15 世界樹は地雷系?
「エルフは森に悪態をつき憎む。だが森に火を付けられるようなことがあれば、自滅が先か相手を仕留めるのが先かの精神をもって刺客となり、放火犯を追い続けるだろう」
長老の木の元に案内されながら、ビシャル長老からエルフの森に対する接し方を教わる。
「そんなことになれば、儂も刺客に二、三年分は持つ量の長老の木の枝を折って渡し、追わせるであろう」
う~ん、エルフの感覚はよく分からない。
「長老の木は、十年単位ぐらいなら繋げればまた元に戻るしの」
重要な木なのかそうでないのか、エルフの話を聞いているだけでは判別がつかない。
そうこうしているうちに、長老の木のある場所にたどり着いた。
辺り一面の木々の数十倍はありそうな幹。これが長老の木で間違いないだろう。
「精霊に愛されし者」はすでに起動済みだ。
ビシャル長老の言っていた意味が分かった。
これは会話ができる。
すぐにそう直感した。
植物と言うより、まるで精霊かなにかのようだ。
虚精霊こと「擬人の精霊」と融合した時、精霊の愛する者が失われる恐怖を私も感じた。
どこかでそれと似た感覚に覚えがあったのだ。
そう、あれはゴーレムだ。
ゴーレム精製魔法を使って、ゴーレムに私を愛しろと命令を行うと、まるで私を愛しているかのようなリアクションを取る。
これは精製魔法に、「愛せよ」と命令を受けた時にはこういった動作をしろというプログラムが埋め込まれているからだ。
どこか魔法生物の知育にも似た様式。
応用すれば、単純動作しかできなくして、魔力の消耗を低くすることもできる。
「擬人の精霊」の取った、愛する者が失われる反応は、このゴーレムの反応に似通っていた。
エンシャル導師は「擬人の精霊」の名を知った時、精霊とは人に使われるために生まれたのか、と疑問を呈していた。この類似性を鑑みればその疑問にも真実性が増す。
今、長老の木からは精霊に似た感じを受ける。
だが、これはゴーレムや擬人の精霊のような、システム的な感情だとは思えない。
本物の感情、なのかしら。
それとも、超高性能なため本物の人間と間違うような域に達しているシステムに過ぎないのだろうか。
今も、長老の木から愛されているのが伝わってくる。
「ほう」
ビシャル長老も、木から私へのラブコールを感じているのか、感心したような声をあげている。
ともかく、精霊に接触するように、長老の木に樹液をくれないか頼んでみよう。
私の要望を聞いた長老の木は、自ら幹を裂き開き、樹液を分泌した。
ええ・・・・・・。
長老の木が世界樹で、世界樹が転生する時に見えた大きな小さな少女だとする仮説が正しいとすれば、今の状況を例えると、
少女が自傷して、自分の血を差し出している。
そんな光景を想像をしてしまった。
正直、引いてしまう。
変な想像は置いておいて、もらえるものはもらっておこう。
私は長老の木の樹液を採取して、瓶に詰める。
それに、もう一つ確認しておきたいことがある。
私はスキル「レイラインロード」を発動させる。
「レイラインロード」とは、地面の中にあるレイラインロードを通り高速で遠距離まで移動するスキルだ。
レイラインとは何か。それはよく分かっていない。
地脈とかそういう何かだろうという推測を立てているだけ。これもまた、よく分かっていないが使えるので使っている類のものだ。
原理はともかく、スキルを使えば地面の中にあるレイラインロードが見えるようになる。
予想通り、長老の木の下にはレイラインロードがあった。それも木の周辺だけ太く大きなっている。ロードというより、レイラインだまりといった風情だ。
長老の木を育てるために必要な土地とは、このレイラインと関係あるのではと思っていたが、的中したようだ。
つまり「レイラインロード」でこのレイラインを移動していけば、他のエルフも森に繋がっている。それは世界樹のあるエルフの聖地にも繋がっているということだ。
「レイラインロード」を使えば、エルフの聖地がどれほど遠くてもすぐに到着する。スキル「挟持合一」を同時に使えば、私に触っている者も一緒に移動できる。
すぐにでも向かうか。
いや、まずは安全性を確認してからだ。
レイラインの先が必ずしも安全とは限らない。出た先でエルフたちに囲まれ、「禁則地に入ったヒューマンどもは吊るせ!」と、なるかもしれない。地割れでレイラインが途切れていて、出た途端崖から落下するかもしれない。
そもそも見当違いの方向に突き進んでいくかもしれない。
より、レイラインが太くなっている方向に進んでみる方針で探ってみるが、それが正解とは限らない。
なので、まずは私一人で移動してみる。
私一人ならば、危険な場所でも「認識の笠」で隠れ、大体のことは「完全な肉体」で耐えられる。
すぐに遠距離まで行くのでなく、ある程度移動して現在位置を確認。その情報を元に、地図――「レイラインマップ」を作り上げ、少しずつ聖地の場所を絞り込んでいく。
エルフの村を拠点として。レイラインの調査を始めることにした。
ビシャル長老の家にある客人用の住まいに厄介になる。
長老は三百年ほど前に奥さんと死に別れ、今は娘と二人で暮らしている。娘は長老と変わらない外見年齢をしており。何も知らずに並んでいる所を見ると、夫婦のように見えた。娘も旦那と死に別れ、子供たちはすでに独立している。
個体ごとに寿命の違うエルフではよくあることだそうだ。
まず、ダルシーに長老の木から採取した樹液を飲ませる。
「蜂蜜と一緒に飲んじゃダメですかね?」
混ざってしまった場合、スキルがどのように判別するのか分からない。貴重なサンプルなので慎重に対処したい。
「うう、分かりました。クワガタになったつもりで」
ダルシーは樹液を口に含む。
私の理想は、すべて金で解決するゴールドな職場だ。だが、このままダルシーが嫌がり続けるようでは、何か別の手段を考えた方がいいかもしれない。
調査の結果、長老の木はカリリルと同じであった。
中心部に本体の枝があり、それがレイラインから何らかのエネルギーを吸収。そのエネルギー変換し、カリリルが吸収した精霊力で肉体を作っていたように、自分の周りに肉体を、樹木としての体を作り上げていた。
おそらくエンシャル導師はこのことを知っていた。カリリルを作り上げる時にこの木の構造を参考にしたのだろう。
さて、それでは本体と言うべき枝の情報だ。
「なんか、奥の方に繋がって・・・・・・、こうなんか・・・・・・、よく分からないんですけど」
魔力の限界が来たか。
スキル「掌握」はダルシーの魔力を消費して、ターゲットの情報を掌握する。効率化がされているとはいえ、ターゲットの情報が多くなるほど消費される魔力量も増えていく。あまりも膨大な情報であれば魔力が足りなくなることは予想していた。
情報量が多すぎて測定不能。それも一つの情報だ。同時にもう一つのことも意味する。
調べきれないほどの膨大な情報を持つということは、長老の木が世界樹である可能性が上がる。
「もう少し分からない?」
「うん、なんか、こう、細長い何かが、中にあるような感じが」
「それは枝は細長いでしょうけど」
「そういうのじゃなくて、なんかこう、生き物、動物みたいなのが」
「細長い動物、キリンかしら」
「えっと、そうじゃなくて、全体で細長いと言うか」
正直、細長いものに心当たりはある。だが、私が誘導して言わせたのでは意味がない。ダルシーの素直な感想でそこにたどり着いてこそ、価値ある情報となるのだ。
「ウナギ?」
「そうじゃなくて、その、爬虫類。爬虫類って感じで」
「ワニかしら?」
「あんまり細長い感じじゃないですよ、それ。そうじゃなくて・・・・・・、そう、蛇。蛇みたいな感じのやつです」
そう、転生の時に私が感じたイメージもそれだ。
世界樹は蛇。
世界樹ならぬ世界蛇。それが世界樹の真の姿なのだろうか。
そして、転生と世界樹に何か関係があるかもしれない。
働かず世話になりっぱなしというのも心苦しい。
「そうですか?」
普通は心苦しい。
私は調査の合間に、村の祭祀の手伝いをすることにした。
この村に来たばかりの時のように精霊力異常を引き起こした者がいれば治療する。
この方法で完治するわけではない。
私が精霊に下した命令の効果が切れれば、安定していた体内の精霊力はまた元に戻ろうとするだろう。そうなればまた元の、異常な状態に戻る。
そうは言ってもしばらくは持つだろうが。
精霊力異常以外にも、精霊を用いた治療はある。
体内の火の精霊力が強すぎれば熱を出すのなら、それを沈めてやれば熱は下がるといった具合だ。
手伝いをしつつも祭祀の治療を見学させてもらい、学ぶ。
この村には祭祀と薬師と医者がいる。
祭祀は精霊を使った治療を行い、薬師は薬草を使った治療を行う。医者は村の外から招へいしたり、招へいした医者から教わったり、長老の木の枝を持たせ学びに行かせたりして村に常駐するように努力がなされていた。
最新の医学書を持っていたら高値で買うぞ、と持ち掛けられたりもした。行商人から仕入れるより、その方が安くつくのだという。
「ほそっこいのに豪快な技を使うのう」
祭祀について精霊力異常の患者を二、三人治して見せた所、そんな感想を言われた。
祭祀は二百年ほど生きているエルフで、外見は完全に老婆である。祭祀の方が明らかに私より細い。腕など骨に皮が引っ付いているだけかと思うほどの細さなのに、微塵も老いを感じさせない頑健さを感じる。
「エンシャル導師に教わった方法です」
「確か、長老の姉さまじゃろ。やはり森の外に出るといろんなことを知れるようになるのかのう」
導師がエルフを調べていたのは、この精霊力異常の治療のためだ。
人情的な理由で恥ずかしい、と悪そうな笑みを浮かべていたが、あれがエルフ流の恥ずかしがり方なのだろうか。導師をエルフの基準にするのは良くない気がするが、エルフはよく分からない。
「こんな感じかのう」
二、三度見ただけの見よう見まねで、精霊力異常を安定させる精霊魔法の使い方を、祭祀はマスターした。
エルフは怖い。
ダルシーは主が働いている間、居候しながらだらけていた。
「外国に行ったらスパイと思われて投獄されたりしそう。お嬢様、やっぱり行くの辞めません?」
だらけながら、これ以上活動しないための理由を探している。
「そんな時は、握手すればいいの」
ダルシーが首をかしげる。
「スパイなら結界の効力で弱体化しているから、握手すれば手が握りつぶされるの」
「ヒエッ」
「逆に言えば握手で平気なら、それはスパイじゃないって証明になるから」
「でもー、結界って聖女の気持ち次第で効果が変わるって話してたじゃないですか。スパイじゃないのにやられたー、みたいなことになるかもしれないじゃないですか。やっぱりやめときません」
あら、この子は。
「エルフと同じように、スキルに覚醒した転生者には聖女の結界の効果は効かないわよ」
「え? そうなんです?」
「組織からもらった資料に書いてあったでしょう。読んでおきなさいと渡したわよね」
私は組織からスキルや転生者の情報が書かれた資料をもらった。ダルシーの分は貰っていない。
最初はスキル「超速複写」で私の資料を書き写してダルシーに渡そうかと思ったが、私にはスキル「外付け記憶脳髄」がある。これで一度目をを通せばすべて覚えられる。
覚えた後、組織からもらった資料はダルシーに渡した。その時に読んでおけと言っておいたのに。
資料は髪飾りに偽装した魔法道具であり、転生者の網膜認証(いつの間にか取られていた)で起動する。
起動した後にキーワードを言う。キーワードは「異世界から転生して、貴族令嬢となり、聖女と呼ばれ、婚約破棄を言い渡され、パーティーから追放される」だ。
意味があっていれば、表記ゆれは許される。
やはり、他の転生者もあれを正確に暗記できず、苦情が入ったのだろうか。「外付け記憶脳髄」があれば記憶できるのだが、共通スキルをすべて習得できないダルシーみたいな令嬢もいる。
キーワードを言うと、虚空にページが表示され閲覧できる。
電子書籍ならぬ、魔道書籍だ。
結構値の張る魔法道具である。
ページの外観やフォント、文字色や背景色も変更可能だ。本当に電子書籍みたいだ。転生者が作ったのだろうか。
つまるところダルシーは、ただ、だらけていたのではない。言いつけを守らず、だらけていたのだ。
「いやいやいや、待ってくださいよ。僕だってこう、独自の情報収集をしていたんですよ」
「へえ、一応聞いておきましょうか」
「知ってますか、マイアお嬢様。エルフの村には蜂蜜ってないんですよ」
一応知らない話ではある。
「エルフの中では蜂蜜じゃなくて、花蜜って言うんですよ」
「花の精霊魔法デ蜜を集めるから蜂は使わなイ。蜂を使わないカラ自家受粉しないといけない。店のエルフが言ってたゾ」
「なんで言うんですか」
シャシーに言葉を取られたダルシーが抗議する。
ちなみにこの村ではバビブリルの通貨が普通に流通している。
「そう、シャシーは偉いわね」
「ダロ」
「僕が、僕が受けるはずだった賛辞なのに」
「褒美に戦わせロ」
う~ん、そうねえ。
シャシーの戦闘訓練をしてもいいかもしれない、とは思っていた。
祭祀の所で働いている時に聞いた、あそこに連れて行ってもいいかもしれない。
まず、頑丈な人形を作る。
木製の物が多いが、素材は特に何でもよい。
戦闘用の人形なので丈夫さは大事だ。
それに精霊を取りつかせ、動かす。
そして、戦わせる。
人形同士で戦わることもあれば、エルフと戦わせることもあり、捕まえてきた猛獣と戦わせることもある。
この村で行われている戦闘訓練にして、娯楽にして、ギャンブルでもある。
シャシーとダルシーを連れ、その訓練が行われている賭場にやってきた。
だだっ広い空き地に、ツタのロープで囲っただけのリングがいくつか。リングを囲って喧々諤々と騒いでいる観客がいる。
飛び入りで参加できるか係員に尋ねてみた。
「いいぜ。いつも同じ相手ばかりじゃ飽きてくるからな。新顔は歓迎だ」
村の人口もそんなに多くない。同じ相手と戦うことも多くなるのだろう。
魔法生物であるシャシーが参加できるのか尋ねてみた。
「ああ魔法生物、ね。アレだろ、アレ。いいんじゃないか、なあ」
「お、おう。そうだよな。アレな、アレ。問題ない・・・・・・よな」
問題があれば発覚した時に止めることにして、シャシーを参加させた。
シャシーの体は基本物理攻撃無効なので、制限時間内に相手を倒せるかどうかのレギュレーションで試合することになった。
「コ、コキョウでマツ、ムスメにツタエてクレ、チチはユウカンにタタカッタと」
人形は崩れ落ちた。シャシーの勝利だ。ところで今のは何?
「人形のダメージが限界になったら、声で知らせるように精霊に頼んであるのさ。決着が分かりやすいようにな」
なるほど。
「イヤだ。シニタクナイ、シニタクナイ、おカアサン」
「このミがホロンでも、ワガタマシイはフメツ」
「ノロってヤル、ノロってやるゾ。ナナダイまでタタってヤル」
「カエルべきバショにカエルだけのこと。タマシイのツドウ、グレートソウルのミナモトに」
「ビシャルチョーロウバンザイ」
これが実地に赴かないと分からないエルフの生態というやつなのかしら。
「お前が弱いんジャない。相手ガ悪かったダケ、ダ!」
影響されたのか、シャシーが勝利の名乗りを挙げるようなっていた。現在七勝三敗だが、勝敗に関わりなくご機嫌の様子。
ところで、ダルシーはどこに行ったのか。私はレイラインの先を調べるのに忙しいので、問題がなければ今後はダルシーに引率させようかと思っていたのだが。
いた。
観客相手に商売を持ちかけていた。一試合が終わるまでの間、カリリルを好きに愛でていい権利を対価に金を要求している。
「嬢ちゃん、アコギな商売しているなあ」
「花蜜もタダじゃないですからね~」
「胴元の許可は取ってんのかい?」
「え゛っ」
引率役は他に用意する必要があるわね。
サーヤに頼もうとしたが断られた。
「私はマヤ様のお世話で忙しいのです。そんなよく分からない者の面倒を見ている暇などありません」
よく分からない者扱いである。確かによく分からない存在であることは間違いないが。
サーヤはシャシーには特に当たりがきつい気がする。
最初にシャシーを連れてきた時には機嫌が良かったのに。やはり、シャシーが「戦わせロ」と言って、家具や壁を殴ったり壊したりしていたからだろうか。
サーヤが忙しいのも事実だ。地図製作の手伝いや雑用。時には一緒にレイラインの先まで赴き、ここがどこなのかの調査にも付き合ってもらうこともある。
引率は別に用意することにした。
自分をオート操作で動かす「二重心」と「超速複写」をスキル融合させた、スキル「二重複写」を使う。
私そっくりの分身が生まれ、同じ記憶、思考で動いてくれる。この分身に引率をさせよう。
同じ記憶、同じ思考といっても分身の方は記憶が蓄積されない。
「シャシーが試合に勝った」と言われれば、
「そうなの」、と反応する。
もう一度、「シャシーが試合に勝った」と言われれば、
「さっき聞いたわ」、とはならず、「そうなの」、と同じ反応を繰り返す。
分身だけで引率させるのではなく、ダルシーも連れて行かせよう。
ダルシーに分身のフォローをさせ、分身にダルシーのお目付け役をさせる。
別に分身の正体が露見したところで悪いことをしているわけではない。
スキルのことは隠さなくてはならないが、忙しいので魔法で分身作って仕事をさせていたと言えばいいだけのことだ。
実際にそういう魔法もある。
というより、スキルの中には、「これ、あの魔法を使ってやっているのでは」というものが結構ある。
分身の複写などは生成魔法のようだし、「二重心」はゴーレムなどの魔法生物を作る時の挙動のプログラミングと同じ癖を感じることがある。それが高度なレベルで実践されているのではないか。
違うのは、使い手の調整が必要なく、決まったスペックで発現される点と、魔力を消費しないという点だ。
スキルは魔力を消費しない。ただし、融合スキルは魔力が消費される。
ダルシーの「連鎖獄」も改造後もそうだし、私が作った融合スキルも魔力が消費された。
「二重複写」も当然、私の魔力を消費して複写されている。
だから、融合スキルを使うときは、常に「融通無碍の肉体」の魔力消費耐性をオンにしている。そのおかげ消費されているのは感じるが、まったく減っている感じはしない。
魔力消費耐性をオンにしていないと、結構な勢いで私の魔力は消耗されるだろう。
魔力が急激になくなると、様々な症状が出る。魔力欠乏症と呼ばれる状態だ。
もともと、ヒューマンの体には魔力が流れている。その状態で安定して健康を保つ仕様になっているのだ。それが急激に失われるどうなるのか。体からビタミンや鉄分が急激に失われた時のことを考えると分かりやすいだろうか。
精霊力異常の治療に、体の精霊力を無くせば症状がでないのでは、といったアプローチも、導師の研究で考えられていた。その場合も魔力のように、失われていけないものが失われ、却って身体に害をなすという結果が出ていた。
一般魔法の正式名称が、万有魔法なのは、この魔法でできないことはないという万能感、或いは自惚れよりきている。
それ故、この魔法に依存し、魔力の使いすぎて命を落とすものも少なくない。
死に至る病、などとも形容されることもあるほどだ。