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げんじつはきびしい

1週間が経った。


ここが何処でどういう世界で自分がナニモノでどうしないといけないか、が解ってから1週間。どうにかするぞ!と意気込んではみたものの、実際対策として出来た事はほとんど多くない。

ずっと引きこもってるわけにも行かないから外に出ようとしたら厄介なお隣さんこと如月啓太が「行って来るわー」という声とともに外に出て来る音が聞こえて(ちなみに声は元のゲームと同じだった。声の聞き分けが出来るので助かる)慌てて引っ込んだとか。本屋で雑誌を物色していたらふらりとヤツが入って来て、どうにかヤツの目から隠れつつそっと逃亡したとか。


そんなお隣さんと主婦同士仲良くなったおかーさんいわく「啓太くん、悠里が行く高校に通ってるんですって。一緒に通学すればいいんじゃない?」とか。男の子と2人で通学とかいらぬ噂を立てるだけだから嫌だといったら少し残念な顔をされた。何故だ。


そしてもう1人の初っ端から好感度MAXチョローこと黒岩崇の居場所も解った。

何と我が家の最寄のコンビニでバイトしていた。コンビニに入った途端目に飛び込んできたヤツの姿に声を上げなかった自分を褒めてやりたい。

その場でUターン、はさすがに怪しいので雑誌コーナーを軽く物色してから、彼のいるレジに行列が出来ているのを確認した上で外に出た。おでんを寄越せ弁当を温めろでぐるぐるしていたからこちらを見ている暇なぞ無かっただろう。


もちろんその後そのコンビニには近づいてすらいない。アイス欲しいな、雑誌買いたいな、というときにごく近くで365日24時間やっているコンビニにぱぱっと行けないのはいろいろ不便だけれど(ついでに梃子でもそのコンビニに行きたがらず、必要ならば反対側の倍以上距離がある店を選んでいる娘を両親ともに訝っているけれど)、それもこれも全うな未来を得るために必要な事。

ここまで徹底して避け倒しているのは自分でも怪し過ぎるとは思うけれど、今後に響くので黙認して頂くほかない。


そんな中、例のプログラムの概要が何となく解って来た。

どうやら私が相手を、あるいは相手が私を一度でも(認識している・していないは別として)目撃した事があるか否か、そして攻略対象者になりうるか否かで名前がリストアップされているらしい。


最初に気づいたのはお姉ちゃんが家に来た時だ。それまではっきりお姉ちゃんの名前があったのに、お姉ちゃんが家に来た事で突然消えた。

お隣さんこと如月啓太のお母さんの名前も、偶然玄関先でばったり会った後で消えていた。

さらに私が外出するたびに人の名前がどんどん消えていくのを見ると、もう自分の仮説は正しいと信じるしかなかった。お兄ちゃんの名前はまだリストに載っているけれど、今晩来るといっていたから寝る前に確認してもし消えていたらビンゴだと思う。


その一方、目撃した・されたけれど消えていない人物の名前もある。そしてその人物の欄からは見事に棒が生えていた。

生えたのは如月啓太と黒岩崇の2人だ。認識した時はさすがにうわ、となった。とはいえさすがにいきなり100%ということは無く(そもそも喋った事も無いのに好感度100%とかいくら何でも異常過ぎる)、大体60%~65%を推移している感じ。70%以上で好き、85%以上で愛してる、95%以上で俺のものだ(!)となることを考えたらまずまずか。

でも接触がほとんど無いにも関わらず既に好感度が6割以上に到達している棒グラフは、「よっぽど気をつけないとあっという間に上がるぞ」といっているようだった。


しかしよっぽど気をつけないと、ってこれ以上何を気をつければ良いのだろう。

1回の、たった1回の会話で好感度振り切る可能性だってあるというのに。


「いつまでにどうしないといけない、は基本的には無いけれど」


そう、実はエンディングを迎えるまでの期間は決められていない。

スタートは高校2年生になる春だけれど、終わりは無い。卒業した上で大学に行く事で、あるいは就職する事で攻略できるキャラ、あるいは到達するエンディングもあるからだ。

ゲームをプレイしていた当時は「凄いなぁ、随分気の長いゲームだなぁ、やるなぁ開発」って思ったものだけれど、これが現実になると心もとない事この上ない。なぜなら、トゥルー・エンドに到達する道、それは


「好感度を上げすぎず下げすぎず、各キャラの相談に乗ったり他キャラと交流をしつつ、全員を各キャラにとっての正ヒロインと出来る限り早くくっつけろって事だもんなぁ」


時間がかかればかかるほど好感度のコントロールはどんどん難しくなって行く。しかも何が厳しいって、これがセーブもアンドゥも効かない一発勝負だという事だ。どういう結末を迎えても最終的にループするという事を考えると厳密には一発勝負ではないだろうけども、一度でも失敗したら同じ茶番をまた繰り返す羽目になるのかと思うと滅入って来る。


「ほんっと、厳しいなぁ」


こんな厳しい現実を夢見た事など、一度だって無いはずなのに。

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