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勇者さまは女の子  作者: 三ツ陰 夕夜
4.大樹の街サキット

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(25)大樹の街

 サキット街までは丸一日歩けば着くはずだったのに、街道沿いの休憩所で1泊することになった。

 何でも、変わった強盗が出るらしく、犯人が魔獣ではないかということでソアラから警備が来ているらしい。

 ソアラの警備と顔を合わせてしまって万が一にでも襲撃がバレたらヤバい。

 ということでの1泊だ。

 冒険者の為の簡易的な宿泊施設。とは名ばかりのただの掘っ建て小屋だ。

 野宿と違って雨風は防げるけれど、ベッドなんて贅沢なものはないし、何より、利用人数が多い。

 あと5人増えたらもう野宿に変更しようかと本気で思った程度には利用人数が多い。

 床に直に寝るのは構わないんだけど、パーティメンバーとは言え、他人と肩が触れる距離で横になるのは居心地が悪かった。

 壁際のラーニカとディーナンに挟まれた配置なのも少し落ち着かない。

 どちらが、ではなく、どちらとも。

 右側からラーニカの寝息が聞こえてくるのも、左肘にディーナンの体温を感じるのも、どちらともドキドキした。

 変なの。ただ隣に寝ている、それだけなのにね。



 朝起きるとディーナンはいなかった。でもいつもの事なので誰も特に気にもせず朝飯を食べて休憩所を出た。

 これからサキット街に行く話というを他の冒険者としている時に「良ければ一緒に」と誘われたけど、コーダンが断っていた。

 ダンジョンに潜る際に大所帯になりたがるのは素人で、そういう奴らは大概報酬で揉めるのだと、後から教えてもらい納得する。

 情報はありがたかったけど、確かに彼らはお世辞にもダンジョン慣れしているようには見えなかったからだ。

「すっごい・・・」

「こんなに大きいんだね・・・」

 サキット街。そこは、遙か地底から地面を突き破って現れた12の大樹の幹をくり抜いて、無理やり人が住み始めた街。

 大樹と言っても、魔力を吸って成長する魔樹だ。

 地底のダンジョン内では元気に育つが、魔力のほとんどない地上付近はほとんど枯れていて、樹木と言うよりは砂山のようなこんもりとした盛り上がりが12箇所あるように見える。

 でも、ひとつひとつがロロン村くらいの規模があるし、街全体がダンジョンの上にあるのだから、その活気は凄い。

 冒険者と、冒険者を相手にする商売人。珍しい品を買い求める行商人に、観光客のような人たちもいるように見えた。

「一旦宿を取るぞ」

「泊まる予定はないよ?」

「そん時はキャンセルすればいい。急遽泊まりになって宿が取れねぇと悲惨だぞ」

「確かに・・・」

 慣れたように人をぬって歩き始めるコーダンの後を追いかけた。もちろん、肩が触れるくらいのパーティメンバーの距離感だ。

 すれ違う人達と時たまぶつかってしまうのも、冒険者では普通らしい。ソアラで聞いていなかったら今頃はぐれていただろうから、コーダンに教えて貰っていて本当に良かった。

「きゃっ」

 後ろの方からラーニカの小さな悲鳴。

 反射的に人混みに流されかけていた彼女の手を取った。

「大丈夫?」

「ありがと」

 魔法使いの身で人混みは酷なのかもしれない。

 宿を取ったらコーダンに相談してみようかな。



 宿を取ったのはもの凄くファインプレーだった。

 と言うのも、借りた部屋に入るなりラーニカがベッドに倒れ込んだからだ。

「ラーニカ大丈夫?!」

「・・・うん。ちょっと酔っただけ」

「酔う?」

「魔法使いが魔力の少ない状態でダンジョンに入ると闇の魔力酔いを起こすんだよ」

 コーダンに言われてラーニカの魔力量を視ると、確かにいつもの半分くらいしかない。

 ソアラで使った魔力がまだ回復しきっていないということか。そうか、普通の人は魔力回復にそんなに時間がかかるのか。

「ごめん、ラーニカ。無理させたね」

「あたしが油断してただけだから大丈夫よ・・・」

 ラーニカの声に明らかに元気がなくて、助けを求めるようにコーダンを見た。

「どうにか出来ないの?」

「ほっとけば治るぞ?」

「でもそれじゃあラーニカが可哀想だ」

 魔力酔いと言うくらいだから、お酒に酔ったのと似てる感じなんだろうけど、経験したことのない私にはその辛さが分からないのだ。

 それに、女の子が苦しんでるのは放ってはおけない。

「ギルドに行けば薬くらいはあると思うが・・・」

「じゃあそれ買ってきて」

「はいはい、分かったよ」

 渋々といった体で、コーダンは部屋を出ていく。また「ラーニカに甘い」とか思ってるんだろうか?

 でも今の私は男の子なわけだし、女の子に優しくするのは普通のはずだ。逆に冒険者という生き物が女の子に厳しすぎるのだ。

「水、持ってくる?」

「ううん、ちょっと寝るわ」

「分かった。おやすみ」

「おやすみ」

 返事をして数分で、ラーニカは寝息を立て始める。

 それを見ていたかのように、風が「こっち」という囁きを運んできた。

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