシにはなるでしょうに」
「その件については今の所6割程の進み具合と言うところですねぇ…」
会話をしていた上層部の者達の言葉を遮りそう言葉を発したのは白衣を着た男だった。
この男はノーマン・シュタイン博士と言い、過去アダムの下で博士長補佐を務めていた男だ。
容姿は小綺麗でかなり美しく、スラリとした体格で軍の中でも女性人気が高い人物だ。
この男は現在、アダムが軍をクビになった事から博士長へと昇進していた。
「ノーマン博士長どの、詳しくお聞きしても?」
「えぇ構いませんよ。ではまず機神の変更点について、今回の機神は8年前に大破した物とは違い"生体動力炉システム"を用いて制作いたします。」
生体動力炉システムとは、簡単に言えば機人や機神が動力を生み出す機関として利用されていたコアを生物の生命力を利用してエネルギーを抽出、その生命力を機体に隅々まで行き渡らせることにより生体と機神を一体化しコアの思いのままに操縦することが出来るノーマンが発明した機構のことである。
「して、その動力にする者は誰にするのだ?
生半可な物では使い物になるまい」
言葉の通り、生体動力炉システムは生命力を消費して機体を制御するものであり身体は勿論精神力や魔力、その他の素質を全て兼ね備えた人物でなければすぐに死んでしまい使い物にならないだろう。
しかし、ノーマンはその問いを待っていましたとばかりに即答で返す。
「ご安心を、我々には既に1つ心当たりがございますでしょう?
我が国の王を守護する盾の力を」
「"異名持ち"か…しかしそうだとして生半可な理由でなければ協力するはずが…」
「ご安心をッ‼︎既に我らは"5年前"に手に入れている…
私の"妻"を…"白光の射手"をコアに致しましょう」
「ほぅ…して、時間はどれ位かかるのだ」
「早くとも半年、最低一年でしょう」
「遅いな…その間の軍の強化はどうする」
「それでしたら、私の元にはこの様な噂が…
"ブラキの外れに住む学者が大量破壊兵器を制作している"と…
間違いなくあいつの事でしょう、あいつが作るとすれば作るものは1つしかない…。5年もかけて制作しているものだ、今夜にでも夜襲をかけあいつの作品を奪ってさえ仕舞えば…」
「…良かろう、今はどんなものでも利用しよう。では今夜、軍の部隊を送り作戦を決行しようでは無いか」
会議室が賛成の拍手で包まれ流れで人が出て行き、その日の会議が終わった。
ーシリシア王国・博士長研究室ー
会議の終わったノーマンは足早に鼻歌を歌いながら研究室へ戻り、奥の培養炉室の方へと進み自身のデスクの上に荷物を放り投げると他の事には目もくれず1人培養炉の中に浮かぶ人へ向かい挨拶を交わす。
「……ただいまっ!」
ノーマンはそういった後に、今日の夜行われるであろうかつての自分がどう足掻いても、どの点を取っても勝てなかった相手への襲撃を思い高笑うのだった