第八十話 〜一夜明けて〜
おはようございます!!
雪さんは恵慈さんを失ったことでまだ心の傷が癒えていなかった。
未来にすがる雪さんとそれに気づいた未来も雪さんに心の拠り所を探した。
うまく2人の仲が深まるといいですね!
「『お姉ちゃん』って呼んでもいいですか?」
私からしたらこのお願いは一世一代のお願いである。お兄ちゃんになるはずだった恵慈さんを失ってポッカリ空いた気持ちを『お姉ちゃん』が埋めてくれる。しかも、今言っている『お姉ちゃん』は家族って言う意味も込めている。
結局は私も恵慈さんの愛した雪さんに縋っているのかもしれない。
お互いが縋り合っているだけの状況かもしれない。根本的な解決にはなっていないかもしれない。だけど、これは停滞ではなく前進だ。きっとこの関係が明日に繋がっていくと思う。
「……!?」
抱きしめていた雪さんがこちらに振り返り驚いた顔をしている。まあ、いきなりのお願いだったし、そうなるだろう。だけど、すぐに優しい顔になり、
「うん…、いいよ。私も未来って呼んでもいい?敬語もなしでいいよ。…それが、家族でしょ?」
雪さんは私の気持ちを理解して、受け入れてくれた。私も救われた。雪さんも救われる思いでいてくれるなら嬉しい。雪さんに明るい未来が訪れることを祈っている。
「ありがとう…、『お姉ちゃん』。」
………………
…………
……
そして、2人は久しぶりに深い眠りについた……。
―――――
翌朝、今日は樹海へ向かう。
目が覚めると目の前にお姉ちゃんが眠っていた。
ゆっくり寝られたのなら幸いだ。ゆっくり起き上がり、身支度をしようと自分の荷物のところに行こうとした。
「…、おはよう。」
後ろからお姉ちゃんが挨拶をしてくれた。
「おはよう。よく眠れた?」
「うん、昨日はありがとう。今日からもよろしくね。」
私はお姉ちゃんとの絆が確かに深まったことを感じた。辛いこともあるだろうけど、精一杯生き抜いていこう。
―――――
私達は身支度を整えて、空亡と賀茂さんを迎えに、2人の部屋へ向かった。部屋でも見えたが、廊下から見える外の景色は絶景だった。よく晴れており、霞がかった風景と偉大な富士山と少し恐ろしさもある樹海のコンビネーションが絶妙である。
私達は2人の部屋の前に立ち、ドアをノックする。
―トントントントン―
「賀茂さん起きてますかー!?」
「おー!入ってこいやー!」
「お邪魔しまーす!」
許しも出たことで、遠慮せずに入室する。そこには準備万端とでも言うようなスタイルで待ち構えている賀茂さんとふよふよ浮遊する空亡がいた。
「よっしゃ!もう行くか!?」
「いやいやいや、気が早いでしょう!?せめて朝ごはん食べて行きましょうよ!」
「ん?まあ、確かにそれは一理あるな!」
意外とご飯の話となると素直になる賀茂さん。
と言うことで、朝ごはんを食べて、樹海へ出発した。
―――――
樹海への道中、昨日の戦いを見た賀茂さんから修行内容を考えたとの話から、修行をしながらの道のりとなった。
「嬢ちゃん達の戦闘は理解した。昨日の連携もなかなかだった。その上で、訓練を考えた。」
私達の戦闘において、注意すべき点があるとの話だった。
まず一つ、私の防御が甘い。
基本的に前衛後衛のスタイルをとっていると、後衛は戦闘には不向きであることが多い。私も例外ではない。一対一の場面では有効だが、多数相手となるとすぐに崩れる。
もう一つ、一つめの指摘に関わるが、空亡が十分に動けていない。
後衛を気にしながらの戦闘のため、空亡が全力で当たることができていない。
最後に、私の身体能力が低い。
昨日も最初の濡れ女の不意打ちは空亡が防いでくれたものの、目を逸らし受け身の姿勢だったのが良くなかったみたいだ。
これらの指摘から私の訓練を考案してくれた。幸いにも感受性は豊かであるため、妖力を感じたりすることはできる。
「索敵」を常に発動しつつ、賀茂さんが発する殺気を感じ取る訓練をすることになった。
「索敵」は周囲に目を向け、妖力を感じることを目的とし、感受性の更なる飛躍を目論む。さらにその状況下で賀茂さんから放たれる殺気を感じることで、不意打ちに備える。いつ、何時に降りかかるかわからないだけあってめちゃくちゃ消耗しそうだ。この時目を閉じないように注意する。
目を背けたら対応できるものもできなくなるからだそうだ。そして、殺気というものは殺すつもりであれば強い気となるが、ただ小突くくらいであれば小さな気しか出ない。それでも殺気というものは発せられるので感じ取ることは可能なようだ。
この小さい殺気を感じられるようになれば第一段階クリアだ。
そして、修行の内容とは!?
道中、賀茂さんが不定期に私に小石を放ることになった。この投げられた小石を感じ取って避けることができれば合格だ。なんて地味なんだ……。
まずは、私が自分で相手の不意打ちを避けることができるのが最優先のようだ。私が倒されたら一発アウトと考えろと言われた。
さっきからひたすらに歩いている道中、小石を投げられ続けているが、一向に感じ取ることができない。もはやいじめにしか感じられないくらいだ……。
地味だと思ったけど、とてつもなく難しい。
私はこんなことで強くなることができるのだろうか??
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
未来と雪さんは本当の家族になりました。
戸籍上は他人ですが、家族以上の絆がえられました。
そして、ついに樹海に向かいます。
物語が動きます!!
次回は10/24朝アップします!!




