表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

■2.王太子様がやってきた(前)

評価やブックマークありがとうございます。

■2.王太子様がやってきた(前)



 朝の予定確認ではしれっと「午前は王太子様がいらっしゃって」といったけれど、これはテイナー家使用人にとっては一大事だ。

 だって王太子様。次の国王になられる方が、家臣の家にいらっしゃるのだ。生半可な準備では失礼にあたる。普通、用事があれば王太子様なんだから王宮に呼びだせばいい。なぜわざわざ家臣の家に足を運ばれるのか。


 それは、ヴォルフ様が王太子様に厚い信頼を寄せられているからです。


 自分のことのように、胸をはってドヤ顔で言っちゃうよ?

 だって、それだけヴォルフ様がステキってことだからね! そりゃあ使用人一同、張り切って準備しますとも。全員ヴォルフ様を尊敬してるので、ヴォルフ様が恥ずかしいような歓待はいたしません。


 私は屋敷内で一番紅茶をいれるのが上手、という特技をもっている。そして王太子様は紅茶派だ。だから私の役目は決まっている。

 たとえヴォルフ様用であっても普段使いすることが許されない特別な茶葉のなかから、ついたときに出す茶菓子と、そのまま食べていかれる昼食メニューにあったものを選んでいく。

 今日は若干蒸し暑いので、外から着いた時にはさっぱりしたのがいいよねぇ。今朝ヴォルフ様に出したリズ産の茶葉の特級でいいかな。

 あ、そうだ。着いた時はアイスティーにして、食事のときにリズ産特級なんてどうだろう。

 昼食メニューは厨房行って確認してこようっと。



「可能であれば両方準備すべきでしょう」


 あっさりと断言したのは執事のセバスチャンだ。厨房に行ったらセバスチャンもメニューの確認をしていたので丁度いいと話をさせてもらった。

 相変わらず黒燕尾が似合う。老眼鏡が素敵アイテムと化すのって凄いことですよ。

 そういやゲームでは、なぜセバスチャンを攻略できないのか地団駄踏む人が多数いたなぁ。妻子どころか孫もいるんだから、攻略しちゃいかんでしょう。その分同人誌では大活躍してたけど。若かりし頃の御主人さまとのめくるめく愛の世界とかあったなぁ。ていうか持ってる。こう見えてドS攻めなんだよね。言葉責めとか得意プレイだった。あ、同人誌の話ですよ?


「準備は万全になさい。すべてはヴォルフガング様のためです。厨房の一角を使っても構わないでしょう? いいそうですよ。存分に腕をふるってください」


 いやいや紅茶ですからね。そこまでのものではありませんが。まあ御期待に添えるよう全力で、全っ力で! がんばりますとも。


「ってことは氷の魔石は使い放題ですか!?」


「特別に許可します」


 ひゃっほう。アイスティーは一気に冷やす工程が大事だから、氷を大量投入出来る以上成功はこっちのもの。


「じゃあ、じゃあ、あの帝国の半発酵茶とか、リズ産特級とかも!?」


 半発酵茶は要するに烏龍茶だ。流通量が少ないので単価がとんでもなく高いことになっている。

 テイナー家はそういった貴重な茶葉ですら常備してあるけれど、おいそれと許可は出ない。でも、今日ばかりはいいよね? ね? そんな期待の眼差しに、セバスチャンはこたえてくれた。


「王太子様に出さなくて、誰に出すんですか」


 いやん。セバスチャン素敵。かっこいい。男前!





 ちなみにアイスティーはそこまで高級な茶葉は使わなくていい。といっても安いのは使わないけどね。

 日本だと一番アイスティーにしやすくて好きだったのはアールグレイだけどここでは手に入らない。

 しかーし、ここで諦めるローズではありません!

 ベルガモットは手に入らないけれど、かわりに果物で独自に香り付けした茶葉をアイスティー用に準備してあるのです。香り付けすれば、高価でない茶葉でも美味しくなるので、研究しがいがあるのです。

 オタクって、探究心に火がつくとのめり込むよねぇ……。給金の大半を茶葉や材料につぎ込んだ時はさすがにヴォルフ様にとめられたわー。そのかわり、屋敷内の茶葉を使ってある程度自由に研究させてくれるよう取り計らってくれたヴォルフ様マジ神。


『ローズが美味しいお茶をいれてくれたら、その分うちの評価もあがるからね』


 なーんて言ってくれちゃってさー。度量の広い男って素敵です。

 ってことで今日はオレンジで香り付けした紅茶を使うことにします。





 そんなこんなで、やってきましたよ王太子様が!

 使用人一同でお出迎えした後は、ヴォルフ様とゆっくりお話がしたいと言って、お部屋にこもってしまわれた。最初に所望されたのがアイスティーだったので、それはセバスチャンが出したので私の出る幕はなかった。裏方だけど、(多少煩悩まじってるけど)心をこめて準備したお茶を飲んでくれるだけでローズは幸せです。

 王太子様はさすが攻略対象だけあって、そりゃあもうキラキラとしている。これぞ王子様。この人が王子様でなければ誰も王子様じゃないよね! ってぐらいに王子様オーラが出ている。

 普通さ。そんな王子様……っていうか王太子様と、子供の頃から傍にいて忠誠を誓った騎士って組み合わせって、最強のカップリングだと思うでしょ? 私もゲームのパッケージとか宣伝みてたら「やっぱこのへんカップリングかなー。やっぱ騎士×王子?」とか思ってた。ちょいとばかし、そんな目線で初回ゲーム始めた。

 ……うん、違うなー、って分かった。

 この二人がカップリングの話だってあることはあるけれど、当初の想像より少ない。



 さて問題です。何故騎士×王子のカップリングが流行らなかったのでしょうか?



 答。二人とも、タイプは違うけど腐女子が大好きな攻め様だったからです。まあ後は、他に丁度カップリングにしやすいお相手がいたからっていうのも大きいか。


 そんな攻め様たちの会話ってどんなんだろう。超気になる。

 気になってもだもだしていたら、セバスチャン(だけは部屋のすぐ外に控えている。ちなみに護衛はいない。ヴォルフ様がいれば大丈夫だからです)が私を呼びに来た。


「淹れたての紅茶が飲みたいそうなので行ってきなさい」


「えぇ!?」


 入れるんですかあの部屋に! 攻め様たちが腹黒く語り合うあの部屋に!(注:妄想です。)

 やっべ、たぎる。私のなかの腐女子の血が萌えてます。


「出来ますね?」


「はい、喜んで!」


 言ってから、どこの居酒屋だって、ちょっぴり笑った。



後編は今日中にアップします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ