第百六十話 〜酒呑童子戦:友〜
おはようございます!!
今回で酒呑童子戦は最後です!
酒呑童子の過去と現在を繋いだ物語もおしまいです。
楽しんでいただけたなら幸いです!
今回もお楽しみください!!
頼光は俺の首を献上し、生ける伝説の武将となった。今回の一件で、俺は頼光に最大限の贈り物ができたと思っていた。
俺は数日後、そろそろ命の灯火も消えかけようといていた。俺の首は都の中心部にある寺院に祀られていた。特に不自由もなかった。毎日頼光は会いにきてくれた。だが、もう、それもおしまいか……。と思っていた時だった。
「もったいないですねぇ。」
どこからか間延びした女性の声が響いた。
「……。」
俺は沈黙で返したが、目の前に現れた人物を見て少し納得した。
「あのタイミングだからな……。」
そこにいたのは、俺が頼光から斬られるアシストをしてくれた女性だった。
「褒めて欲しいですねぇ。あなたの望みを叶えてあげたんですからぁ。」
女性はそういうと、姿を変えた。漆黒の上下に、長髪を後ろで結って、眼が3つ。中性的な顔つきの男性に姿を変え、いつの間にかできていた空間の亀裂から俺の体を取り出し、ドスっと床に置いた。
「もう一度言います。実にもったいないですねぇ。」
正直コイツには勝てる気がしない。ナヨナヨした感じだし、線も細い。だが、コイツから感じるオーラはドス黒く凶悪だ。
「何がもったいない……?」
と、会話を続ける。
「何って?いやいや、貴方ですよ。そこまでの強さを持ちつつ、人間に甘んじて殺されるなんて……。」
俺の強さか……。もう、どうだっていいことだ。あとは死を待つのみ。
「貴方はあと死にゆくのみ。なんですよねぇ?……なら、私が使ってさしあげましょう!」
何を言っている……?
俺の意思とは関係なく頭を持ち上げられる。ある程度拒絶はする。首だけであっても妖力で抵抗はできる。だが、そんな抵抗は蚊にでも刺されたくらい、いや、それ以下の抵抗でしかないように持ち上げられる。
「……お、おい!?何をする!?」
俺はもはや口で抵抗するしかなかった。
「ふふ……。貴方を呼び覚ましてあげますよ。今後は私の忠実な部下として働いてください。」
そう言って、床に転がる体を何かの術で浮かせ、俺の頭をくっつけた。
「おはようございますぅ。私は山本五郎左衛門。よろしくねぇ、酒呑童子……。」
……そこで俺の意識は途切れた。
………………
…………
……
「っと、まぁちょっと長くなっちまったが、昔話だ。お前に首を斬られたことで、山本の呪縛から解き放たれたってところだろう。色々記憶が鮮明になった。……、俺の記憶を取り戻してくれてありがとうよ。その刀……、それが本物の血吸、童子切安綱だ。その刀を持つものは俺しかいねぇから、首を斬られるなんて思わなかったぞ。」
酒呑童子はハハッと笑いながら言った。そして、俺はその話を聞いたことがあるような気がする……。いつだ?いつだったか……。
伝説として伝わっている、酒呑童子は酒に溺れたところを討たれたはずだが、本当は酒呑童子と共に餓鬼を討伐し、身を隠したと。
鈴姉から聞いたような……。
――――――――
「ねぇ、ぼっちゃん?私たちのご先祖様は妖怪と仲良くしていたって言う言い伝えもあるんだよ。この間、蔵を整理しているときに見つけた文献からの話なんだけど、なんとあの酒呑童子が友達だったんだって!?すごいよね!?」
そうだ、こんな話があったな……。
「妖怪と仲良くっていいよね!今はまだまだ妖怪は排除すべきって風潮だけど、妖怪と仲良くなれれば、もっともっと世界が広がる気がするよね!」
鈴姉は相変わらず夢みがちなだなぁと思ったっけ。でも、この話をしたから、俺は妖怪と絆を深めようと思ったし、もっと世界を見てみようとも思った。きっとご先祖様もこんな気持ちだったんじゃないだろうか……?
「でも、その文献の最後は悲しかったよ。」
そうだ、その文献は俺のご先祖様である源頼光の手記だった。
「消えた友の姿を思い、ここに綴る。……我が友に幸多からんことを……。あわよくば、共にありたかった。って締めくくられていたの。急に消えちゃった友達の安寧を祈っていたの。でも、きっと友達が急にいなくなってすごい慌てたと思うし、いろんなところを駆け回ったと思う。……でも、最後には自分自身を無理矢理にでも納得させて、友の幸せを願ったんだ。その最後に願望も載せて。最後のこの文があるページだけ、妙にしわくちゃだったから、きっと泣いてたんだろうね。」
――――――
鈴姉から聞いた話をかいつまんで酒呑童子に話してみた。
「……なるほど……。そうだったのか。」
酒呑童子は落ち込んだ顔でつぶやいた。
「童子……。全ての元凶は山本だ。あいつは俺らが責任を持って倒してやる。お前はご先祖様と一緒にあの世で見てろ。」
俺は酒呑童子を憎むことができなかった。鈴姉を斬ったのは間違いなく酒呑童子だが、それも山本の呪縛のもとに行われた所業だ。俺は全ての怒りを山本に向けることで、報われないこの優しい鬼に許しを与えた。
「ありがとう。俺を解き放ってくれて。……おそらくだが、俺の魂がお前に執着というか、お前の中にある頼光の欠片に助けを求めたのかもしれないな。……お前は頼光によく似ている……。」
そう言って、酒呑童子は眠そうなまなこになり、幸せそうな顔をした。
「……そろそろか。最後の最後で救われた。今も昔も頼光の魂が俺を救ってくれる。ありがとうな、忠志。お前がなぜ、童子切安綱を作り出せたのかわかった。頼光の魂には俺がまだいるのだな……。」
そこまで言って、首の切り口からサラサラと砂が風に吹かれるように消えていった。
「ああ、安心していろ。もうそんな思いをする奴はいなくなる。」
俺も新たに覚悟を決めて、次の戦場へ思いを馳せる。背負うものが増えた。だが、これは重荷ではない。力だ。これが俺の力の源だ……!
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
酒呑童子は何も悪くなかった。
全ての元凶は山本五郎左衛門であった。
報われない心優しい鬼を雑に扱った奴は懲らしめてあげましょう!!
次回からまたちょっと変わった話になりますが、もう少しで未来が出てきます!
久しぶりです!笑
次回は2/21朝アップします!




