5.聖女(嘲笑)チャンネル開設
不快な表現があります。
朝食を食べ終えると、給仕をしてくれた人に先日この世界の魔王様といた部屋まで行くように言われた。
部屋に行くと、この世界の魔王様の他にいろんな方々がいた。
「月香、朝から呼び出してすまないな」
「大丈夫です。会議中ですか?」
「ああ。異世界人を数百年ぶりに保護したから、新たな娯楽を作ろうと思ってな」
「その数百年前の異世界人で、こちらで再現できる娯楽をやりつくしているみたいなので難しいと思いますが」
「やはりな」
「ですが、今回限定で娯楽鑑賞できる対象物があります」
そう言うと、この部屋の者たちがものすごく期待に満ちた目で私を見た。
「さすが異世界人だな。どんなものだ?」
「『聖女(嘲笑)の魔王様を倒すための旅(笑)』を生中継です。ところで、聖女(嘲笑)の旅の様子を見せてくれる魔法か何かってあります?」
「もちろん、あるに決まっている。魔族を何だと思っているんだ。人族より、魔力を扱うに特化した一族だからこそ魔族と言われているんだぞ」
「おぉ」
「今ので気になったんだが、人間界で『魔族が、人間界に侵略するから魔王を倒して欲しい』って言われて信じなかったのか?」
「問答無用で異世界に誘拐して、地下牢に監禁する奴らの言うことを信じます?」
「確かに」
「ですよね。そう言えば、私が破壊した地下牢の扉とかどうなったのでしょう?」
「あれは、俺が魔力で元通りにしておいたぞ」
「その後の聖女(嘲笑)の取巻きたちへの尋問を想像したら笑えますねwww」
「だろ」
「どうやって、聖女(嘲笑)の観察をするんですか?」
「観察魔のトオコがしてくれる。彼女は、遠見の魔法が得意でな。どんな場所であろう遠視できるのだ」
「スクリーンに映してくれるか」
「分かりました。魔王様」
映し出された映像は、沈黙を誘うものだった。
現在の聖女(嘲笑)の取巻きたちの様子___
「穀潰しの女、戻ってこないな」
「聖女様から本名を訊いた後に、真名を縛ったのにおかしいよね?」
「お前の上司、失敗したんじゃないのか?」
「そんなはずないですよ。あの方は、この国一の魔法使い。真名縛りは確実に成功しましたので。それに、穀潰しの男と聖女の真名は縛れたと言ってました」
「穀潰しの女が戻ってこなかったら、どうするの?僕たちの性欲処理」
「聖女様にさせるわけにはいかないしな」
「そうですね。今は聖女様を調子に乗らせて思い通りにする準備期間ですしね」
「だいたい、『魔王を倒す旅』って大それたこと言っても成功したことないんでしょ?」
「記録によると一度も成功したことがないそうです。もともと、異世界から聖女を召喚してこの人間界の住人の子を孕ませるのが目的ですから。それには旅をしてつらい経験をして、吊り橋効果で僕たちに惚れてもらわないと」
「めんどくさいな。とっとと孕ませればいいだろ」
「そういうわけにはいけませんよ。キチンと段階を踏まないと効果がありませんから。それに、聖女を惚れさせた方が僕たちにとっても楽ですので」
「そうだね!」
「じゃあ、穀潰しの女は死んだのか?」
「上司によると、生きているそうです」
「俺たちの性欲処理係なのに、戻ってこないとは生意気だ」
「聖女様がいる手前、娼婦を買うわけにもいかないしね」
「まったくだ」
「穀潰しの女の探索を続けるのか?」
「上司は、性欲処理のためだけなら無駄だと打ち切りにしました。『それぐらい、自分で処理しろ』だそうです」
「みんな、寒気がしなかったか?」
「うん」
「気のせいでしょう。これからの目的のために神経質になってるだけですよ」
「それもそうだな」
「そうだね」
映像終了。
私は思わず殺気に満ちた声で、
「アイツらの男として大事な部分を切り落としたいですね」
この部屋の者たちは私の殺気に怖じ気づき部屋の隅まで逃げて行った。
「月香さん、殺気を抑えてもらえますか?」
この世界の魔王様がなぜか敬語で言ってきました。
いけない、いけない。普段、悪魔と天使や馬鹿な神たちを葬る時の殺気をつい出してしまった。
「ところで、魔王様」
「ハイィィィッ」
そんなに怯えんでも。取って食いはしないのに。
「アイツらに悪夢を魅せることができます?」
「もちろんです、月香さん。夢魔のナイリーが悪夢を強制的に魅せることができます。どのような悪夢をご希望ですか?」
「男性の大事な部分を色々な武器で切り刻まれる夢を。反応によって、様々なバリエーションで魅せるというので」
この世界の魔王様は顔色を悪くして、
「まさに悪夢だな。ナイリー、やれ」
「分かったよ。魔王様」
ナイリーは、聖女(嘲笑)の取巻きたちの頭上に行き夢魔の呪いをかけました。
この後、今までは名前を呼び捨てだったのに、なぜか『さん』づけで呼ばれるようになりました。
主人公が、魔法使いの上司の魔法『真名縛り』の影響を受けなかったのは、教えた名前が『真名』じゃないからです。