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第百八十九話 〜そして現在へ…〜

おはようございます!!

真琴の記憶を辿っています。

どんな過去があったのか、陰陽省にきてからの真琴の気持ちを今回は綴っています。

お楽しみください!!

私が自由になれる時間はそんなに長くないし、頻繁でもない。私はこのタイミングでできることを前のタイミングで思考する。けど、10年後のことなんてわからない。基本的にはその時になってみないと何も考えられない。

 ある日、山本から仕事を頼まれた。


「今、陰陽省という組織が作られるらしいです。貴女にはそこに潜入して欲しいのです。」


 基本的に山本の近くにいた私が潜入任務……?私にできるのだろうか……?山本は何を考えているのだろうか?離れられるいい機会か……?でも、私に拒否権はない。快く受けるしか道はないのだ。


 ――――――


 陰陽省の設立に伴い、人員募集があり私は見事に受かった。設立には100名ほどの人間と妖怪の組織となった。そこからは山本様への忠誠心からがむしゃらに働いた。そして、陰陽省の大臣から絶大な信頼を得るまでになり、マスターキーを預かるまでになった。そして、1つの出会いを果たした。


 未来との出会いだ。


 未来はつい先日までパン屋の従業員だったらしい。でも、両親があの隊長と副隊長だ。潜在能力はずば抜けているだろう。そんな人物が力に覚醒して陰陽省に入ることになった。

 最初は山本様の邪魔になるかもとか思って近づき仲良くなるふりをした。

 でも、未来と過ごしているうちに未来の明るさに、ひたむきさに私の心は満たされていった。未来と仲良くなりたいという気持ちが少し前面に出てしまった。その時、激痛が走る。私は久しく忘れていたこの痛みを思い出し、気持ちを押し殺す。

 そして、未来と空亡という妖怪の話を聞いていくと、山本様が百鬼夜行を画策し、人類を殲滅するという計画にも辿り着いた。私はこの計画を知らなかったから驚いた。ただ潜入するということは計画のことを知っていない方がいいと山本様は思ったのだろう。陰陽省が先頭になってこの百鬼夜行にあたると思った山本様の慧眼はすごい。私も今では陰陽省で信頼にたる人物の1人だ。


 ……未来を巻き込むのは嫌だな……。山本様も以前と全然人が違うし……。


 またも激痛。もう、いっそのこと山本様を倒して欲しいという気持ちが湧き上がって来た。今回自由になれるタイミングはそろそろくるはず。今回を最後にしようと決心する。もうなりふり構っていられない。未来の成長は目を見張るものがある。空亡も山本様と因縁があるよう。もはやこのタイミングしかないのではないかと思った。

 でも、私が裏切ったと山本様にバレるのだけは避けないといけない。もう、死ぬことを覚悟して臨むしかない。1000年以上生きた、碌でもない人生だったけど、最後に未来達のために死ねるならいい人生だったかな……。

 そう考えると私に激痛が走る。その激痛に合わせて二の腕を包丁で切りマスターキーのICチップと集音器を傷口に押し込み縫う。痛い、痛い……。でもこれでおしまいだ。あとは、未来に任せよう。未来には裏切ったと思わせて終わるのは嫌だなぁ。でも、仕方がないか……。キョンちゃんにも最後の挨拶はできたし、あとは頼もう……。無責任って……思われちゃうよね……。でも、ごめん……。


 ――――――


 …………。真琴……。これが、真琴の全てか。

 私の意識は真琴の精神を通り魂は向かっている。その精神の中で、真琴のこれまでを知ることができた。私は何がなんでも真琴を救わなくてはいけないと強く思った。

 そして、意識の流れが収まり、真っ白な場所へ降り立つ。


「……ここは……、恵慈さんの魂の世界と同じような……。」


 その時、後ろから声がかかる。


「そうだよ。ここは私の魂の世界。」


 その声は真琴のものだった。。


「……!?ッ真琴!!?」


 私は振り向いて真琴の姿を確認しようとしたが、そこに真琴はいなかった。


「真琴ッ!!どこにいるの!?」


 私は必死で真琴に語りかける。


「……こっちだよ。」


 そう声がする方を見ると、その方角のずっと先に真っ白な世界に不釣り合いな真っ黒なドームがある。


「あそこにいるの……!?」


 私は問いかける。が、返答はない。


「とりあえず、行ってみようか……。」


 私は駆け足でそのドームの場所に向かう。ドームは目の前にするとそんなに大きくはなく、私の腰くらいの高さで直径は1メートルくらいか……?


「ここにいるの……?」


 私はそのドームに手を触れる。


――ビリッ――


「ッ!?」


 手を触れた瞬間、電気が走るかのような衝撃がきた。恵慈さんの魂の世界みたいに、私の存在を拒んでいるのだろう。

 でも、手を触れ、衝撃がきた時にドームが少し薄くなった。そして、確かに見た。その中にうずくまる猫の姿を……。


「……真琴……なの?」


 私は届くかわからないけど、問いかける。


「……そうだよ。」


 真琴は私の問いが聞こえたらしく、答えてくれた。


「閉じ込められてるの?自分じゃ出られないの?」


 私は今の真琴の状態を聞いた。


「……怖いの……。また、あの激痛が襲ってくるんじゃないかって。1000年以上だよ……。もう、限界だよ……。」


 怖い……。それもそうだろう。その辛さ、怖さわかってあげられないのがもどかしいけど、想像することはできる。でも、出られないわけじゃないってことか……?


「……そっか……。それは、怖いよね。」


 真琴は震えているようだ。


「ねぇ真琴……。真琴は解放されたかったんだよね……?」

ここまで読んでいただきありがとうございます!!

真琴はやっぱり未来に救われていた。

でも、この人生も終止符を打とうと決心を固めていた。

でも、未来はそんなことさせない。

絶対に救ってみせる。

次回は4/29朝アップします!!

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