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夜明けの陰陽師〜安倍晴明の子孫と伝説の妖怪がタッグを組んだら〜  作者: 太星
第七章〜今世の百鬼夜行・山本五郎左衛門〜
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第百八十五話 〜再会のふたり〜

おはようございます!!

今回で一つの区切りとなります!!

お楽しみください!!

――ブワァ!――


 後に聞いた話だけど、自分の生まれがわかった空亡はなんとも不思議な気分になったようだった。いきなり風が吹き、曇っていた空が晴れるように自分の心が澄みきったみたいだったようだ。


「……空亡??」


 私は涙を流し、呆然とする空亡に声をかけた。


『……すまん。大丈夫だ。ありがとう……、未来。』


 空亡は自分の晴れやかな気持ちに戸惑っていたようだ。空亡は自身のやるべきことを理解したようで、山本を放し、立ち上がる。山本は空亡の捕縛からは解放されたが、私がかけている術は継続中だ。だが、今はそこまで強くかけてはいない。とても体が重いくらいで、自由ではある。だが、山本は逃げることはないだろうという思いからこの対応にした。


「じゃあ、早速でいいかな?」


 私は先ほど言った魂の調整を行うことにした。これは相反する魂の本質を持つものがいないとできない。魂は陰と陽、2つの性質がバランスよく存在している。このバランスが崩れた時、山本のように意に反した行動をとったりする。まあ、いわゆるサイコパスだったりはバランスが崩れている。

 このバランスを調整するのに、相反する本質をもつものが必要なのだ。今回の場合、山本は()()の性質に振り切れている。そこに相反する()の性質を持つ空亡の性質に合わせてチューニングする。

 このチューニングはソラとの融合、誓約を果たした私だからできる私だけの個性だ。今この場にいる、誰1人欠いても、この結末にはならなかった。


「……ああ……。」

『いいぞ。』


 私の声に2人が呼応する。


「……いくよ!!」


 私は2人の前に立ち、2人に手をかざし、2人の魂を覗く。


「……やっぱり……。」


 山本の魂は()()にほぼ完全に支配されている。ただ一点、()の部分がある。これが、山本に残された唯一の突破口だ。これがなかったら流石に無理だったかもしれない。でも、まだ()()を感じているということは()が残っていると思っていた。


「……ちょっとどんな感覚かわからないけど、ごめんね!!」


 初めてのチューニングでどんな感覚を得られるのか、副作用はあるのか、色々わからないことはあれど、実行に移す。

 空亡の魂に山本の魂に残った()の部分を合わせていく。


「……ああ……。」


 山本はその途中、上を仰ぎ見て、涙を流していた。


「……これが……、これが、私の求めていたものか……。」


 山本は自分の中に()が増えるに合わせて、自分が欲していたものの正体に気がついた。そして、今、私の仕事は終わった。


「ふぅー……。まあ、こんなところかなぁ!」


 私はいつになく集中していたみたいだ。終わってからどっと疲れが押し寄せてきて、とても集中していたことに気がついた。そして、どさっと地面に腰を下ろす。


「……間違っていた……ようだな……。」


 そこで、山本が口を開く。山本は自分の間違いに気づくことができたみたいだ。


「そうだね……。仕方ない部分もあると思う。魂の性質はその人のおかれる環境とか色んな要因で変化するから……。でも、犯した罪は消えないよ…?これから償っていって。」


 私は厳しいようだけど、山本に対してそう言った。山本の起こした所業で被害を受けた人はたくさんいる。


『我としては、未来がそういうならそれが我からの断罪で良い。』


 空亡も私の意見に乗ってくれた。空亡が1番被害者だと思うけど、やっぱり優しいというか、器がでかいというか。


「……ふふ、ふふ。ありがとう。ですが、私はこの世界、現世と常世に存在すべきではないですねぇ……。」


 山本は私の言葉に異を唱えた。


「え……!?」


 私は驚きで声を漏らしてしまった。


「もちろん、償いをしないというわけではありませんよ。私という存在が、この世に存在する限り、納得しない者もいるでしょう……。なので、私はお嬢さんの図録に封じられようと思います。私の存在が果てるまで、お嬢さんに力を貸しましょう。」


 な!!?私は考えつかなかったと驚いた。


「確かになんでっていう人もいるかもしれないけど……。」


 私は口ごもってしまった。


「ふふ、ふふ。でしょう?……であるなら、私は私を救ってくれた恩人に報いたい。しかしながら、傍にいるのもおかしいですよねぇ。……情けをかけていただけるのであれば、私はそれを望みます……。」


 空亡がそれでもいいというのであれば、私は構わない。みんなにはなんて説明しようかな……。


「……いいじゃねぇか……。空亡もいいって言っているし、俺からしても、図録に入ってれば何もできやしねぇ。そいつも本当はやりたくなかったんだろ……?」


 後ろから目が覚めて、一部始終を聞いていた師匠が話に混ざってきた。


「……あ!?師匠!?大丈夫なの!?」


 私はまず、体の心配をする。


「大丈夫なわけねぇだろ!?そこら中痛えよ!でも……、戦いは終わったんだろう?」


 そうだ、あんまり実感がなかったけど、戦いは終わったんだ。……そうだ、その締めくくりだ。山本もそれを望んでいる。これからは私たちの力の一部として協力して貰えばいいか。


「……そうですね……。わかりました。」


 私は山本を図録へ封印することを承諾した。


「……ありがとう、お嬢さん。……ああ、そうだ、彼を返しておきますねぇ。」


 山本は毒気が抜けた柔ない顔つきになっていた。そして、手を宙にかざし、漆黒の亀裂が入った。そこから鬼神さんが落ちてきた。


 ――ドタッ――


「イッテェ!!なんだ!?」


 鬼神さんは地面に落ちて痛がっている。


「あ、ありがとう!……あと、そのお嬢さんってもう辞めませんか?私は、未来です!」


 私は名前で呼ぶことを勧めた。キョロキョロしている鬼神さんはとりあえず、放っておく。師匠が軽く説明も加えている。


「……ふふ、ふふ。失礼しましたぁ。未来さん。よろしくお願いします。……、勝手なお願いですが、玉藻前の隣のページに封印してもらってもいいですかぁ?」


 玉藻前の隣のページ……?


「……彼女だけは、私にいつもついていてくれました。空亡と別れた後から1000年以上です。きっと、彼女がいたから私は好き勝手できていたのだと思います。私の最後まで残った()の魂はきっと玉藻前に向けたものじゃないかと思います。」


 ああ。そういうことか。しぶとく残っていた魂は玉藻前に対する()()か……。図録の中がどんな世界かわからないけど、魂は同じ場所にある。きっと出会えるはずだ。私は図録を手にして、玉藻前のページを開く。見開きの左には玉藻前の絵が描かれて封印されている。


「わかった。……じゃあ、いくね。『山本五郎左衛門さんもとごろうざえもん!かの者を我、土御門未来の名のもと封じる!!急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう!!』」


 その祝詞(のりと)とともに、山本五郎左衛門は煙のように霧散し、私の手に持つ図録へ封印されていく。封印とともに起こった風が止み、封印完了を示唆(しさ)した。封印完了を感じ、図録を見て私は微笑んだ。


 見開きの図録の折り返し部分で、山本五郎左衛門と玉藻前の手が繋がれていた。


 ――よかった。無事に会えたね。――

ここまで読んでいただきありがとうございます!!

ついに、山本の封印を完了しました!

縛られた山本を解放して元の状態に戻すこともできました。

そして、玉藻前との関係。

これも、よかったです!

次回は4/19朝アップします!!

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