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勇者さまは女の子  作者: 三ツ陰 夕夜
4.大樹の街サキット

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(28)未登録の薬師

 ラーニカはコーダンに任せて、私一人で光る草を回収することにした。

 ディーナンのところに行かずともその手前に生えてくれていた草を多めに採取できたので、そのままコーダンが教えてくれた薬屋に向かう。

 年季の入った老舗風の店。その近くで飛行魔法を解除したところで、図ったかのように声をかけて来る男性がいた。

「ねぇ、君もしかして薬買いに来た感じ?」

 私より少し年上っぽいけど、体は小さめで、かつ身軽そうだ。

 音もなく近寄ってきたから、偵察役の冒険者といった感じか。

「そうだけど?」

 敵意はなさそうなのでとりあえず返事はしておく。コーダンに「うるさいやつは無視でいいぞ」と教わったけど、さすがにそれはできそうにない。

「あ、俺フィンっていうんだけどさ、良かったら調薬任せてくんない?格安でやるからさ」

 敵意はなくとも、怪しいことこの上なかった。

 残念ながら私に調薬の知識はないし、たとえ目の前で作業してもらってもきちんと薬を作れているかも確認しようもない。

 お金には困っていないので、詐欺の可能性を考えると辞退するのが最善だろう。

 そう思って、「残念だけど」と言いかけたところで、私の返事を察したフィンが床に這いつくばるように頭を下げた。

 土下座って、やつだと思う。初めて見たけど。

「この通り!お願いします!調薬させてください!!」

 甘いのかもしれないが、年上のお兄さんに人目もはばからず懇願されてしまえば、流石に無下にすることはできなかった。



 フィンは明らかにただの冒険者だったので、なぜ調薬させてとお願いされたのか分からなかった。けど、ご機嫌な彼に案内されて着いた先の小屋でその理由を理解することになる。

「シアラ!お客さん連れてきたよ!」

 フィンに続いて小屋に入ると、色んな薬の匂いが混じった何とも言えない空気に出迎えられる。

 そんな中で、たった今まで読んでいた本から顔を上げたのは、フィンと同い年くらいの女性だった。

「え?お客さんって、もしかしてまた無理やり・・・?」

「今回はちゃんとお願いしてから連れてきたよ」

 家にしては少し小さいが、生活するのに必要なものは詰まった秘密基地みたいな小屋だ。

 シアラが読んでたのは薬草の本のようだし、机の上に広がる見慣れない道具は調薬に使うものにも見える。

 もしかしなくても、調薬するのは彼女だろう。

「ごめんなさい。フィンにどう聞いたかは分からないけど、私ギルド登録していないの」

 なるほど、そういう事か。

 この国では薬師は登録制で、薬師ギルドに登録しないと薬を売ってはいけないことになっている。

 けど、調薬自体は禁止されていない。

 調薬の腕を上げるには調薬する必要があるけど、売れない薬を作り続けるにはお金がかかるのだ。

 だから調薬させてくれる人を探していたという事だろう。手っ取り早くて賢い方法だ。

「調薬はできるんだよね?」

「できる、けど・・・」

「シアラの腕は俺が保証するよ!」

「もう、フィンは黙ってて!」

 フィンの保証はよく分からないけど、シアラを視ると彼女は水の魔力を持っているようだった。

 水の魔力は植物と相性が良い。ならば、調薬にもいい影響がありそうだ。

「魔力酔いの薬をお願いしてもいい?僕、君が作るところ見てみたいな」

 私は、誰かのために頑張る人も、努力をする人も、好きだ。

 もしちゃんと薬にならなくても、また材料を取りに行けばいいだけなのだ。だから、この2人のためになるなら、いくらでも挑戦させてあげようとそう思った。



「ギルド登録がないからお金は貰えない」とシアラが頑なだったので、調薬のお礼はお昼ご飯にした。

「若いのに大したもんだな」

「ほんと、おかげで助かったわ。ありがとう」

 もちろんコーダンと、シアラの薬ですぐに回復したラーニカも一緒だ。

 ディーナンは・・・知らない。

「リーアンが材料をくれたからですよ」

「違うね、シアラの腕が良いからだね!」

「もう、フィンは黙ってて!」

 幼なじみで同い年だという2人だったけど、私にはもう家族に見えた。

 男女で一緒に暮らしているのもだけど、こう、2人で1人みたいにしっくりくる感じがしたのだ。

「こんなに腕が良いのにギルドに登録しないの?」

「それは・・・」

 ラーニカの問いに、シアラとフィンは顔を見合わせる。どうやら何かワケありらしい。

「ま、硬い話は置いといて、好きなだけ食え。うちのリーダーの奢りなんだからな」

「うん、なんならお弁当も作ってもらいなよ」

「マジで!おばちゃーん!弁当10個追加で!」

「もう!フィンったら!」

 お調子者のフィンとしっかり者のシアラ。ギルド登録はしていなかったとしてもシアラの腕は確かだし、冒険者の多いこのサキット街ではグレーな仕事であっても生活して行けるくらいの需要はあるのだろう。

 知り合って少ししか経ってないのにいい人たちだと思った。だから、彼らには幸せになって欲しいなぁと、ぼんやりと考えていたのだ。

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