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終章 運命の再会

 私が夢でも見ているような気分で話しかけると、彼は「お久しぶりです。女王陛下」と微笑んだ。アメジストの瞳で見つめられた瞬間、私は自然と涙を流していた。


 妹を失った悲しみと、彼と念願の再会という明暗の感情が入り混じっていた。バトラーは「どうか泣かないでください」といつぞやのハンカチで涙を拭いてくれた。


「そ、ど、どうして? なぜ骸骨に?」

「私、実は人間じゃないんです」

「人間じゃ……ない?」

「死神なんです」


 彼はアメジストの瞳を煌めかせた。


「死神……でも、どうしてこの部屋で?」

「あなたの話を聞いた時、真っ先に妹さんを疑いました。呪いに関する本を呼んだ通り、『悪魔の囁き』は呪いたい相手の髪の毛が必要です。それを取れるのは王国内部にいて、かつ女王に近づける人物です。それができるのは妹さんしかいない。

 あなたと別れた後、城を散策しこの部屋を見つけました。私の予想は大当たりでした。が、妹さんに見つかって別の呪いで私は骸骨になり……そのまま五年間動けませんでした」


 私はあっけにとられていた。ずっと会いたがっていた人がまさか身近な場所にいるなんて思わなかった。


「えーと、あの……情報がありすぎて混乱しているんですけど……とにかく、助けてくれてありがとうございます」


 お礼を言うと、バトラーは「大したことはしてないですよ」と言って窓の方に近づいた。


「あの、どちらへ?」

「もうあなたに危害を加える人はいないようなので帰ります」

「ま、待ってください!」


 私は彼の腕を掴んで引き止めた。


「せ、せっかく五年ぶりにお会いしたのに。こんなあっさりとお別れするなんて……お茶の一杯でも飲んでいらしったらよろしいのに」

「この上ないお誘いですが、こう見えても多忙でして。それに五年間もサボっていた訳ですから、大急ぎで埋め合せしないといけませんので」


 バトラーはそう言って窓の方から出ていこうとしたので、私はますます強く握った。


 ふと脳裏にあるフラッシュバックが起きた。幼少期の光景が凄まじいスピードで流れていった。


「思い出しました」

「何をですか?」

「ずっとあなたの事が引っかかっていたんです。こうして手を触れるとどこか暖かく感じるような……まるで母に包まれたような心地がするんです。今までずっとそれが何なのか思い出せなかったんですが、ようやく分かりました。

 五歳の時、お父様とお母様が亡くなった時、私は一人部屋でこもって泣き続けました。いっそこのまま死んでしまおうかと考えていた時、子供の頃のあなたと出逢った。あなたは私を強く抱きしめてくれた。だから……」


 急に腕を引っ張られたかと思うと、彼と唇を重ねていた。死神とは思えないほど暖かいぬくもりが全身に溶けていった。老人が魔法で若返る時、こういう心境なのだろうか。


 風が吹いて我に返った時はもう彼の姿はいなかった。下の方から召使い護衛達の騒がしい声が聞こえてきた。この部屋に辿り着くのも時間の問題だろう。


 私はこれからの未来よりもついさっき終わってしまった彼とのファーストキスを脳内で何度も繰り返し再生していた。


 生まれて始めて運命だと思う人にキスしてくれた彼。光るアメジストの瞳に酔いしれながら窓辺に頬杖をついた。


 今宵の月は満月だった。バトラーとの大切な思い出を(さかな)にしてお月見をするのも悪くはない。



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