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第1話 目覚め

タワプリの二次創作です。

オリジナル主人公で、メインヒロインはシンデレラの予定です。

タワプリをやり始めたばかりなので、ちょっとちがうなぁと言うところもあるかもしれませんが、ご容赦を。

作品の流れに乗りつつ、タワプリを知らない人でも読めるように書いて行くつもりです。

 目が覚めると、見知らぬ場所で、冷たい地面に横たわっていた。

 鈍い痛みと共に体を起こす。


 妙に体が冷たくて、見下ろす自分は己のものか他人のものかも分からない赤黒い液体にまみれていた。

 身につけている薄汚いローブも傷だらけだ。

 その下の体もさぞ傷ついていることだろうと、服をめくって腕をみる。

 そこには確かに傷があった。無惨な、ひきつれたような醜い傷が。

 だが、みるみるうちにその傷は薄れ、そしてやがては消えた。

 まるで何事も無かったかのように。そこにうっすらとした傷跡だけを残して。



 (怪我って、こんなに早く治るものだったっけ?)



 疑問と共に首を傾げる。

 考えてみるものの、それはただ自分の頭の中に正解と言えるべき知識が無いことに気づいただけに終わる。

 頭の中は見事に虫食い状態だった。



 「オレは、誰だ?」



 ぽつりと呟く。

 そんなことすら、分からないのだ。

 だが、とにかく体は動くようなので、ゆっくりと自分の動きを確かめるようにしながら立ち上がる。

 動くことでの痛みは無いが、なんだか頭がふらふらした。

 恐らく、それなりの血を失っているのだろう。


 自分の体を見下ろせば、腰には剣帯が装着され、左右に剣がそれぞれ1本ずつ。

 それを見て、なんだかほっと心が落ち着くのを感じて、思わず口元を軽くほころばせた。

 自分はどこからきたのだろうか?

 そんな疑問から、ぎこちない動作で周囲を見回す。

 だが周囲はほとんど茨で覆われていて、前方に申し訳程度の獣道がある。人1人通れるかも分からないほどの。



 「ここを、通ってきたのかな?」



 通り道の前に立ち、首を傾げる。

 その道は、本当に細かった。両脇はもちろん茨に覆われている。

 無理に通ろうとすれば通れるだろうが、茨にその身を傷つけられることは避けられないだろう。



 「オレの、体の傷は、この道を通ってきたせい?」



 独り言で己に問いかける。

 でもー再び首を傾げながら、細い隙間を見る。

 そこの茨はまっさらに綺麗だった。

 破れた服が引っかかってる様子も、飛び散った血の痕跡もまるでない。


 もし、ここを通ってきたのなら、そう言う痕跡が残ってないのはおかしい。

 傷つくことなく通ることなど、不可能な道なのだから。


 もう一度、周囲を見回してみる。


 だが、たった一つの道の他に道はなく、周囲は茨に囲まれ隙間という隙間は人の通れるものでは無かった。



 (オレは、どこから来たんだろう?)



 もう一度己に問うてみるが、もちろん答えが出ることはなく、途方に暮れたように立ち尽くす。

 これからどうしたらいいかも、どこへ行くべきなのかも分からない。

 困ったなぁーそう思ったとき、悲鳴が聞こえた。誰か、助けて下さい、と言う声も。


 気がつけば、反射的に体が動いていた。

 細い隙間に体をねじ込み、茨が体を傷つけることも、その鋭い痛みにもまるで無頓着に前を目指す。

 ただ、心が叫んでいた。助けなければ、と。


 幸い、細い道はそれほど長くは無かった。

 一瞬の開放感。

 だが、立ち止まることなく走る。

 すぐ目の前の開けた空間に、可愛らしい小さな妖精がいた。そして、それを取り囲むようにしている、数匹の異形が。

 迷うことなく、異形の群の中へと飛び込んで、小さな存在をその背にかばう。



 「え?え?あなた、今どこから???」



 後ろから、姿のままに可愛らしい声がそんな疑問を飛ばしてくる。

 だが、それに答えて余裕は無かった。

 異形達は、突然現れた存在にわずかにひるんだものの、それで獲物を諦めるつもりはまるでないようだった。



 (戦えるのか?オレは)



 じりじりと距離を詰めてくる敵を前に、己に問う。

 なにしろ、自分のことが何一つ分からないのだ。

 腰に剣はある。だが、その使い方も分からず、戦い方ももちろん分からない。


 戦えるのかーもう一度、問う。

 しかし、やはり答えは出ない。

 答えは出ないまま、ちらりと後ろにかばったままの妖精を見た。

 彼女は不安そうな顔をしていた。安心させるように微笑んでみせる。



 「大丈夫だ。君は、ちゃんと逃がしてあげるよ」



 その言葉に、彼女が大きく目を見開いた。可愛らしい唇が、何かを言おうと開かれる。

 だが、その声を聞く前に、敵の気配が動いた。

 前に意識を戻せば、飛びかかってくる異形の姿。思ったよりも冷静に、その姿を見つめた。


 戦い方など分からない。

 だが、頭は覚えていなくても、体はそれを覚えていたようだった。


 自然に手が動き、両腰の剣を抜いていた。

 そのまま流れるように片方の剣で敵の攻撃をさばき、もう片方の剣で相手の体を切り裂いた。

 ああ、オレは戦えるーその事に安堵しながら、残りの敵も蹂躙した。

 あっという間だった。


 だが、それが限界だった。視界がぐるぐる回り、立っていられない。

 あの子は、大丈夫?ーその事だけが気になって、地面に倒れ込む寸前、その姿を探した。

 彼女は慌てたような様子でこちらに飛んでくる所だった。

 その様子が余りに必死で、なんだか微笑ましかった。


 小さな唇が何かを言っている。

 大丈夫ですかーそんな声がかすかに聞こえた。

 唇をかすかに緩め、地面に頬を押しつけたまま、声にならない声で彼女に答える。


 大丈夫だよ。オレは、死なないんだからーと。


 なぜか何の根拠もなくそんな答えを返しながら、とうとう体の限界がおとずれて。

 小さな妖精の可愛らしい手が触れる寸前、彼女の顔をぼんやりと見上げたまま静かにその意識を手放した。


読んで頂いてありがとうございました。

今回はプロローグ部分なので、まだ主人公の詳細も謎が多いですが、次回はもう少し色々と分かってくると思います。次は、シンデレラの騎士になるところなんかも書いて行く予定です。

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