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夜明けの陰陽師〜安倍晴明の子孫と伝説の妖怪がタッグを組んだら〜  作者: 太星
第七章〜今世の百鬼夜行・山本五郎左衛門〜
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第百七十六話 〜空亡の過去〜

おはようございます!!

決戦とは遠のきますが、空亡の過去を少しつづります。

空亡と山本の因縁とは!?

繋がりは!?

お楽しみください!!

山本(さんもと)は空亡に憧れていたという。今の山本があるのは空亡のおかげだという。私の知っている空亡は山本とは正反対だと思う。どこに憧れがあって今の山本が生まれたのだろう……?


「ふふ、ふふ。驚いていますねぇ。今や、落ち着いて丸くなってしまった空亡も昔はやんちゃだったんですよぉ?」


 そう言いながら、動揺を隠せない空亡に捕縛をかける。黒い闇の様な鎖が空亡を縛り上げる。


『……グッ!……よせ!!』


 空亡は山本を制止しようとするが、止まらない。

 山本はスッと私の前に現れ、額に指を当てた。


「ふふ、お楽しみください……!」


 ………………

 …………

 ……

 ……

 …………

 ………………


「……ここは……?」


 私の意識は山本の声が薄れていくと同時に強制的に場面を移した。

 私が今立っているのは創りは古めかしいが新しく建てられた建造物が軒並み並んでいる道の端だ。

 私は今の状況を把握するべく自分の状態を確認した。両手両足はあるか、動かせるか、動けるか。耳は聞こえるか、実体はあるか。

 色々調べてわかったことは、ある程度は自分で自由に動けるし、五体満足の状態だ。風が草木を鳴らす音が聞こえるから、聴覚にも問題はない。だが、物には触れなかった。私はどうやら誰かの記憶をのぞいていると言った感じらしい。そして、私に術をかけたのは山本だ。おそらく、山本の記憶なのだろう……。一体何がしたいのか?


「うわぁあああ!!」

「きゃあああ!!」


 思考していると、近くの家から誰かの叫ぶ声が聞こえた。その声に気づいた近隣の人たちも家に集まってくる。その姿はまるで昔の人の様に、和服に身を包んでいた。時間は暗く、夜中であることはわかるが正確な時間まではわからない。

 もしかして、これは、平安時代……??歴史の教科書とかで見たことのある様な家の造りに人々の容姿、服装。山本の言っていた言葉がこの記憶を通してわかるのだろうか……?


「何があった!?」


 そこに、体型ががっしりした大人の男性が駆けつけ、野次馬に状況の説明を依頼した。


「いや、俺も今きたところだからよくわからねぇ。」


 野次馬の彼も今来たばかりのようで状況を把握してはいなかった。私も何が起こっているのかはわからない。とりあえず、このがっしりした人について行ってみよう。私の姿はここの人たちには見えないようだ。記憶の中の話だから干渉はできないのだろう。


「おい!!何をしている!?」


 その男性は野次馬の人混みをかき分け、叫び声があがった家の入り口まで来た。入り口から中を見ると凄惨(せいさん)な場面が広がっていた。

 家の前は小さな庭になっている。そこに立つ一つの影。その影に向けての言葉だった。


『……何……、とは?我の食事だ……。』


 その影はそう言い放ち、手に持つ人間を(むさぼ)った。うえッ。実際に人間が食いちぎられている場面を見て吐き気がした。


「……(あやかし)か!?」


 がっしりした男性はその影が妖怪であると判断し、指示をした。


「誰か!?陰陽寮のものを呼んできてくれ!!」


 その影はまだ貪りながら、語る。


『無駄な事だ。我はお前らにとって(わざわ)いそのものだ。……クチャクチャ……。奴らを呼んだところで犠牲が増えるだけだぞ?大人しく、我の食事が終わるのを待つ事だな……。』


 そして、その影のいう食事に戻る。まだ夜中だし、明かりもない。月明かりはあるがほのかに逆光でシルエットしかわからない。

 その時、近くに雷が落ち、食事をしている妖怪の顔があらわになった。

 ……少し、声が似ているとは思っていた。だけど、私の知る優しさが微塵もない。眼光も鋭く、口からは血が滴っている。


「……空亡……。」


 私がその姿を確認すると同時に土砂降りの雨が降ってきた。私の姿は見えていないはずだけど、どこか目が合った気がした。すかさず空亡は目線を逸らし、私の後ろの方からやってくる陰陽師を見据えた。…目が合ったんじゃなくて私の後ろを見ようとしたのか……。


「クク……。供物が自らやってきたか……。陰陽師は霊力が強くて美味い……。」


 ――ザッ――


 空亡は一言つぶやくと素早く駆けつけた陰陽師の元へ移動し、その首を手刀ではねる。落ちゆく頭を手で掴み、手刀についた血を舐める。


「おお……。今日のやつはなかなかだな。今日はコイツだけでよいか……。」


 あたりの野次馬たちは顔面蒼白だ。動いたら自分もやられるのではないかと動けずにいる。だが、空亡はそれで満足したようだ。


『我の名は「空亡」。お前らにとっては災いだと思っていればいい。出会ったあかつきには絶望をくれてやろう!だが、今日のお前らは運がいい……。我は食事を(たの)しむ。今日はこれでお開きだ。』


 空亡はそう言い残して、陰陽師の亡骸を持って去って行った。誰もが動けずにいた。この場にいる全員が恐れ慄き、脱力して地べたにへたり込んでいる。今命があることが奇跡のようにも感じている。


「ふふ、ふふ。これが私の憧れの『空亡』です。ご理解いただけますかぁ?」


 急に耳元で山本の声が聞こえた。


「……!?これは一体いつの話……!?本当にあれが空亡なの!?」


 私は衝撃を隠しきれずに山本に聞いた。


「ふふ、ふふ。どうでしょうねぇ。これはまだ一部です。もっと見て感じて理解してください。」


 そう言って気配が消えた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!!

衝撃の過去。

晴明と敵対していたとは言うものの、そこまでとは…。

これからの物語もお楽しみください!!

次回は3/29朝アップします!!

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