act104.5 僕が聞いたこと【sideセオドア】
時系列 本編act104の後 9月6日の夜。
『そっ、それが、アキラの………!??』
『ああ。すごいだろ。俺よりすごいんだよ』
と、鳥肌が!!!
ざわっ、ぞわっと、全身に走って、胸がきゅーっとなった。
ハルトを客間に運んだ後、ショーマの部屋に来て色々話をしてたらアキラの話になった。
『普通は、できないってあきらめるよな。っていうか、そんなの目指さないだろ』
『で、でででで、でも、でゃっ…………!!』
こっ、興奮して噛んじゃった。
胸が、ドキドキする。
アキラなら………、出来るかもしれない。
いや、実現して欲しい。
……………そうか。
だから、あんなに本を読んで勉強して、ずっと頑張ってるんだ。
『だからぁ、親父がさ、その為に頑張ってるんだよなぁ』
『あれ、ショーマ酔ってる?』
『何言ったんだ、酒なんか飲んでないだろ?』
…………酔ってる。何で?
はっ!!
ショーマもあのデザートで酔った!!???
もしかして、しれっと酔うタイプだった?
ショーマと飲んだことがないから、知らなかった!
お酒に弱いんだ。
それとも、僕が思ってたより強めで作っちゃったのかな。
『ショ、ショーマ………?』
『なんだ?』
ふ、普通だ。普通に見える。
だけど、さっきは絶対ちょっと違った。
……あれ? そう言えばショーマ英語で話してる。
自然過ぎて気づかなかった。
へぇぇぇ、酔うとこんな感じになるんだ。
一見全然わからないな。
さすがアキラと兄妹だな。
アキラも普通に受け答えしてたからね。
素直だな、とは思ったけど、酔ってるって感じじゃなかった。
それにしても。
あのアキラは可愛かったなぁ。
とっても似合ってた。
弟も可愛いけど、妹っていいなぁ。
『おい、今あきらのことを考えてるだろ!』
『そ、そうだけど』
『あきらはやらないからな!』
酔ってると思って見てると面白い。
普段より本音がぼろぼろ出るんだ。
ショーマは外であまり飲んでほしくないな。
よし、普段聞けないことを、聞くチャンスだ!
『アキラが留学したいって言ったらどうするのさ?』
『そ、そこは……、止めない。俺は、留学した方がいいと思ってるから』
『ほっ、本当に!? 僕、手配できるよ?』
『ああ、セオがコーディネーターなら安心だな』
こっ、これが、ショーマの本音………………!!
さっきから胸がドキドキしっぱなしだ。
アキラの才能はもっと開花すべきだ。
アキラさえイエスって言えば、僕なら色々サポートできる。
アキラの未来の為に、僕が役に立てる。
ノアの為に頑張ってきたあれも、思わぬ形で実を結ぶかもしれない。
何て素敵なことなんだろう。
アキラが中心になって、全てを巻き込んでいくんだ。
――――そう、いつか。
目を閉じると、みんなの笑顔が見える。
8年前に出会った笑顔が素敵な女の子が描く未来は、こんなにもキラキラしてる。
『そんなの1人で頑張ってできるもんじゃないだろ? あいつは周りを巻き込むのが得意だから、とことん巻き込めばいいんだよ』
あれ、話が元に戻った。
『俺の夢の先を、あきらが引き継いでくれるんだぞ。こんな最高なことってないよな』
ショーマはそのまま、ぽてっとベッドにもたれた。
『留学するのはいいんだけど。1つだけ、問題があるんだよなぁ……』
そう呟いて、ショーマはそのまま眠りに落ちてしまった。
………問題?
何だろう、問題って。気になるな。
これ、起きた時にショーマはこの話をしたことを覚えてるのかな。
近いうちに、改めて話をした方が良さそうだね。
それにしても、大作の映画を観た後の気分だ。
想像しただけで、こんなに胸を振るわせられたんだ。
それを、本当に目にした時。
かけがえのない物が手に入ってるに違いない。
眠りに落ちたショーマを見ながら、初めてショーマと出会った時のことを思い出した。
あの偶然が、今に繋がってる。
途中であきらめなくてよかった。
僕も、僕の出来ることを精一杯やろう。