第五十五話 〜恵慈と有元と道世〜
おはようございます!!
恵慈さんが未来の両親と再会して、長老も加わり、宴会が始まろうとしています。
用意周到な長老は、鼻からそれが目的だったと言わんばかりです。
今回は恵慈さんと未来の両親の関係性を少しお話しします!
お楽しみください!!
「…長老…。最初から飲む気だったでしょ!?」
私は用意周到な長老を疑惑の目で見た。
「まあな!せっかくありちゃん家に来たし、恵慈もいるとなったら飲むしかないでしょ!?」
長老はすぐに認めた。潔いのはいい事だが、釈然としない。
「はあ、まあ、いいですけど、僕は車なので飲みませんよ?」
恵慈さんは車で来ているから飲まないと宣言をした。すかさず長老から一言。
「いや!!恵慈も飲め!今日はありちゃんに泊めてもらいなさい!明日、未来ちゃんを迎えにくるのも面倒だろ!?ここから一緒にいけばいいよ!…なあ!ありちゃん!?いいだろう!?」
勝手にうちに泊まる事を強制される。
「ああ、うちは大丈夫ですよ。せっかくだし、恵慈と飲みたいしな!息子が成人してお酒を一緒に飲める!?って感じで嬉しいな!!」
長老も強引だけど、お父さんは本当の息子のように思っているし、その息子と一緒にお酒を飲めるなんて嬉しいんだろうな。無事に生きているということもわかったようだし、今日くらいはいいのかなと思った。
「まあ、師匠がいいっていうのなら、今日はお邪魔します。…未来さん、そんな感じなので明日は一緒に行こうか。」
なんだかんだで、恵慈さんも宴会に参加することになった。楽しんでくれるならなんでもいいや!
「はい。よろしくお願いします!」
「そうと決まればつまみを買って来ないとな!?」
「とりあえず、おつまみなら何かしらストックもあるし、何か作りますよ。」
お父さんはキッチンに行こうとした。そのお父さんを制止して、お母さんが、
「私が作るから話してていいわよ。」
と言い、キッチンでおつまみを作り始めた。少しでも精神を落ち着かせるためにも何かに没頭したいみたいだ。
その間も、恵慈さんを中心にみんなで話をしながら飲んでいた。少ししておつまみを作ってやってきたお母さんも合流してみんなで昔話に花を咲かせている。本当に恵慈さんが戻ってきてくれてよかった。
明日からはまた忙しい毎日になるようだけど、新しいことをいっぱい吸収してみんなの、空亡の役に立てるように頑張ろうと思った。
今日はみんなの楽しい時間を過ごして、今を精一杯生きていこう。
そんなことを思っていると、みんなの笑顔が嬉しくなった。明日も楽しい日になるんじゃないかなと思いつつ夜はふけっていった。
――翌朝――
昨日の夜はみんなで宴会をし、楽しい時間を過ごした。お父さんと長老は結局早いうちにダウンしていたが、恵慈さんは飲んでいても全然様子が変わらなかった。お酒に強いようだ。それでも、昨日は楽しかったし、酔わないわけではないので、気分よく楽しめたようである。お母さんもお酒に強いから、後半は恵慈とお母さんがずっと話をしていた。長いこと音信不通だったから聞きたいことも多くあったのだろう。
今朝は一緒に朝ごはんを食べて、これから群馬支部へ出勤するところである。
「昨夜はお世話になりました。」
恵慈さんは見送りにきたお母さんにお礼を言った。お父さんはまだ寝ているみたいだ。長老もまだ寝ている。少し群馬支部で早々にやらなければいけないことがあるらしく、私を連れて少し早めに出ることになった。
「いいのよ。またいつでも遊びにきていいからね。なんなら今日だって来ていいからね。」
「いや、流石に連日は…。いや、今日も未来さんを送って帰るので夕飯はご馳走になってもいいですか?」
恵慈さんは少しだけど、昔のような関係を修復しつつあるのだろうか?遠慮ばっかりではなくお願いもするようになっていた。
「ええ!いいよいいよ!おいでおいで!」
恵慈さんは訓練の頃はお父さんお母さんにあまり遠慮していなかったみたいで、少し寂しがっていたが、夕飯食べていっていい?の一言に以前の恵慈さんを重ねたのかとても嬉しそうに歓迎していた。
「お母さん、嬉しそうだね!」
「そうね!」
心底嬉しそうだった。
「…じゃあ俺もいいかなー!?」
少し寝ぼけた感じの長老がヌッと話に入ってきた。
「うわ!?なに!?」
私はびっくりして飛び退いた。
長老は二日酔い気味なのか辛そうにしていたが、徐々に覚醒してきているみたいだ。
「だから、俺も今日の夕飯はいただいていってもいいかなーって。」
「まあ、いいですけど。帰れる日は帰って奥さんと過ごせばいいじゃないですか?」
お母さんが返答したが、長老の意思は変わらなかった。
「今はむしろ、家内の方が俺より忙しそうなんだよ。孤児院の改装中で、今は人手が足りないみたいなんだ。」
孤児院の改装?今も現役で孤児院はやっているんだ!?いつか行ってみたい気もするな。
「ああ、そうなんですね。まあ、いいですよ。恭弥ちゃんと一緒に帰ってきてください。」
「道世さん!?昨日も恭弥ちゃんはやめてって言ったでしょ!?」
そう。昨日の夜も恵慈さんと話すお母さんはずっと恭弥ちゃんと呼んでいた。昔からの名残らしい。まあ、中学生の時までだったらしいし、それはそうなるだろうが、30歳でちゃん付けはつけられた方が恥ずかしい。中学生でも、もう恥ずかしいかな?とそんなことを考えていたが、そろそろ出なくてはいけない。
「と、とりあえず、恵慈さん!出発しましょう!」
「そうだね。じゃあまた夜に。」
「ええ、いってらっしゃい。」
「俺もあとで行くぞー。」
私たちはそれぞれ挨拶をし、家を出発した。
―ほんと、元気でよかった。―
道世は心の底から恭弥の無事を祈っていた。本来なら高校卒業あたりには連絡くれるものかと思っていたけど、なんの音沙汰もなかったし、何かの折に連絡くるかなと待っていたけど、なかなかこなかった。自分から連絡する手段も持っていなかったから恭弥からの連絡を受け身で待つしかなかった。高校だけでも聞いておくんだった。迷惑をかけたくないという恭弥の意思はとても強く、隠蔽が徹底していた。何回も捜索しようかと思ったけど、踏みとどまっていた。本当の親でもないから……。
でも、これからは、もっと気軽に関係を再開できる気がする。15年くらいの時が経ってしまったけど、私達はまた始まることができる。生きているから。本当に無事でよかった……。
―恵慈さんの車―
「お母さん、本当に嬉しそうだったなー!恵慈さんお兄ちゃんにならないんですか?」
少し冗談めかして聞いてみた。
「一時期本気で未来さんの両親からは養子縁組の紹介を受けていたよ。」
冗談だったのに意外とガチ目な話になった!
「え!?マジだったんですね!?」
「でも、断った。僕は捨て子だし、正直迷惑がかかると思っていたし、何より、未来さんがいたから。
僕を高校生まで育ててくれたのは紛れもなく長老夫妻と師匠と道世さんだけど、2人には本当の家族が、未来さんがいた。当時の僕はそんな未来さんに嫉妬していたよ。大好きな人から無償の愛情を受けられるなんて。家族になって一緒にいたら未来さんに酷いことをしたかもしれない。だから、僕は断って関わりを断とうとしたんだ。」
「……っ!?」
正直なところ、軽い気持ちで話を振ってみたけど、結構重い話になっていた。でも、きっと信頼しての話だと思う。誰にも言えずにいたのだろう。
「もう、未来さんに嫉妬したり羨んだりしていないから安心してね。」
「うん、大丈夫です。」
恵慈さんは長い年月をかけて自分の気持ちと向き合ってきた。昨日両親と会ったことで、自分の中で気持ちに区切りがついて私に話すことができたのだろう。
「話してくれてありがとうございます。私が言うのもなんですけど、今でもお父さんお母さんは待っていると思いますよ?私もお兄ちゃんできるの嬉しいかもです!」
嘘はない。できることならそんな未来があっていいと思った。
「ふふ。ありがとう。考えておくよ。」
…考えておく…
きっと昔に比べたら大きな進歩だろう。いつかお兄ちゃんとして慕う日が来ることを夢見てもいいよね……?
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
恵慈さんは捨て子であったことから、両親の愛情を知りません。
それを一身に受けられる未来が妬ましかった時期もあったそうです。
それでも、未来の両親が恵慈さんに向ける愛情は本物の両親のそれとおんなじでしょう!
今になって気づいても遅くないと思います!!
次回は9/29朝にアップします!!




