第百六十六話 〜玉藻前戦:夢うつつ〜
おはようございます!!
玉藻前の想像以上の成長に驚く面々。
神とはいかにすごいものかを身をもって知ることになります。
今回もお楽しみください!
図録の存在を忘れていた……。
そんなことがあっていいわけがない。術式とかで記憶を忘れることはできても、それはぽっかりその1日を忘れるとか大雑把なものだ。
今みたいに、図録の存在だけを忘れると言った繊細な記憶操作は出来ないはず……!?しかも、それを不思議に思えないと言うことは、過去に遡ってもその存在はなかったか何かに置き換わっていて不思議にすら思えない……。
「わっちの能力としては力と呼べるものを直接操作できるでありんす。今までも、記憶操作くらいは出来たけど、ここまでの精度はなかったでありんす。それに、この力を使っても、ぜーんぜん疲れない!!素晴らしいでありんすね!神というものは!あっはっはっ!!」
玉藻前の怖さを身をもってわかった。恐ろしすぎる。こんなことで私たちは玉藻前に、勝つことができるのだろうか……。気持ちは絶対に負けないつもりでいたけど、ここまでの差を見せつけられるとそれも危うくなる。
「……どうすれば……!?」
私は歯を食いしばりながら考える。でも、その答えは見つからない。そんなことをしているうちに、戦況はガラッと変わった。
『……ガハッ!!』
私の目の前で空亡が玉藻前に撃たれている。神の力を行使した玉藻前の動きに空亡もついていくので精一杯と言った感じだ。そして、空亡の一瞬の隙を見て、私の目の前に現れて私も撃たれる。
「……きゃあっ!!」
私はずっとかけっぱなしにしている防御の術式があるため、即死することはなかったが、骨は折れていてもおかしくはないんじゃないかと思うくらいの衝撃を受けた。
すぐに空亡が駆けつけてくれたが、私を庇いながらの戦いになっている……。
嫌だ嫌だ!!こんな足手まとい!庇ってもらわないと戦えない様な自分が嫌でいっぱい修行頑張ったんでしょ!!負けるな!負けるか!!
「……負けるかぁ!!」
庇ってくれた空亡の背後から霊力の塊をぶつける。それは玉藻前の顔に当たり頬を切った。それと同時に玉藻前の攻撃が止んだ。
「……小娘ぇ……。お前はいつもいつも!!?」
……?あれ?空亡の攻撃は全然効いていなそうなのに私の攻撃は効いた……?
「空亡!!ちょっと変わって!?」
そう叫ぶと同時に、空亡と前衛をスイッチして、私は自分の霊力とソラの妖力を纏って玉藻前に向かって攻撃を繰り出す。
私の考えが正しければ、玉藻前は金元素の攻撃にはまだ弱いのじゃないかと思う。私は拳を突き出し玉藻前に放つ。昔の私だったらこんなことはできなかっただろうが、今となってはそれができる!!
放たれた拳は玉藻前の顔に当たり狐の仮面を破壊した。その中から現れた素顔は美しかった。ただ異様なのは仮面で隠れていた顔の上部半分には大きな火傷痕があった。……これを隠すため……??
「……チッ!」
玉藻前は私の攻撃にのけ反り、距離をとった。
……やっぱり!?金元素が弱点というのは変わらない!?私は、空亡のバックアップとしてしか戦えなかったけど、これなら私も空亡と対等に戦える!!
玉藻前は少し先で体勢を整えて、新たな狐仮面を被っている。……もしかして、あの仮面も火傷痕を隠すため?もしかして、何かしらのコンプレックスがあるのか?……まあ、今は考えたところでどうしようもない。できることがあるならやってみるしかない!
「空亡!!私が金元素の攻撃を繰り返す!隙を突いてくれる!?」
私は空亡に指示をした。
『……ああ!わかった!』
空亡は何故か一瞬間を置いたが、私の指示に従ってくれる意思を示してくれた。
「いくよ!!」
そう言って私はソラと共に金元素の攻撃を繰り返す。ただの霊力を放つだけではなく色々な術式を織り交ぜながら攻撃をする。最終的には捕縛の術式で玉藻前を捕縛する。
「……クッ!?なんて強い捕縛の術式でありんすか!?一体どんな成長を遂げたでありんす?!」
玉藻前は私の成長を予想外と叫んだ。正直、私もこんなに上手くいくとは思ってもいなかった。思った以上に私は成長していたのだろうか……?神相手にここまでやれる程に……?
「さあ!空亡!!」
私は一抹の不安もあったが、目の前にある現実を確認し、空亡に合図をした。ここまで順調だ!あとは空亡に任せて、図録に封印するだけだ!!
『……みく……!!?……未来!!』
だが、空亡はただ遠くから私の名前を叫ぶだけだった。どうしたの空亡!?今がチャンスだよ!?
『未来!!おい!!!』
空亡の声はより鮮明に聞こえるが、やっぱりまだ叫んでいる。
――パチン――
私の脳裏に響いた、指を鳴らす音。
その音と共に、視界が霞、また鮮明になってくる。
……苦しい……。
目の前には玉藻前がいる。
そして、少し下に目をやると、傷だからで壁に張り付けられている空亡が私の名前を叫んでいる。
『未来!!未来!!起きろ!!』
私はハッとした。そして、自分の状況を確認した。通りで苦しいわけだ。私は玉藻前に首を掴まれ宙吊りにされている状態だ。いつからこの状態かはわからないが、さっきまで見ていた光景は玉藻前が私に見せていた脳内の記憶だったのだろう。通りで何もかもうまくいっていた。
「……いい夢は見られたでありんすか?これから、空亡の前で、大好きなだぁい好きな未来ちゃんの公開処刑を執り行うであ・り・ん・すッ!」
玉藻前は嬉しそうに言葉を発した。空亡も捕縛から逃れようともがくが、捕縛が強固すぎて抜け出せない。
『こんなところで!!こんなところで終わらせられるかぁ!!未来!!もう少しだ!!もう少しで助けに行く!!!!』
空亡は叫んでいる。いつもクールなのに珍しい……。
「……あ、がぁ……。がぁ。」
私は空亡に声をかけようとするが喉を掴まれ声が出ない。……ああ、もう、ダメかもしれない、苦しい……。
「あっはっはっ!そんな叫んでも抜け出せないでありんすよ!?何せ神の力でありんす!空亡の大好きな未来ちゃんを殺したあとは貴方をじっくりなぶってあげるでありんすよ!そこでしっかり網膜に焼き付けるでありんす!!」
私の首を掴む玉藻前の手に力が入る。
――そして、私は意識を失った――
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
あまりにも強すぎる玉藻前。これで幹部だから山本はどれほどなのか!?
そして、公開処刑と言い首を絞められた未来。
今までの頑張りも報われず、ここで終わってしまうのか!?
次回は3/6朝アップします!!




