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勇者さまは女の子  作者: 三ツ陰 夕夜
7.ただの夢じゃ、なかったんだね

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(44)最後のクエスト

「殿下」

 再び現れた執事の人は、まるでディーナンしか見えていないかのようだった。

 フィンが「角!角すげぇ!」って騒いでるのに眉毛一つ動かさなかったしね。

「なに?」

「件の者ですが、現在拠点としている地点が判明いたしました」

「そいつってさ、鉤羽(カギバ)?」

「はい。一年程前より姿を見ておりませんでしたが、今はダンガに身を潜めているようです」

「知ってて、放っておいた?」

「そのような事はございません」

 執事の人の眼鏡の奥の瞳は、彫刻のように冷たかった。声もずっと事務的で、そんな彼を試すようにディーナンは目を細めた。

「ふーん」

 仲が悪いというか、相容れないという感じ。

 魔王も感情があまりない冷たい感じがしたけど、ディーナン以外の魔族ってみんなこうなんだろうか?

「案内を致しますか?」

「いいよ、ダンガなら分かるから」

「承知いたしました。では、私はこれで」

 サッときてサッと下がっていくのも、私の屋敷ではありえない光景だ。

 こんなところで、ディーナンは育ったのか。

「て事で、行こうか勇者さま」

 こんな所で育ったのに、こんなに軽薄なのか。

「みんな一緒にね」

「えー、2人でデートがいいー」

「はいはい」

 おふざけモードに入ったディーナンは放っておいて、コーダンの方へ向き直る。

 察してくれたらしいラーニカとフィン、シアラも集まってきてくれた。

「お願いがある」

「何だ?」

 初めてコーダンに声をかけた時を思い出した。

 でも、あの時とは全く違う。

「魔力至上主義が、悪巧みをしてるらしいんだ」

 全てを話せる。この人たちの前では。

「でも魔王の仕業じゃなくて、魔王の元配下の仕業らしいんだ。僕はそいつを倒しに・・・いや、そいつを闇の魔法で下しに行こうと思っている」

「魔王じゃなければ倒しても勇者にはなれねぇぞ?」

「うん、分かってる」

 勇者は、魔王を倒した者に与えられる称号だ。

 魔王を倒す以外で、その称号を得ることはできない。

 だから、私はもう一生勇者になることはできないだろう。

 わざわざ言葉にしてくれるなんて、コーダンは優しいね。

「日当も出せないし、成功報酬もないと思う。危険な上に、達成しても名声すら得られるか怪しいクエストだ」

 まともな冒険者は引き受けるわけないクエストなのに、気の早いフィンはもうフライングで頷いていて、笑いそうになってしまった。

 シアラは声に出さずに「もう、フィンったら」って言ってるし。

「それでも、僕は、リーアンは挑戦しようと思う」

「あたしは着いて行くわよ」

 気が早いのはラーニカもだ。

 まだ大事な言葉を言えてないのに、そんなの彼女にとっては些細なことなのだろう。

「これが、リーアンの最後のクエストになる」

 コーダンは、待っててくれる。私が喋り終わるのを。

 本当に、良い冒険者だ。

 できることならば、彼みたいに、彼みたいな冒険者に、なりたかったよ。

「だから、僕の仲間である君たちに一緒に来て欲しい。一緒に、戦いたい」

 けれど今は不思議と、「勇者」じゃなくてもいいかなって思えるんだ。

「僕と一緒に、来てくれる?」



 魔族は基本的に名前を明かさないらしい。

 ターゲットの魔族も、名前は魔王様しか知らないらしく、鉤羽というあだ名のようなもので呼ばれているとのこと。

「あいつなら、リーアンが服従魔法使えば楽勝だよ」

 そうディーナンは言ったけど、服従魔法なんて見たこともなくて。

 ディーナンがおでこをくっつけて術式を教えてくれたけど、使うためには対象の2メートル圏内に入らないとさすがに難しそうだった。

 魔族の土地で、魔族相手にそこまで接近するのは、正直骨が折れる。

 リーアンの最後の冒険に相応しい難易度かもね。

 ディーナンの転移魔法があったから、鉤羽のいるダンガまではすぐだった。

 問題はここから。ダンガには鉤羽を除いて少なくとも8人の魔族の魔力を感じたから。

「どうする?リーダー?」

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