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勇者さまは女の子  作者: 三ツ陰 夕夜
2.勇者としての素質

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(12)下水道に蠢くもの

 一瞬で体が楽になり、まとわりついていた泥が崩れるように溶けて消えていく。

「リーアン大丈夫??」

「うん」

 反転魔法だ。しかも唱えたのは、いつも通りに佇むディーナンだった。

「俺、役に立つだろ?」

 あの数秒で、魔法の術式を読み、それに対応する反転魔法を詠唱したのか?

「あんた反転魔法なんて使えるの?」

 ラーニカにドヤ顔で返事をするディーナン。

 確かに、反転魔法は魔力量が少なくても唱えられる。黒目であれば魔力の術式を視るのも容易いだろう。

 だが、反転魔法は、魔法の数だけ種類があるのだ。

 大抵一種類の魔法に特化している属性魔法使いと違って、全ての種類の反転魔法を記憶するには、人の何倍もの努力が必要になる。

 しかも、あまり使わないトラップ魔法の反転魔法なんて、お父様の書庫にもなかったのに。

「助かった。ありがと」

 ディーナンがいかに凄いことをしたかに、気付いたのは私だけだった。

 だって魔力至上主義者が大半の魔族にとって、反転魔法なんてものは本来見向きもされないもののはずなのだから。



「これ、ゴブリンのトラップじゃない?」

 振り返ると、ラーニカがトラップ魔法の陣を調べてくれていた。

「ゴブリンなら話が変わってくる。一度戻るぞ」

 渋い顔で辺りを見回すのはコーダン。

 ゴブリンも確か本来ダンジョンにいるはずの生き物だ。ビッグラットのように何かしらで這い出してきてここに住み着いたのだろうか。

「倒さないの?」

 ラットだろうが、ゴブリンだろうが、下水道の治安を守るためには駆除が1番だろう。

 ラーニカに焼いてもらえばすぐに済むのにと、考えた私は実に経験不足だったのだ。

「ゴブリンは狡猾(こうかつ)なんだ。(さら)った人間を盾にすることもあって無闇には突っ込めねぇんだよ」

 ゴブリンの知能が高いのは本で読んで知っていた。けど、「攫った人間」とか「盾にしたりする」なんて、本には書いていないことだった。

「人が、攫われてるかもしれないの?」

 ここはダンジョンではない。

 普通の街の、普通の下水道だ。

 そんな所に、攫われた人が囚われているかもしれない。そういう事?

 コーダンとラーニカは何か知っているのだろう。何も言わずに目を逸らすのは、恐らくそういう事だ。

 ディーナンを見た。

 冒険者じゃないけれど、私と違い平和じゃない地で生きてきたであろう彼は、答えを教えてくれた。

「魔獣の中でも知能が高いから、人間の女子どもを攫って(なぶ)るらしいね」

 嬲る?

 私の今までの人生で、聞いた事のない言葉だった。

 けれど、それが酷い事柄を示しているのだと、コーダンとラーニカの表情が物語っていた。

「助けに行く」

「待て、またトラップがあるかもしれないんだぞ」

 確かに、私はトラップ魔法には無知だ。

 それでも、いい。

「その時はまたディーナンに解除してもらう」

 ディーナンの方を向くと、頷いてくれた。

 魔法を使えるゴブリンがそう何匹もいるとは思えないから、トラップに関しては彼さえいれば問題ない。

「ゴブリン退治は素人が手出しできるほど簡単じゃないのよ?」

 心配そうに言いながら、ラーニカは少し怯えているように見えた。彼女は女性で、私は子どもだ。

 捕まれば嬲られる対象なのだ。

「じゃあ、手伝って。ラーニカの魔法があれば焼き尽くせるでしょ」

「人質がいたらどうするの?」

「僕が反転魔法を使う」

 ラーニカの魔力量からして、彼女が使う炎魔法の火力はきっととてつもない。

 でも、私は細かい魔力操作ができる。人質の周りにだけ反転魔法を使うくらいは余裕だ。

「俺も使えるよ」

 こいつ炎の反転魔法も使えるのか。口にはしないがディーナンはこれからも頼りになりそうだ。

 ラーニカは私とディーナンを見て、助けを求めるようにコーダンに視線を向ける。私たちの視線を一気に受け止めて、コーダンは「参った」とでも言うようにため息をついた。

「分かった。その代わり俺が危険だと判断したらすぐ撤退しろよ」

 ベテラン冒険者のコーダンが、少し無理矢理だったとはいえオッケーをくれた。

 戦力的に行けると、判断してくれたんだ。

「うん」

「でも危険じゃ」

「ラーニカは魔法を使った後は下がってて。万が一の事があったら助けを呼びに行って欲しいから」

 私の事を心から心配してくれるラーニカに微笑んでみせる。

 自分が非力な上に経験不足なのは分かっている。

 それでも、これはきっと勇者になるためには避けて通れない道だと、そう思う。

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