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勇者さまは女の子  作者: 三ツ陰 夕夜
3.貿易都市ソアラ

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(23)奴隷商の館への襲撃

 襲撃予定5分前。

 ラーニカは奴隷商の館の正面に、コーダンは東門に身を潜めている。

 幻影魔法は私が使った。ディーナンは光魔法はもちろん闇魔法もそんなに多くは使えないから、2人と別れてから私が魔法をかけた。

 ラーニカは初老の男性に、コーダンは若い男の子の姿になっている。

 性別転換の術式を改造したせいか何なのか、何故か男性にしか見た目を変えれなかったのだ。

 私の見た目は中年の男性。ディーナンは自分の魔法で若い女性の姿になった。

 館を上空から見下ろしながら、念の為周囲を伺う。

 真夜中なだけあって、想定通り一般人は近くにいない。

 時計塔の針が1つ動き、予定の時間になる。と、同時にラーニカの氷魔法に見える炎魔法が炸裂した。

 魔法の見た目を変えるのはちょっと難しかったけど、上手くいったようだ。

 安心する私の足の下で、今度はコーダンが頑丈なはずの壁を派手な音と共に瓦礫に変えていく。

「じゃ、俺も行ってくる」

「うん、気をつけて」

 一緒に宙に浮いていたディーナンが降りる先は、中庭だ。警備の魔獣の相手をしてから地下へ向かう手筈になっている。

 私は、一旦姿を消し、音を立てないで割った窓から館の中へと忍び込む。

 ド派手なラーニカの魔法と、見た目の割に馬鹿力過ぎるコーダンのおかげで館内はパニック状態だ。

 映像記録か魔力感知か分からないが、念の為見つけた魔具は手当り次第に壊しながら館の中を練り歩いた。

 魔法が使える警備はいるみたいだ。氷魔法の反転魔法を使っているからそこそこ優秀なんだろうけど、ごめんね、それ本当は炎魔法なんだ。

 さすがに書斎には人の気配がない。階下の主寝室には複数の人の気配。

 あぁ、これはきっとまた嫌なものを見ることになる。けど避けては通れないものだ。

 いや、私が避けたくない道なのだ。

 2階に降りると、こんな所までラーニカの冷たい熱気が上がってきている。

 これだけ思い切り使っているんだ、もう少ししたら魔力切れに近づいて撤退を始めるだろう。

 使用人は主人を見捨てて逃げてくれたようで、ほとんど残っていない。

 ディーナンは、もう奴隷を逃がし終えただろうか?

 いや、きっと大丈夫。

 私は私の役割を果たすんだ。

 光魔法で施錠してある主寝室のドア。闇魔法を乗せた風魔法で粉々にしてやった。

 主寝室に足を踏み入れる。

 魔族の少年と少女が1人ずつ。おじさんが3人。

 ほとんど裸同然で、おじさん達は気色の悪い魔具を手にしていた。

 驚き顔で固まる彼らの前で、消していた姿を露わにする。今の私は、黒い長髪に紫色の目というどこからどう見ても魔族のような姿になっていて、驚きと嫌悪感が混ざった視線が飛んできたけど余裕の表情で受け止めてやった。

「だ、誰だ!」

「おい、警備は・・・っ」

 魔族の子にかけられた拘束魔法を闇魔法で強引に解除する。

 館の主は、1番太ってるこいつか?

「ひぃ!助けてくれぇ!」

 少し睨みつけるだけで尻もちをついて悲鳴をあげる姿が見苦しい。

 でも多分こいつは違う。

 残る2人のうち、魔力を持っている方が土魔法を放ってきた。瞬時に反転魔法を使って消したけど、こいつ魔力増幅の魔具を使ってその程度の魔法か。

 だが、主は判明した。魔法を使ったおじさんの後ろに隠れているおじさんだ。

 面倒くさいので2人まとめて睨みつける。闇の魔力を漂わせて威圧すればおじさん達は目に見えて怯えていた。

「今回は大目に見てやろう。だが、次に我らに手を出したら、その姿のまま我らの土地をさ迷う事になるぞ」

 言いながら闇魔法でおじさん達の脳裏に悪夢を刻みつけた。これで恐らくひと月の間はうなされ続けてくれるだろう。

 気色の悪い人たちを、もう目にするのも嫌なので踵を返した。

 風魔法で持ってきたシーツを纏わせてあげながら、魔族の2人にほほ笑みかける。

「着いておいで」

 困惑は一瞬だけ。直ぐに頷いてくれたのでさっさと部屋を出た。

 廊下に出ると、ラーニカの魔法が止んでるのに気づく。もう撤退したのだろう。という事は、コーダンもそろそろ撤退を始めるはずだ。

 こちらが派手になるのは避けたかったが、仕方がない。急ぎ撤退するために吹き抜けの天井に穴を開けて、3人分の体重を浮遊させる。

 うん、この重さなら問題ない。驚き顔の子ども達を連れてそのまま屋敷の上空まで移動して、そこで気づいた。

 奴隷はディーナンに任せていたから、この子たちをどこに連れて行けばいいか分からない。

 このまま飛んで逃げたんじゃ目立ち過ぎるし、3人分の浮遊と隠匿を同時にするのはちょっと自信が無い。

 どうする・・・?このままじゃ、体制を立て直した警備に気付かれるのも時間の問題だ。

 隠れる場所がないか周囲を見渡す。そんな私の耳に「こっち」と囁く声が聞こえてきた。

 ディーナンの声だ。でも彼は近くにいない。

 風魔法に声を乗せて送り、魔力の残滓を残して道案内をしてくれるらしい。

 なんて器用な魔力操作だろうか。魔族なのに。

 驚きはしたが、迷うはずもなく案内された方に飛んでいく。

 その、一見何の変哲もない路地裏には、ディーナンの幻影魔法が張り巡らされていた。

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