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勇者さまは女の子  作者: 三ツ陰 夕夜
5.冒険者のようなひと時

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(35)嘘はここまで

 「宿は必要ねぇと思うぞ?」というコーダンにゴリ押して宿を取った。

 ラーニカ、シアラ、フィン、ついでにディーナンにも宿で待機してもらい、コーダンと2人で大使館に向かう。

 歩きながら、どう切り出そうかと考えていた。

 考えながら、大使館に着く。

 貴族の屋敷風の建物。中に入るとホールのような吹き抜けで、冒険者らしき数組をカウンターで対応していて、少し賑やかだ。

 そして、2階の廊下に、見知った顔を見つけた。

 彼女がここにいるのか。

 なら、彼女に頼ればすんなりと行くかもしれない。

「おい、こっちだぞ」

「うん」

 カウンターで手続きを始めたコーダンの後ろで、彼女の魔力を探った。

 2階の真ん中の部屋に入った後そのまま動いていない。位置的に考えても、この大使館内で重要な役職に付いているのは確実だ。

 さすが、お母様が手放しで褒める人だけある。

「では、手続きを行いますのでそちらに腰掛けてお待ちください」

「あぁ、分かった」

 受付が終わり、カウンターから離れる。

 長椅子に座ったコーダンを追いかけて、その正面に、立った。

「・・・どうした?」

「唐突で悪いんだけど、護衛、ここまででいいよ」

「は?」

「ここでの宿代と帰りの船賃は払うから。あ、護衛料いくらになるんだっけ?」

「おい待て」

「何?」

 コーダンは難しい顔で探るような視線を寄越した。まるで最初に話しかけた時のようで、少し懐かしい。

「魔王城までじゃなかったのか」

「そう思ってたんだけど、ここまで来れたからもういいかなって」

「あいつらはどうする?」

 コーダンの言葉に、ラーニカが告白してきた時の事が浮かんだ。でもそれも一瞬だけ。

「それは考えてあるから大丈夫」

 ニッコリと嘘の笑顔を作る。コーダンはちゃんとした大人だから、こうやって頑なな態度を取れば追求してこないと、知っているから。

「護衛料、精算してよ」

「足りんのか?」

「足りない。でも当てがあるから大丈夫」

 ほら、こうやってコーダンは流されてくれる。

 やっぱり信頼出来る、良い冒険者だ。



 彼女がいたのは、予想通り大使の部屋だった。

 大使の部屋の、大きな机。「魔族領ヴァグル 王国大使」と書かれたプレートの向こうに座っているという事は、彼女が大使なのだろう。

 犬のようなもふもふの垂れ耳に、ぺちゃんこの鼻。かつて父様の仲間であった亜人で学者のマクマさんだ。

「どなた?」

 水色の瞳がチラリとこちらを見る。

 母様は行方が分からないと言っていたけど、慣れたように書類にサインをしている姿は、彼女が大使になったばかりでは無いことを物語っていた。

 後ろで扉が閉まった音を確認してから、貴族としてのお辞儀をした。

 もちろん、ドレスは着ていないからフリだけどね。

「マクマさん、お久しぶりです」

 マクマさんの手が止まって、今度はしっかりと私を見た。

 5年振りだっけ?でも、亜人の彼女は年齢が分かりにくいから、最後に会った時から変わってないように見えた。

「母が会いたがってましたよ。たまには遊びにいらしてください」

「・・・あなた、リーミア?」

「今はリーアン。勇者志望の」

 マクマさんに分かって貰えたのはいいが、私の後ろに立つコーダンに本名がバレてしまった。

 まぁ、いいか。もうお別れなのだから。

「魔王城に行く気?」

「うん」

「その人と?」

「いや、彼はここまで護衛してくれたんだ。それで、護衛料を立て替えて欲しくて」

「それは良いけど、ニーニアとローレンには?」

「ちょっと待て」

 さすがにお母様とお父様の名前が出たらコーダンが口を挟んでくる。知らない人はいない2人だ。これも仕方がない。

「お前、勇者ローレンの関係者か?」

「もしかして、話していないの?」

 責めるような疑惑の目が2対。思わず目を逸らした。

「この子、ニーニアとローレンの娘よ」

「娘ぇ?だがこいつ、付いてたぞ」

「付い・・・幻視魔法でも使ってるんでしょ。ローレンの持ってる禁書でも読んだんじゃない?」

 さすがはマクマさん。禁書の事までバレてしまった。

 彼女の前では隠し事はできないとお父様が言っていたのを思い出す。

「ごめん、ちょっと急ぎだからその話は後でにしてもらえないかな?」

「急ぎってことは、ローレンが討伐要請を受けたのね」

「多分。だから、彼への護衛料の立て替えと、急ぎで2人分の通行許可を出して欲しい」

 コーダンへは護衛の終了を伝えればいいだけだったけど、パーティメンバーであるラーニカ達へはどうするかを最後まで考えていた。

 宿屋に置いていこうとは思っていたけど、事情を説明するのに書き置きじゃあ味気なさすぎる気がしていたから、マクマさんがいてくれて助かった。

「あと、もし1週間経っても僕が戻らなかったら、宿にいる僕の仲間に事情を説明して欲しいんだ」

 マクマさんであれば、私の身元だけじゃなく、この旅を始めた理由も分かるだろうから。

 だから、彼女がいてくれて、本当に助かった。

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