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勇者さまは女の子  作者: 三ツ陰 夕夜
5.冒険者のようなひと時

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(32)ラーニカの想い

 食堂を出た後は部屋に戻った。

「コーダンさんかっこよかったよなー。俺もあんな風に体でかくなるかなぁ」

「斥候は身軽じゃないと駄目なんじゃない?」

「確かに・・・」

 ラーニカが二部屋借りてくれたので男女別だ。たぶんシアラに気を使ってくれたのだろう。

 だというのに、それを察してくれないのがフィンだ。

「ちょっと、シアラが怖がってるかもしれないから慰めてくる!」

 なんて言って出て行ったので、部屋には私一人になる。

 コーダンが戻ってこないのは、まだあのおじさんの相手をしてくれているのか、それとも飲み直しているのか。

 ディーナンは・・・いやいや、あいつは、あんな腑抜けた奴のことはもう忘れよう。

 どうせまだうじうじとサキット街のダンジョンで悩んでるに決まっているんだから。

 座っていたベッドから立ち上がり、上着を脱ぐ。壁にかけてチラリと窓の外を伺っても、外には誰もいない。

 でも逆側の、廊下側には人の気配があった。

 控えめなノックの後、扉が開く。そこには装備を解いたラーニカが立っていた。

 野宿の時とは違い、髪も下ろして楽な格好の彼女は少し幼くも見える。

「どうしたの?」

 少しだけ胸がドキドキするのを誤魔化すように声をかけた。

 ラーニカは、俯きがちなまま部屋に入り、私の目の前で立ち止まる。

 一回り年上の女の子に言うのはおかしいかもしれないけれど、こちらを伺うように見上げる姿は、凄く、かわいかった。

「さっき、庇ってくれてありがと」

「本当のことだから。ラーニカは凄い魔法使いだよ」

 いつもより声が小さいラーニカ。こういう時って、庶民はハグとかしていいんだっけ?

 あ、でも、男の姿で女性に触れるのはまずいか。

「あの、ね。リーアンに言いたいことがあって・・・」

「うん」

「この旅が終わってからも、私、リーアンと一緒にいちゃ駄目・・・?」

 反射的に「いいよ」と答えようとしたけど、ラーニカの表情を見て止めた。

 いつもと違う彼女の表情。困ったような、それでいて恥ずかしそうな、思わず抱きしめたくなるような、そんな表情。

 これは、もしかしなくても告白をされていると、そう言う事だろうか?

 私のパーティにいたいと言ってくれているのであれば、嬉しい事だ。勇者になった後の予定は未定だけど、それを分かった上でもと言うのであれば、前向きに考えただろう。

 でも、違うらしい。

 ラーニカは、女の子として、男の子のリーアンの事が好き。ということらしい。

「ごめん」

 性別とか年齢とか色々考えたけど、それがなかったとしても彼女の気持ちに答える事は出来なかった。

 だって、ラーニカが知っているリーアンは本当の私じゃないのだから。

「僕、勇者になった後の事はまだ考えられないんだ」

 ラーニカが悲しまないように、彼女の気持ちには気づかないふりをしてニッコリと微笑んだ。

 嘘は得意だから。

 実直なラーニカと違って、嘘をつき続けるのは得意なのだから。

「とりあえず魔王を討伐して、その後もラーニカの気持ちが変わらなければ・・・一緒にダンジョン攻略でもする?」

「・・・うん」

 控えめに頷くラーニカは、残念そうにも見えた。

 でも、パーティリーダーとしては最善の選択だったと、今でも自信を持って言えるよ。



 ラーニカを部屋に返した後、一人で考え事をしようと思ったらタイミング悪くフィンとコーダンが部屋に帰ってきてしまった。

 ので、私は今宿屋の屋根の上にいる。

 パーティメンバーとは言え、人前でこんな変な顔はできない。それほどまでに、ラーニカのあの告白は衝撃的だったのだ。

「あー!もう!」

 モヤモヤするようなむしゃくしゃするようなよく分からない感情だった。

 好意を寄せられるのは嬉しい。でも、リーアンは私じゃない。

 リーアンは、私の理想の姿なのだ。仲間想いで明るく元気な風の魔法剣士。そしてそんなリーアンが目指すのは、誰もが憧れるような、何もやましいところがない、祝福を持った勇者。

 私とは、リーミアとは似ても似つかない姿なのだ。

 自分の考えが自分に突き刺さったかのように胸が痛んだ。こんなにネガティブな姿だって、誰にも見せられないのだから。

 だというのに。

「星空の下で考え事なんて、モテる勇者さまは違うねぇ」

 聞き慣れてしまった軽口は、すぐ近くから聞こえてきた。

「げ、お前何してるんだよ」

 思わず口が悪くなった私に構うことなく、軽口の主、ディーナンは隣に腰を下ろす。

 魔族とは言え、本当にこいつは神出鬼没だ。

「俺も考え事、かな?そしたらとりあえず可愛らしい子が見えたから声かけてみた」

 このふざけた口調だっていつも通りで、ほんの少しだけホッとしてしまう。絶対に、態度には出さないけどね。

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