表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けの陰陽師〜安倍晴明の子孫と伝説の妖怪がタッグを組んだら〜  作者: 太星
第七章〜今世の百鬼夜行・山本五郎左衛門〜
183/194

第百八十一話 〜懐かしい声〜

おはようございます!!

寂しさ、孤独に妙に反応する山本五郎左衛門。

力を増した未来や空亡でも、山本に勝つことは叶わないのか!?

反撃の糸口を探す。

今回もお楽しみください!!

私が山本(さんもと)に違和感を感じたのは、空亡の過去を知ったあとだ。そこまで強いんだから、何にも躊躇せずに私たちを殺してしまえばいいと思った。でも、それはせずに、空亡だけは殺さない、自分が洗脳していた時に戻そうと必死だった。あんなに長ったらしく話をしていたのも違和感があった。


 まるで、自分と同じ境遇に空亡をしようとしているかのようだった。


「どうして!?そんなに拒絶するの!?一歩踏み出してみればいいじゃない!?」


 私は剣撃を受け止めながら説得を試みる。下手に動くと私の邪魔をすると思ってか、空亡は様子を見ていた。


「黙れぇ!!」


 山本は怒りを抑えられない様子だ。()()()は山本にとって何かのキーになっているのだろう。私と対話する気はないようだ。しかし、山本以外の妖怪は精神を揺らぐことで隙を生じさせる戦闘をやってきたが、山本は隙が生まれないどころか更に強くなっていく……。怒りをうまく力へ還元している。とても高度で精神的にも強くないとできない所業だ。

 そして、そんな山本は一つの突きを繰り出した。その突きは私に素早く迫ってくる。私は鉄扇でその突きを受けようとする。しかし、その突きが鉄扇に防がれることはなかった。私は防御に出した鉄扇の陰で山本の刀の切先を見失っていた。山本の刀は鉄扇に当たる寸前で創り出した空間に入り、私の後ろから切先が迫ってくる。こんな土壇場で、怒りに支配された状況でこんなに繊細な術を使えるのか!?と心底驚いた。空間のことを忘れたあたりで組み込んできたので反応が遅れた。

 なんとか、気付けたから避けようと身体を捻るが、咄嗟のことで完全には避けられず、肩を斬られた。


「いたッ!!」


 私は身体を捻った反動で、そのまま地面に尻餅をついた。一度、リズムが狂ってしまった私を格好の餌食と言わんばかりに次に続く斬撃が迫るが、避けられそうにない。

  山本の次の一撃が刻々と迫る。完全に捕らえた私の首をはねるような軌道で刀が迫ってくる。山本は笑みを浮かべている。……やばいやばい!!避けられない……!!


 ――ガキンッ――


 私が避けられないと感じたその時、ヒュッと私の前に何かが立ち塞がり山本からふりかかっていた刀が受け止められていた。


「……空亡ッ!!」


 さっきまで戦況を注視していた空亡が介入してきたのだった。


『怪我を負わせてしまった。すまない。』


 空亡は短く謝罪した。


「ううん。大丈夫、ありがと!」


 近接戦闘に慣れていない私が山本と相手をする。そこへ空亡も介入することで、私は空亡への攻撃と連携に気を配らなきゃいけなくなる。ただでさえ、強敵相手なのにそんなことまで考えなくてはいけないとなると私のキャパオーバーだ。それを思って空亡は見守ることに徹底し、いざという時に介入できるようにスタンバイしてくれていた。怪我したくらいで介入したら次の大きな一手での判断に戸惑うため、私の命を狩るほどの一撃を待っていたのだろう。

 そして、選手交換だ。山本と空亡がお互いに斬り合う。気持ちも晴れた空亡の刀には迷いがない。さっきまでとは違う、強い意志が乗った戦いだ。


「何故!?何故だ!!何故、お前はそうなのだ!?誰かのために命をかけられる!?」


 山本が空亡に問いかける。


『……わからない……。我が魂がそれを望んでいるのかもしれない……!!』


 空亡は自分が何処から生まれたかも探している。空亡はその出自を掴みかけているのかもしれない。

 私は刀で斬り合う2人から間合いを取ろうと少し後ずさろうとし、立ち上がる時に地面に手をついた。その時、私の手のところに何かが当たった。


 ……??


「……これは……。」


 私は石でも当たったのかと思ったが、そこにあったのは百目の中心眼だった。私はこの中心眼をポーチに入れていたが、戦闘中にポーチから落ちていたようだ。


「あぶな……ッ!!?」


 あぶなかったと言いかけたところで、中心眼からある気配を感じた。

 その中心眼から感じたのは魂の波動。

 魂から感じられる気配のことを魂の波動と勝手に呼んでいるが、それを感じることができた。最初に中心眼を触った時はなにも感じなかったが、今は私の力がより強力になったから感じられるようになったのだろう。

 そして、もうひとつ信じられないと感じたことがある。その魂の波動に私は涙を流した。


 ……恵慈さん……。


 そう、その魂の波動は百目のものではなく、恵慈さんの魂と酷似していた。当時は魂について知らなかったけど、今思うと、私の感受性がいいのは魂の波動を無意識に感じていたからなんだと思う。それは人によって様々な波動を放っている。

 だが、完全に恵慈さんってわけでもない。百目の波動も感じる。

 もしかして、私とソラみたいに魂が融合している……?

 待てよ……。ここに魂があるってことは、これは中心眼と言うか核そのもの……?と言うか、魂ならもしかして……!!?

 それが核であるのなら、魂があるのなら、私はその声を聴けるかもしれない……!?


 ―恵慈さん!?恵慈さん!!??―


 普段は魂も体と精神に阻まれた奥にあるため、こちらからの対話はできないが、今、ここに核と魂があるのなら、対話ができるかもしれない!!

 一縷(いちる)の希望を乗せて呼びかける。


 ――……。――


 くそッ……、やっぱりダメか……。

 と諦めかけたその時……


 ――未来ちゃん!――


 懐かしい、恵慈さんの声が頭に響いた……。

ここまで読んでいただきありがとうございます!!

どんな役割をするのかわからなかった百目の中心眼。

謎だったその存在が、今、このタイミングで現れた。

これは偶然なのか?いや、もはや必然である。

恵慈さんの不屈の精神に脱帽です!

次回は4/10朝アップします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ