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勇者さまは女の子  作者: 三ツ陰 夕夜
5.冒険者のようなひと時

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(31)爆炎の魔女

 温泉は、凄く気持ち良かった。

「極楽だったわね」

「はい、お肌ツルツルになっちゃいました」

 温泉だけなら、最高だった。

「どうりで!シアラがいつも以上に可愛いと思ったんだ!」

「もう、フィンったら」

 本当に、温泉に浸かるだけなら最高だったのに・・・。

「リーアン?どうしたの?」

「なんかこいつ、裸見られるの恥ずかしかったらしいすよ」

「フィンが見すぎなんだよ!!!」

 男の子の体に見えたとて、見られるのは恥ずかしいからとタオルでそれとなく隠してたのに、「マナー違反だ」とかでフィンがひったくってきたのだ。

 しかもその後もジロジロ見てくるし!

「だって、ヒョロいからどこの筋肉で剣使ってんのか気になるじゃん」

「口で聞けばいいだろ!口で聞けば!!」

「ごめんねリーアン。ほら、フィンも謝って」

「はーい、ごめーん」

 全く気持ちの籠っていない謝罪に憮然としたまま夕ご飯を頬張った。

 フィンはこう、距離感がおかしいんだ。あのディーナンだってもう少しちゃんと距離感があったのに!

 そう思ってしまって、フォークを持つ手が止まる。

 追いつけるだろうと置いてきたが、さすがに船に乗ってしまえばディーナンであっても追いつけなくなるだろう。

 それまでに、合流、してくるのかな。

 合流して来なかったら、もうお別れ?あの会話が最後で?

 何となく後味が悪いような、座りが悪いような変な感じ。

 考え込んでいたせいで、周囲の警戒がおろそかになっていたようだ。その声が聞こえるまで、その人がラーニカに接近していたことに気づかなかったから。

「お前、爆炎の魔女じゃん!」

 明らかに酔いが回っているそのおじさんは、ベテラン風の冒険者だった。

 腰には双剣。風の魔力も持っているようだ。

 ラーニカのことを知っているようで、少し親しげにも見えるおじさんだったが、対するラーニカは嫌そうな顔で少し俯いていた。

 そんなラーニカにも気づかないのがフィンだ。

「おっさんラーニカの事知ってるの?」

「知ってるも何も、そいつ前俺らのパーティにいたんだぜ」

「えー!じゃあ運命の再会じゃん!」

 ラーニカの元パーティメンバーか。にしては嫌な笑い方だ。

 向こうの席にいる剣士の男性と、水の魔法使いの女性もこちらを見てるから元パーティメンバーみたいだけど・・・この距離でもしっかり悪意を感じるなぁ・・・。

「こいつとパーティ組んでるんなら気を付けろよ。油断してると焼き殺されるから」

 茶化している口調だったけど、今のは明らかにラーニカに対する侮辱だった。

 「何それ?」と首を傾げるフィンは、きっと魔法についてあまり詳しくないのだろう。

「魔法操作が下手だ下手だと思ってたけどよ、とうとう焼き殺されかけたから首にしたんだよ。新しいパーティでは死人が出ないといいな」

「おじさんって魔法初心者?」

 本来であれば、ラーニカのように聞き流したり、コーダンのように無視するのが大人としては正解なのだろう。

 けれど、私はまだ子どもだ。それにラーニカは、私の大切な仲間だった。

「は?」

「魔法って、風、水、土、炎の順で扱いが難しくなるんだよ?光と闇は例外だけどね」

 魔法を使う人であれば、基礎中の基礎の知識。

 そんな冒険者であれば知らないはずがないであろうことを、あえて口にした。

「んなこと知って・・・」

「あと、ラーニカみたいに魔力量が多ければ操作もその分難しくなるんだよ。おじさんみたいに平均的な魔力量の人は知らないかもしれないけどね」

「このガキ、喧嘩売ってんのか!」

「水魔法でガードすることも、風魔法で熱を避けることもせずにラーニカの魔法操作が下手?あの恵まれた火力を上手く使えなかったのはパーティリーダーが無能だっただけって話だろ」

「クソガキが!」

 おじさんが顔を真っ赤にしながら剣に手をかける。それと同時にコーダンが私の目の前に半身を滑り込ませた。

「どけ!そのクソガキ黙らせてやる!」

「冒険者は私闘はご法度だ」

「んなこと知るかよ!」

 私にはおらついた態度を取ったくせに、ガタイが良くていかにも強そうなコーダンが睨みつけるとおじさんの勢いもみるみるうちに萎んでいく。

 見た目でしか人を判断できない小物って感じで、いっそ可哀そうなくらいだ。

「自分の無能を棚に上げて彼女のせいにするなんて、おじさん格好悪いね」

「おい、リーアン。その辺にしといてやれ」

 コーダンに言われてしぶしぶ口を閉じる。まぁ、ラーニカが笑いをこらえてるみたいだからここらへんで勘弁してやるか。

「クソガキのお守りなんていい仕事してんだな!」

 身の程をわきまえる事を知らないようで、おじさんは今度はコーダンに食って掛かり始めたようだ。

 こんなのがラーニカの元パーティメンバーだなんて、本当に残念だ。

「俺はてめぇの為に止めてやってんだぞ」

「あぁ?!」

「てめぇの言うクソガキが、このパーティのリーダーだ」

「ガキのお守りだけじゃなくて飼われてんのかよ、傑作だな!」

 いい加減煩くなってきたので、食堂を出ることにした。

 ラーニカ、シアラ、フィンの後に続いて席を立つと、後ろからこんなコーダンの声が聞こえてきた。

「言っとくが、あのリーダーは俺より強いぞ」

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