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勇者さまは女の子  作者: 三ツ陰 夕夜
6.そんな夢をずっと見ていたかった

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(39)覚悟は決まった

 護衛とパーティメンバー。これらは似て非なるものだ。

 目的も、動機も、全く違う。俺は自分の利益最優先だが、こいつらはパーティメンバーとして自らの意思でリーダーに貢献する。

 違うのだから、感情のままに動くという事がどれだけ愚かしいかも身に染みている。

 そのはず、なんだがな。

「じゃあ私が雇うわ」

「それは、違ぇだろ。それに払えんのか?」

「一生かかっても払うわよ」

 ラーニカの提案に思わず頭を掻いた。危険を冒さないように生きてきたというのに、これっぽっちの言葉だけで気持ちが揺らぐなんてな。

「あのなぁ・・・」

「あ、肉体労働で良ければ俺も払いますよ!」

「私、薬ならお渡しできます」

 フィンだけじゃなくシアラまでも、ふざけたことを言い出しやがる。

 そういう問題じゃないことは分かっているはずだ。リーダーが悩んでいる時に助けになるのは、金で雇われた護衛じゃないということは、そんなことくらいは分かっているはずだろう?

 お前らがいればあいつだって耳を貸すだろうに。

「コーダンさんが迎えに行ったらリーアンもすんなり帰ってくると思うんすよね」

「は?なんでだよ?」

 無駄に口数の多いフィンの言葉が、無駄に心に響いた。

 もしかしたら俺は、無意識のうちにそう言われるのを待っていたのかもしれない。

「だってリーアン、『コーダンみたいにかっこいい冒険者になりたい』って言ってたし、めっちゃリスペクトしてるっぽかったじゃないすか」

 胸が、ざわつく。遥か昔に手放したはずの浮ついた気持ちが、いつの間にか息を吹き返しているのに気付いたが、不思議と悪い気はしなかった。

「そうよ。護衛とは言えあんたちゃんとパーティメンバーだったじゃない」

 ひと月にも満たない、子どものお守り。

 それでもあいつと過ごした時間は、俺を変えて余りあるものだった、ということか。

 諦めがため息に出た。そのまま部屋の中を見渡す。

 あいつが選んだあいつのパーティ。それに俺も含まれるのか。俺も、仲間の一人と思ってくれているのか。

 それなら、仕方ねぇな。

 ここにいるのは、冒険者ランクBの剣士と、炎の魔法使いと、斥候と薬師。

 魔王なんて大それたものは倒せない戦力だ。だが、迷子のリーダーを迎えに魔族の土地に行くくらいなら、十分だ。

「行くならすぐに発つぞ。俺たちのリーダーを、無理にでも連れて帰る」


------

 魔王城の城下町であるゴヤに着いたのは、大使館を出発した2日後の昼だった。

 さすがにここまで来るともう魔族しかいない。

 と言っても、もう角と羽と尻尾が生えて牙も伸びた私だって、どこからどう見ても魔族なんだけどね。

 ディーナンは相変わらず人間みたいな見た目のままだったけど、そういう魔族もたまにいるっぽくてそこまで浮いてはいなかった。

 ゴヤの一番大きな通り。人でごった返していて賑わう様は貿易都市ソアラの屋台通りと変わらなくて、違う生き物だという事を忘れそうになる。

 最も、食事の不要な魔族にとって食べ物はただの娯楽でしかないおかげで、食べ物は高価だし味はいまいちだ。

 「勇者さまもここでは食事はいらないと思うよ」とディーナンが言っていたが、一応人間としての体裁を保つためにもご飯は食べる事にしていた。

 魔族の通貨は持ってないからディーナンの奢りになるのが腹立たしかったけど。

 この日も、お昼ご飯を食べ、晩ご飯と明日の朝ご飯用のサンドイッチを買ってもらい、宿屋のような施設で部屋を借りた。

 そして夕方前、「ちょっと出て来るよ」と言って外出したっきり、ディーナンは戻らなかった。

 一夜明け、朝ご飯を食べ終わっても、彼は戻らない。

 コーダン達も一緒にいた時は気にならなかったディーナンの不在だけど、魔族の土地に1人きりにされるとほんの少しだけ心細くなってしまう。

 絶対に口にはしないし、態度にも出さないけど。

 それに、これはこれで良かったのかもしれない。

 魔族であるディーナンが魔王様に喧嘩を売って、もし負けてしまったら、彼は今後この地で生きづらくなる。

 もし、負けてしまったら。

 その時はどうしようか。

 勝算がないわけじゃない。けど、相手は仮にも魔王だ。

 闇魔法を使って、長期戦に持ち込めば倒せるだろうけど、上手くそんな流れに持って行けるかどうかは賭けだった。

 でも、行くしかない。

 行かないとお父様が、勇者ローレンが来てしまう。

 それより先に私が倒さないと、勇者の称号はもらえないのだ。

「よし、行こう」

 掛け声のように呟き、自分に隠匿の魔法をかけた。

 忍び込むまでは完ぺきにこなせる自信がある。後はその後、どうやって奇襲をかけるかにかかっているのだ。

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