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また明日

作者: 希人

短編です。

 瞼に差し込む暖かな夕陽。車体の緩やかな揺れ。少し汗っぽい匂い。


 後部座席で寝ていた私はそれらを感じて、ふと目を開けた。周りには私と同じ体操服を着た同級生が穏やかに寝息を立てている。ぼうっとした目を窓に移すと、遠い空の彼方に夕日が沈みつつあった。どうやら、今は帰路のようだ。そう理解するとともに、もう一つの事実もじわじわと実感する。


 そうだ、試合。負けたんだった。


 私達のテニス部は県大会に出場し、車で約百㎞以上のところまで向かっていた。結果は優勝まであと一歩……というわけではなく団体三回戦負けという中途半端なものだった。だが、私を含め他の皆も全力を出していた。必死にこの三年間を出し切ってやろうという気持ちが皆にはあった。


 同時に、今回の試合が私達の引退試合であり、最後の遠出なのだ。三年間、何回もこの車に乗せてもらい遠くに行った。公式の試合であったり、他校との練習試合であったり、社会人の大会を見に行ったこともあった。その度に、この車の中でわいわい騒ぐので、はしゃぎすぎて顧問に怒られたこともあった。


 車は高速道路に入り、タイヤが道路を噛みしめながら走っていく。その音も大きすぎず、小さすぎず。また、いつもはどうとも思わないようなラジオのCMさえ今のこの瞬間の中では貴重に思えて、不思議と、また眠ろうとは思わなかった。


 起きているのは運転をしている顧問と、私のみ。他の皆は騒ぎつかれたのか各々態勢を崩し寝息を立てている。


 私は、何かを終えた時のこの瞬間が好きだった。


 大きな出来事に向けて皆が一生懸命に頑張って、今までを出し切って、泣いて、笑って、励まし合って。


 その後の、今日を名残惜しむこの瞬間がたまらなく愛おしかった。またこういう日がくればいいなと、一日を振り返るそんな瞬間が。けれど、それももう最後になるのだ。


 かあっと目頭が熱くなる。それを言葉として認識した途端、叫びたい衝動に駆られた。込みあげてくる何かを必死に自制する。


 最後の最後まで、この時間を大切にしよう。このメンバーで頑張ってきた三年間を思い出しながら。


 私は再び体重を座席に預け、視線を窓の外に向ける。


 赤く煌めく夕陽は、今にも沈もうとしていた。

 


お読みいただきありがとうございます。ネット媒体での小説の書き方も工夫が必要ですね。改行が難しいです。

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