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最悪な異世界転移


「この、ドロボー猫!よくも、慎二先輩を取ったわね!」

「取ったわけじゃないわ!先輩みたいな仕事もできない女、願い下げって言ってたもん!」

橋の真ん中ほどで、我が総務部の若い部下の女性2人が、つかみ合いになっている。

飲み会で、2人は、競い合うように飲んでいたので、ハラハラしていたけれど、完全に酔っぱらったことで、普段の自主規制が取り払われたようで、営業部の男性同僚を取った取らないの大喧嘩になってしまった。


「福島さん、井上さん。落ち着いて!ね!」

「ほっといてください。藤堂課長!」

「課長は、関係ないですぅ!」

「え・・・!?」


 2人を引き離そうとしたとき、私は、2人から激しく抵抗されて、欄干を乗り越え、身体が空中に落ちるのを感じた。

ちらっと下を見れば、ごうごうと流れる、濁流。

昨日、線状降水帯が発生し、豪雨となったため、今日の川は、増水して、いつもより、水面が高く、濁流がすごい勢いで流れている。

そこに、落下!?うそっ!私、カナヅチで、泳げないのに!?


スローモーションで、部下の2人が、真っ青になって、手をさしのべて、何か言っているのが聞こえる。

私、死ぬの!?


濁流に落ち、身体が、水の中に飲み込まれる。何も見えない。息ができない、苦しい。

とにかく、水面に上がらないと!

かすかに目をあけると、光が見えた。光の方が、水面だろう。あそこに、なんとか。

必死で腕をかき分けているとき、頭の中に、不思議な声がした。


「・・・逆行・・・・・・・・・・30年。」


え!?何?


ぷはあああっ!

水面と思しきところに頭を上げれば、空気が、胸に入る。え?足が、底に、着く??


「ごほっ!ごほっぅ・・・。」

 ぶるるっと、顔を振って水気を飛ばし、咳きこみながら、目元、口元を手でぬぐい、ふと、正面を見ると、3メートルほど離れたところに、驚愕に満ちた顔をした、背が高く、堂々とした体躯の男性が立っているのが見えた。


「え?」

 男性の後ろには、建物が見えるけれど、見慣れた、高層ビル群ではない。左右を茫然と見回すと、整えられた公園のような場所で、そこの池の中にいるような?


「×△&#$~◇*○×@!?」

 男性が、何か、低く、恐ろしい声を発しながら、私のところに、ずかずかと近づき、私をいきなり、乱暴に池から引きずり出した。そのまま、肩に担がれ、お腹が、圧迫されて、思わず、吐きそうになる。

「離して!」

 思わず、大声を上げたけれど、男性は、意にも介さず、建物の中に入っていき、突然、私を、投げ出した。

 バシャン!盛大に水しぶきが上がる。

「きゃあああ!・・・え?」

 ・・・温かい。


 男性の後ろから、慌てて入ってきた2人の女性に、何か指示をして、男性が、出ていく。と、女性2人が駆け寄るように近づいてきて、無言のまま、ぱしゃん、と入ってきて、私に近づき、服を脱がしだした。

「え!?え!?何!?」

 抵抗しながら、辺りを見渡すと、どうやら、ここは、お風呂らしい。

水面には、白い花びらが浮かび、微かに、花の香りがする。

なるほど、びしょ濡れだったから、お風呂につれてきてくれたのだろう。

いきなり浴槽に放り投げられるとは思わなかったけれど、彼女たちが、脱がそうとしてるのも当たり前だ。浴槽の中で、服を着ているのだから。


「あの!自分で脱ぎますから!」

 けれど、2人には、通じないようで、 2人がかりで、無理やり、服をはぎ取られ、そのまま、抵抗も許されず、全身くまなく洗われた。

ゆっくり浸かることはなく、両手を取って、浴槽から引き上げられ、隣室に来ると、大きな鏡と化粧台がある部屋。


「え!?」


 鏡に映る自分を見て、驚愕した。45歳の私ではない。どう見ても、14か15歳の頃の私、だ。髪を一番長く伸ばしていた時期。しかも、自分だけれど、自分とは思えないほど、美少女になっている?


 隣室にすでに待機していた別の2名の女性が、大きなやわらかい布で、私の体から水気をふき取っていく。

濡れた髪も同時に、ふき取ってくれているけれど、吸水性が高い布のようで、布でぬぐわれただけで、かなり髪の水分が取れているのが、鏡に映る。

わあ、このタオル?いいな。私も欲しいな。どこのメーカーだろう?


 突然、鏡に、先ほどの男性が映る、と、同時に、2人の女性が、いきなり平伏した。

がたがた震えているように見える。

・・・え?まだ、私、服を着てない?


 疑問に思う間もなく、男性が、乱暴に、私を掴み上げた。

やさしさのかけらもなく、お腹に手をまわして、そのまま、ぐいっと。まるで、荷物を持つように。

「痛い!」

 手足をばたつかせたけれど、がっちりとした腕は、全く揺るがず。

「きゃああ!」

 どさっと、どこかに、投げ出される。

「何を・・・!?」


 私は、男性を見上げて、悲鳴を押し殺した。

私を見下ろす、冷たい、金色の目。その目に宿る光を、私は、知っている。

ヤバい。ヤバい。

心臓がドクドクと早鐘を打ち、頭の中には、最大限の警報が鳴り響いている。

こういう目をしている奴に、逆らったら、ろくなことにならない。


 男性は、自分が着ていた、ガウンのような服を脱ぎ捨てた。

そして、私の上に覆いかぶさってきた。


「いや・・・!いやあああああ!!!!!」



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