一匹目 めだかな私
___「@^$@さん、@:%$さん。」____________
雨粒が私の体温を服の上から吸い取っていく。
次第に額に温められた雨粒とは違う、ドロドロとした液体が流れ落ちるのがわかる。お巡りさんが白いハンカチで私の頭を押さえながら、誰かに何かを伝えている。救急車の人が色落ちしたオレンジ色の毛布を掛けてくれたけど、小さい頃のような、胸元が暖められていく甘美なものは感じられない。だって目の前には前方が押しつぶされた二つの車と、動かなくなった幼馴染の香我美が あ る か ら。
(かっちゃんとしゃべらなくなったのはいつからだろう・・・絶対聞かれるよね。幼稚園はずっと一緒だったし、小学校のクラスも何回か同じだった・・・。)
香我美との接点を必死に思い出すのは、女子の間で関わりが皆無であることがあまりいい意味を示さない。中学に上がる前、担任の先生に私が挙げた仲のいい友達に香我美の名前がないことに驚かれた。目を見開く様子からとっさに接点がないわけじゃないと答えた。先生は安心した様子で、それをほかの子にそれとなく伝えたら知らない間にほかの子も口裏を合わせていた。
「最低だな」
目の前のお巡りさんの声に心を見透かされたようで小さな悲鳴が漏れた。救急車の人が一斉にこちらを見る・・・。
「え。あ、あの・・・カエルが・・・いて」
「カエル?あぁ、もしかして苦手?」
「_____はい。」
「小さいのは平気だけど、僕も中くらいのは苦手だよ」
救急車の人はそう言って、担架に近寄ったアマガエルを草むらに投げ入れた。
(いつからだろうか。こんなにも嘘がうまくなったのは?)