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最終前話 ハーレムパーティ後編

 アリスがつまらなそうにデスクの弘樹を見ている。


「うーん。やっぱり弘樹が寝てるのが寂しいなぁ」

「女子会って考えれば、私は十分に楽しく過ごせていますよ」


 リアルではパーティの経験が少ないのか、せせらぎが楽しそうに返事をする。


 それを聞いた理沙がヤレヤレと言いながら、立ち上がって弘樹に近づいた。


「せっかくだし、弘樹をローテーブルの近くへ動かした方がパーティらしくなるんじゃないか? ほら、床に座らせてベッドに寄りかからせようぜ」

「え? でも弘樹さん、寝てるだけだから横に倒れちゃいますよ?」


 里美が冷静に返すとアリスが急いで弘樹に近寄る。


「平気だよぉ。両側から密着して弘樹を挟み込めば支えられるよ」


 それを聞いたせせらぎと里美が慌てて駆け寄った。


 ややあって、女性同士でひと悶着しながら、弘樹を起こさないように床へ移動させてベッドにもたれさせる。

 その両側をアリスと朱音が密着して支えた。


「むふー、弘樹げっとぉー」

「じゃ、じゃんけんとはいえ、朱音がヒロの横!?」




 キ、キタッーーーー!!

 これ以上ない天国モードが、つ、ついに俺に訪れたぁ!!




 美女ふたりに挟まれた弘樹の興奮は最高潮に達した。




 やっとだ、やっとだよぉー!

 バレたら気まずいから目閉じてたけど、薄目開けて見るなら気づかれないよな?

 んん?

 おいおい!!

 みんな、生だとこんなに可愛いかったのか……。

 さすがアイドル、可愛いすぎる!

 そんな天使に両隣から密着で支えられてるよ。

 アリスちゃんに組まれた俺の腕が彼女の胸に……。

 あ、朱音が俺の横に密着する日が来るなんて……。

 みんなコスチュームがエロすぎる。

 あ、頭がどうにかなりそうだ……。




 満足そうなアリスと朱音とは対照的に、せせらぎと理沙、里美は不満そうだ。


「近くじゃないと嗅げないじゃないですか!」

「お前ら、乾杯してしばらくしたら交代だかんな!」

「順番は守ってくださいね!」


 アリスが弘樹と腕を組んだままでグラスを上げる。


「はーい! じゃあみんな、乾杯するよ? 準備はいい? メリークリスマスっ!」


 そんな感じで無事にパーティが開催された。


 不意に弘樹の鼻腔をくすぐる、トリートメントの香りが広がる。


 弘樹を挟んで右側にいる朱音が、彼の目の前に顔を出して左側のアリスの胸を覗き込んでいた。


「アリスちゃん、む、胸が見えすぎと思うよ……」

「そうなんだよねぇ。Sサイズは生地が小さくて上から胸がほとんど見えちゃうんだよ。でも大丈夫だよ。乳首はギリ見えてないから」


 会話につられた弘樹は、薄目を開けながら左側にいるアリスの胸元を盗み見る。




 うぉおおおお!

 全然大丈夫じゃねぇって!!

 アリスちゃーん!!

 ほとんど見えちゃってるよぉ!




 アリスのあまりに暴力的な胸元に、弘樹は顔に出さずに心の中で叫ぶ。


 そこへニヤニヤ笑った理沙が近づいてきた。

 四つん這いになって背中を反らせており、(ひょう)のように弘樹へにじり寄る。


「おいおい、なんだ朱音。水着のあたしの方がずっとセクシーだろう? なあ?」

「え? そりゃ理沙姉さんは水着だもん。ダントツでセクシーよ。てかエッチすぎ!」


 目の前へ迫る理沙に、弘樹の興奮レベルはすでに生まれて初めての領域へ到達。




 ああああ!

 い、い、色気のある理沙さんが水着で間近に!!

 っていうか理沙姉さんのそのポーズ、エッロ……。

 しゃ、写真集のポーズだよ、それ!

 理沙さん肌綺麗! 身体細っそ!




 弘樹は心配した。

 興奮のし過ぎで、実は目が見えているとバレるんじゃないかと。

 召喚が解除されないので寝落ち状態なのは間違いないし、身動きできないのも事実。

 しかし、目が見えて音が聞こえるのをみんなに知られたら、それは何だか気まずいと考える。


 これ以上の興奮は危険だと、弘樹はあえて視線を逃がした。

 だがその視線の先には、ありえないほど丈の短いワンピースを着たせせらぎがいたのだ。

 彼女は姿勢よく立っていて、弘樹に集まる女性たちが羨ましいのか、胸の前で両手を組んで祈るようなポーズで彼の様子を見ていた。


 床に座る弘樹からは、当然見上げる角度。


 そのせせらぎの様子を朱音も見たのか、彼女が声をうわずらせる。


「し、し、し、師匠! パ、パンツとふとももでできた絶対空域から光が!」


 それを聞いたせせらぎが、急いで股を手で隠す。

 彼女の指の隙間から、金色の光が漏れた。


 パンツからの絶対空域、パワーワードに負けた弘樹が自然とそれを確認する。




 ひ、光が見える!

 ご、後光……め、女神様……。




「み、見ないでください! お願いですから! だめですっ、だめぇだめなのぉ。み、みちゃらめぇっ!」


 せせらぎの必死の懇願を聞くや、寝落ちしているはずの弘樹はその状態から鼻血を出した。


 アリスたちを羨ましそうに見ていた里美と理沙が、弘樹の異変に気づく。


「きゃー、弘樹さん鼻血出てますよ!」

「おいおい、こいつ、寝ながら興奮してんのか?」


 きゃいきゃいと女子全員が弘樹の周りに集まり、甲斐甲斐しく弘樹の世話をする。


 周囲を美女に囲まれた弘樹は、今この瞬間で死んでもいいと思うほどに幸福を味わった。


 その後、弘樹に見せようと里美がスマホを立てかけて集合動画を撮ったりした。

 撮影が終わって弘樹の横が里美と理沙に譲られる。

 アリスがいつものようにデスクチェアに座ると、キーボードの上に置かれた紙を見つけた。


「ねぇねぇ、朱音。この数値がいっぱい書かれた紙は何なの?」


 同じく弘樹の隣を理沙と代わった朱音が、アリスの持つプリントを覗き込んで思い出したように手を叩いた。


「あ、それね! ヒロのスキル診断の紙だよ。バタバタして忘れてたわ」

「スキル診断が今、人気なんですよ。今日は買い出しで時間がないのに、弘樹さんが急にやりたいって言い出して。それで四十分も待ったんですよ」


 里美がみんなに召喚が遅れた理由を説明する。

 弘樹を挟んで反対側にいる理沙が、寄りかかる彼を密着して支えながら不思議そうに首をかしげる。


「なんだ? スキル診断って?」


 朱音と里美が説明したが、彼女たちはスキル診断装置のことを知らなかった。

 向こうの世界ではスキル診断装置が発明されていないようである。


「へー! 凄いねぇスキル診断! ねぇねぇこの診断結果のプリント、弘樹がみんなで見ていいって言ったんだよね?」


 アリスがスキルの診断結果のプリントを手に取ると、習得スキルの項目を楽しそうに読み上げた。


「あはは、何これー? 『寝落ちスキル』11レベルだってぇ! この限界突破って何? しかも、弘樹は人間の限界を超えてるって書いてあるよ? おもしろーい!」


「な! ななな……、何ですってぇぇええっっ!!」


 陽気に笑ったアリスに対して、朱音が叫び声に近い奇声を上げる。


「ちょっと朱音さん。弘樹さんのお母さんがビックリするから!」


 里美が慌ててたしなめたが、朱音は全く意に返さずにアリスへ飛びつくと、彼女の持つプリントを奪い取った。


「あ! 朱音ヒドイよ!」


 突然のことにアリスがむくれる。


「ごめんねアリスちゃん。悪いけど朱音に読み上げさせて! 前にヒロから聞いた話と違うのよ」


 朱音が改めて弘樹の習得スキルを確認する。




 習得

 『寝落ちスキル』

 熟練度:11レベル(限界突破)

 ※称号『人間の限界を超える者』




「11レベル……。限界突破……。称号『人間の限界を超える者』……マ、マジなの……⁉」


 朱音は目をむいてつぶやいた後、診断結果と弘樹を交互に見ている。


 弘樹は薄目を開けていて状況を把握しながらも、急展開する事態にただただ驚くばかりだった。




 なん、だと……。

 スキルレベルって10がMAXだっただろ⁉

 そもそも10レベルだって自分以外に聞いたこともないのに、11レベルかよ……。

 しかも、限界突破って!!

 称号って何だよ!

 『人間の限界を超える者』って寝落ちがだよな?

 喜んでいいのかコレ……?




 弘樹が衝撃を受けたように、朱音も相当に困惑した様子でプリントを片手に生唾を飲み込んでいる。


「ヒロが言うには、確か裏に付与された特殊効果が書いてあるんだ」


 朱音は震える手でゆっくりとプリントを裏返した。



次回、最終話「希望」

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