第7話 第一部隊について
初任務が無事終わり、三人で帰路に着いた。負傷者は蒼矢だけなので、すぐに手当をしてもらい、第1班の部屋で休憩することとなった。すると、雪瀬が蒼矢の方に振り向き、無邪気に言った。
「さそーいえばさ、蒼矢ってどこまで知ってんの?」
「何をですか?」
いきなり振られた質問に蒼矢は少し驚きながらも返した。
「いや、知識漏れがあると不便なことがあるから共有できるものがあるならしておきたいなって。で、特犯の組織のことについては知ってる?」
「大体のことは訓練生の時に教わりました。」
「まあそうだよね。じゃあ、逆社会組織については?」
「何となくは。でも、訓練生の時それについてはあまり詳しく教わりませんでした。」
「あ〜やっぱりか、配属場所によって逆社会組織についてどこまで知っていいか決まってるらしいのよ。」
「そうなんですか、」
どうしてなんだろうと、蒼矢が思っていると、後ろから聖都が、
「逆社会組織は公に公表しないと政府が決めているんだ。できるだけ、国民への恐怖を植え付けないためみたいな言い分じゃなかったけ?」
「そーそーそれ!」
雪瀬が聖都に同意した。
「まあ、第一部隊は逆社会組織について知らなくていい知識なんてないからね。じゃあ大事なとこから順番に話していくから、聞き漏らさないでね。」
「はい……」
周りがピリつく。やはり雪瀬も聖都も逆社会組織に何らかの因縁を持っているのだろう。そして、雪瀬が語り出した。
ー逆社会組織とはー
発足時期不明の謎に包まれた組織。一つ明確にわかっているのが「この世界の常識をひっくり返す」という思想を掲げている事だ。
「ひっくり返す」
この根本的なものはまだ不明だが、彼らが行う犯罪行為がその思想に近しくなるようなものがあるのだと思う。
まあ、我ら「第一部隊」が1番関わるやつを重点的に話していこう。
まずいちばん横行しているのが「殺人」。
月に何度かのペースで複数の人が殺されている。関わることがなければ普通に過ごしている一般人は殺されることは滅多にない。ただ、特犯警察と何らかの関わりがあったり、逆社会組織の不都合を生じると判断されたものは瞬く間に消されていく。
第一部隊は世に言う逆社会組織の「暗殺者」と戦うために作られた部隊だ。
そして、その「暗殺者」を率いている奴は、
「ロート」
と呼ばれる奴であることがわかっている。第一部隊を何年かこなしているものは必ず遭遇したことがある奴だ。そして、何人もの特犯警察関係の人が殺されている。やつに狙われて生きて帰れたものはいない。正に暗殺のプロだ。顔周りは髪と衣服で隠れてはっきり素顔を見たものはいなく、また、特犯警察の精密な情報や技術(DNA判定みたいなもの)をしても個人は特定できていない。噂によると、遺伝子に不純物が紛れ込んでいて、何を示しているかよく分からないそう。今、確か第3部隊が頑張って調べているそうだが。
まず、我々第一部隊が真っ先に消すべき奴だというのを理解してくれ。こいつが生きている限り犠牲者は減らない、いや、増えていく一方だ。
話している雪瀬の顔は今までに見た事のないような殺意のような懺悔のような、逆社会組織の人を人と認識していない冷たさを感じた。
すると、この重い雰囲気を一掃するように部屋のドアがバンっと開いた。
「新生第1班!全員生存任務遂行おめでとう〜!」
第一部隊隊長の夕城澄玲だった。
雪瀬、聖都、蒼矢は張りつめいた緊張が弾けるように解けたので揃ってその場でガタンと動揺した。
「あらっ?どうした?」
「今思いっきり逆社(逆社会組織の略)の話をしてたんだ……」
雪瀬が神経をすり減らしたように弱々しく言うと、
「あ、そうなの?ごめんごめん。てか、まだ教えてなかったの?」
「教える暇がなかったから暇な今教えてるんだ。」
雪瀬が応える。
「どこまで話したの?」
「ざっと『ロート』のことについて話し終えたかな?」
「『ロート』ねえ、基本的に特犯警察の恨み買ってんのこいつだもんね。基本的に特犯に入る時の原因がこいつが起こした事件によるものが多い。私は時系列的に違う可能性が高いみたいだけど、」
「僕も時系列的に違うね。あと、僕の場合は団体で襲撃されたんで、まあ普通に違う。でも、仲間は数え切れないほど殺された。」
「俺はロートにやられたと聞いている。1番驚いたことはそこで初めてそいつのDNAを採取することが出来たんだが、推定14歳前後だったことだったな。」
雪瀬と聖都が少し過去のことを思い出す。そして、澄玲が蒼矢の方を見てこう言った。
「そうそう、確かあなたまだ家族の事件についての詳細知らされていなかったと思うけど、結果が出たのでちょうどそれを持ってきたとこでもあるのよ。」
「あ、」
蒼矢は澄玲から詳細のかられている紙をもらった。
「ま、中身を簡単に言うと、ご家族を殺したのはそのロートだって判明したのよ。」
「そう、ですか。」
詳細の紙を読んだ蒼矢はクシャっと紙を握りしめた。
「仇はロート、じゃあ俺はそいつを倒せば……」
蒼矢は新たに覚悟が決まった顔を見せた。
「俺が、必ず、この手でロートを倒して見せます。」
すると、澄玲がフッと笑い言った。
「その心意気だ。いいんじゃないか。」
そして、聖都が後ろから蒼矢の肩をポンと叩いて言った。
「ロートを討つことは譲りはしないからな。俺だって、この手で仇を討つと決めている。だから、今日からライバルだな。どっちが先にロートを討つか。」
「はい、望むところです。」
2人が闘志を燃やしている中で、澄玲は、
「まあ今のところ現実味を考えたら、ロートを討てるのは雪瀬かリヒトだと思うがね。」
「僕は無理でしょ、てか思ったけど隊長ってあんまり仇取る!!みたいなのないよな。ロートにもそんなに興味ある感じではなかったけど。」
「あれ?言ってなかったっけ?私は仇を取るために此処にいるんじゃない。本当はずっと大切な人を探してるの。」
今回めっちゃ長くなった。どこで話を区切らせるか迷いました。次話もお楽しみに。