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勇者さまは女の子  作者: 三ツ陰 夕夜
1.旅のはじまりとパーティの結成
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(5)初めての勇者活動

 コーダンに続き、二人目の仲間になったラーニカはまだ冒険者歴6年目。

 才能が開花するのが遅く、人より遅れて魔法学校に入学したという事だが、得意とする炎魔法は扱いが難しいため今まではパーティメンバーに恵まれなかったらしい。

 という事で、冒険者ランクはまだD。護衛の依頼が受けれるのはCからだから、報酬はいらないと断られてしまった。

「じゃあ、僕のパーティにいる間の必要経費は全部僕が払う。これだけは譲れないからね」

「えぇ、分かったわ」

 ラーニカは大人の女の人って感じで、じっと見つめられると少しドキドキしてしまう。

 見た目だけ男の子になるつもりだったのに、もしかして心まで男の子になってしまったんだろうか・・・?



 3人に増えたけど、当初の予定通り私の装備を買うために防具屋を回って、コーダンに皮装備を見繕ってもらった。

 ラーニカが「もっとオシャレなのないの?」と文句を言っているのを横目に、シンプルで機能性が高くそこそこの値段の装備を発掘していくコーダン。

 私は渡されたものを試着して、言われた通りのものを購入するだけ。信用出来るベテランの感覚はすごく頼りになって、思っていた額の半分で思っていた以上の装備を揃えることができた。

 今までの装備はどうしようかと思っていたら、なんとラーニカが収納魔法を持っていた。

 小さいサイズだったとしても収納魔法はすごく助かる。今度時間のある時に陣を見せてもらおうかな。

 そんな感じで装備を揃えて、カーゴ村を出ようとしていた時、真新しい立て看板が目に入った。

「盗賊?」

「ここ数年、稼げなくなった冒険者崩れがこういうのに手を染めてんだよ」

 苦笑するコーダンの後ろでラーニカもうんうんと頷いていた。ロロン村近辺は平和だから盗賊なんて見た事なかったけど、わざわざ注意のための立て札が出ているならみんな困っているんだろう。

「ギルドは何もしないの?」

「討伐依頼は出てても報酬が低すぎて誰もやりたがらねぇんだろ。金持ちが依頼出す前はほぼボランティアだしな」

「ふーん」

 魔物だと討伐したら素材が手に入るが、相手が人間なら身ぐるみ剥ぐ訳にも行かないし、お宝を溜め込んでいる確証が無ければ最悪骨折り損になるということか。

 人間相手だからド派手に魔法でって訳にもいかない。殺さないように手加減しながら捕まえるのは確かに面倒くさそうだ。

 だが、逆にそれは私にとってのチャンスでもあった。

「みんなが困ってるなら倒しに行こうか」

「正気か?」

「危ないわよ?」

 止めようとする二人は、冒険者としては正しいのだろう。

 けど、私は意見を変えるつもりはない。

 だって私がなりたいのはただの冒険者ではないのだから。

「でも、勇者になるならやるべき、でしょ?」



 一度カーゴ村に戻り、ロープを何本か調達してから、盗賊が出るという街道脇の森に入った。

 けもの道を少し歩くと、被害報告があったという野草の群生地に出る。

「すごい、花って日陰でも咲くんだね」

「この花は逆に日陰じゃないと咲かないのよ。だから少し貴重なの」

「そうなんだ・・・」

 森自体は屋敷の裏にあった森とほとんど変わらない雰囲気だが、植生は違うのかもしれない。

 本を読むだけでは知らなかった事だ。冒険って本当に面白い。

「さて、どうしようか」

 白い可憐な花を見渡しながら、手持ち無沙汰になってしまった。

 盗賊とはいえ、さすがにすぐに出てきてくれることはないだろうし、どのくらい待てばいいんだろうか。

 コーダンは目をつぶったまま木にもたれかかっていて、長期戦の構えだ。

 ラーニカは、座り込んだと思ったら花を摘み始めた。

 葉を痛めないように、ひとつずつ綺麗に花の部分だけを摘んでいる。

「それどうするの?」

「干してお茶に入れると、魔力が回復するのよ」

「えー、凄い!」

「回復って言ってもほんの少しだけどね」

 お茶なんて今までは煎れてもらうものだったから、野草の花を浮かべるなんて思ってもみなかった。

「僕も摘むから飲んでもいい?」

「もちろん」

 微笑むラーニカの隣に座り込み、見よう見まねで花を摘む。

 プチプチと小気味いい音を立てながら摘んでいると、すぐに小さな花の山が出来上がった。

「これくらいあれば十分よ」

 そう言って、ラーニカは花を収納魔法で片付けてから立ち上がる。

 取りすぎはいけないんだろうけど、楽しかったのでちょっぴり残念だ。

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