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夜明けの陰陽師〜安倍晴明の子孫と伝説の妖怪がタッグを組んだら〜  作者: 太星
第七章〜今世の百鬼夜行・山本五郎左衛門〜
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第百七十七話 〜空亡の過去を経て…〜

おはようございます!!

前回から空亡の過去をみてもらっています。

今回も少し過去を覗きます。

過去をみた未来はどう反応するのか!?

これが本当の空亡なのか!?

お楽しみください!

山本(さんもと)の声と同時に場面が移り変わった。

 

 ――そこは豪勢な家の中だった。部屋の中には酒瓶が何本も転がり落ちている。それだけでも異様なのに、もっと異様なものがある。この部屋は血痕が至る所にぶちまけられていた。その先で座る影が1つ。


「……ふぅ……。」


 酒瓶を傾け、空になった酒瓶を床に投げ捨て、自分はその味に酔いしれるかのように一つの吐息を吐く。その声色で、その影が空亡である事を確信した。私たちと過ごしている空亡は酒を(たしな)むことはあっても、ここまで派手に飲むことはしない。空亡の本質とはなんなのだろう……?これが空亡……?


「…………。」


 !?ふと、気がつくと、空亡が私の事を見ている。……?私は意識の存在だ。私の事を知覚できるはずはないと思い、気のせいだと思い込ませる。空亡は何するでもなく、目を閉じ、そのまま床に寝転がった。……眠ったの?


「ふふ、ふふ。面白いですねぇ。こんなにだらしない人物だったなんて……?この部屋の血痕は全て食べた人間の血ですよ……?」


 またも、山本が耳打ちしてきた。私の精神を揺るがしたいのだろうか?


「何が目的!?」


 私は山本に対して問いかけた。


「ふふ、ふふ。お嬢さんに本当の空亡を知ってほしいのですよぉ。単なる親切心です。……まあ、強いていえば、()()()()()()()()()()()()()()ですねぇ。」


 そういうと、またスッと消えた。

 何がしたいんだ……!?

 本当の空亡を取り戻す……?


 ――そして、また場面は変わり、次は崖の上。崖の下では戦が勃発している。その様子を座りながら見ている空亡がすぐ横にいた。


「……。」


 空亡は黙って戦の状況を眺めていた。


「あの戦は空亡自身が仕組んだ戦ですよ。まだまだ、ありますが、この時代の『()()()』にはほとんどと言っていいほど空亡が関与しています。」


 ……そんな……。空亡…、本当に貴方は…。


「貴女にはその()()を知っておいて欲しかったのです。空亡と添い遂げるということがどういうことなのか……。貴女もあの罪を一緒に背負うことになるのですからぁ。ふふ、ふふ。」


 山本はまたしても私の不安を煽ってきた。私はまだ戦を見ている空亡の横顔を見た。笑みは溢れているが、どこか寂しげな雰囲気もある……。


 ――フッ――


 空亡は顔を少し傾け、私を見た。その顔は今にも泣きそうな表情だ。


 ――『我を救ってはくれぬか?』――


 !?!?……ん!?

 私は空亡の言葉に目をゴシゴシしてもう一度空亡を見てみると、さっきまでと変わらない戦を俯瞰した空亡がそこにいた。

 ……幻覚、幻聴か……??


「さあ!ほんの一部でしたが、空亡の過去について十分に理解できたでしょう……?お嬢さんが好きでやまない空亡は過去にこれだけの所業をやってのけていたのです。本人は群れるのが好きではなかったみたいですが、妖怪たちに人間の女を斡旋したりもしていました。……、今見てもらった戦は空亡が関与した一番大きな戦ですねぇ。皆あらぬ情報に操られ無為な死を遂げています。……ふふ、ふふ。愉快ですねぇ。」


 山本はさっきの空亡に気づいていないのか、1人で饒舌に話をしていた。さっきのは本当に幻だったのか……?

 そして、意識が薄れていく……。


 ………………

 …………

 ……

 ……

 …………

 ………………


 ……ハッ……、と意識が戻ると記憶が途切れる前の状況がそこにある。目の前には縛られた空亡。隣に山本五郎左衛門がいる。


「……空亡……。」


 私は空亡の名前を呟いた。何があったわけでもない。ただ、その名前を言いたかった。さっきまで見ていた空亡と似ても似つかない本人だ。


『山本…!!』


 空亡は怒りの矛先を山本に向けて叫ぶ。


「怖いですねぇ。……あぁ!!いいですよぉ!それです!その顔が見たかった!!貴方は怒り狂った、絶望した、悲観した、全てが無駄だと思っているような顔が似合っている。……、そして、今!!貴方の愛する人に自分の過去をさらけだしました!」


 山本はふらふらと私の周りを回りながら演説をしている。


「さぁ!!もっと悲観しなさい!貴方が愛する人から蔑まされた目を向けられ、気味悪がられ、恐れられ、その上で懇願しなさい!!そして!私の手を取りなさい!!そうすれば、……この子の中にある記憶を消してあげますよ?」


 グッと歯を食いしばり、怒りが込み上げている空亡。それでも、私に過去を晒すのは避けたかったようだ。私がさっき見た記憶は事実なんだと受け入れるしかないと、今の空亡を見て思った。

 

 でも、空亡が山本の手をとることはない。


 これはわかりきっていることだ。私たちの目的は山本を倒すこと。忠誠なんか誓えない。例え、誰が犠牲になったって空亡は首を縦に振るわけない。これは私たちが今まで培ってきた信頼からくる確信だ。


 だから、放たれた空亡の言葉に愕然とした。


『……、頼む……。未来から記憶を消してくれ……。』





 

 ………………ブチッ……。

ここまで読んでいただきありがとうございます!!

空亡の中で、自身の過去はどうしても隠したいことなのか、山本の口車に乗せられてしまいそうです。

それほどまでに過去が嫌なのか、未来に知られるのが嫌なのか。

裏切りとも取れるその言葉に未来は愕然とした…。

次回は4/1朝アップします!!


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