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再会の花  作者: 十矢
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気づかなかったニブさ

ワヤワヤ、ガヤガヤ。


「かんぱーい。」

「何たのむー?」


という声。

そういうよく見る、かもしれない送別会の風景のなかにトーヤはいる。

トーヤとトモさんはアルバイト先の辞めてしまう、スタッフのための送別会にきていた。

フロアは違うけれど、送別会にはヒカルさんとリエさんも呼ばれている。

二次会がカラオケの予定が入り、そのカラオケ屋で四人でこのあと集まろう、という段取りが、一昨日の集まったシフト休憩中で相談して決めてあった。

とりあえずトーヤは、トモさんを探して店内の席で無事、合流をした。


「例のスタッフさん、もう少し続けてほしかったよね。」

「ですよねー。」


とか、周りで話しが進む。

トモさんがきいてくる。


「この前のプレゼントは持っているかい?」

「大丈夫。あとのカラオケで集まったときにしましょう。」

「そうだね。」

「あぁ、スタッフ減っちゃうね。少しシフト増やそうかな。」

「あれ、かせぎよくしますか?(笑)」


これはトーヤの冗談。


「スタッフも増えるときもあるけど、長めに働いてみると、やっぱり減ってくよね。」

「けっこう良さそうな人が早めにいなかったりして。」

「よくある、よくきく話しだよね(笑)」

「そうだよね。」

「トーヤはまだ続けられそう?」


少し淋しそうにトモさんがきいてくる。

思わずトーヤは、頼んでいたウーロン茶を飲む手を止めてしまう。

トモさんは、からあげを食べたり、フライドポテトを食べたりして、何気ない雰囲気をしている。


「いまのところ、辞めるのは考えていませんよ。」

「ていうか、トモさんって案外不意打ちですね。」

「いや、トーヤを試しただけだよ。」

「うわ、それはやられますね。」

「トモさんは辞めるとか、考えました?」

「いや、もっと働きたいかな。」


今度は笑顔での会話だ。


「まぁ、からあげでも食べましょう。」

「フライドポテトもあるし、お好み焼きでも頼むか?」

「じゃぁ、たこ焼きも一緒にどう?(笑)」


二人しての食べ物トークに、二人して大笑いした。

と、ちょっと笑いすぎたと、周りを見回してしまうが、他の皆も主役を囲んだり、食べ物やお酒で、がやついていて、気にはしていない。


「じゃぁ、あとで」

「あとでね。」


とりあえず食べ物を追加したあとで、それぞれ席を離れて、主役の辞めてしまうスタッフにあいさつしたり、飲みものを受け渡しあったりする。

あいさつをすませて、トーヤは席についた。

いつの間にか近くにヒカルさんがいた。


「トーヤこっちきて。」


と呼ばれてしまう。


「この前の話しは覚えてる?」

「大丈夫そう?」

「カラオケですよね。二次会のときに合流でいきましょう。」


すると、こちらもヒカルさんは不意打ちぎみに


「りぃちゃんをみてみなよぅ。」


と言う。


「え、何です。どの辺ですか?」


少しドキッとしながらもみてみる。


「りぃちゃん、気合入ってるでしょ。可愛くない?」

「ヒカルさんも充分可愛いですよ。」

「やだ、トーヤは!」

「てか冗談はいいし、別に!」


トーヤは冗談でいったつもりはないけど、軽くスルーだった。


「ほら、もう一回みてみなよ。」

「りぃちゃん、ってやっぱ可愛いでしょ!」

「わたしよりモテるんだから、安心しちゃダメ!」


どうやら、以前のモテルスキルの話かも。


「ヒカルさんも充分モテですって。今日も可愛いです。」

「あ、フライドポテトもどうぞ。」

「ありがとー。って食べるけどさ。それじゃなくて」

「あ、ウーロンなんだ。トーヤはアルコール飲まないの?」

「飲めないです。まぁ、飲まないです。」

「ははっ。やっぱトーヤおもしろだね。」

「でも残念だわ、トーヤは。わたしヒカルはトモくん狙うからね。」


一瞬会話の流れについていけてなかった。

けれど、とりあえず、もう一度ききなおし。


「え、トモさんとこれまで親しかったでした?」

「気づかなかったな。」

「そうニブイのだよ、トーヤはね!」

「そっか。ニブイのか。」

「そうだね、トーヤはニブイ!」


どうやら、ヒカルさんは酒を飲んでいて、ハッチャけトークがしたかったようだ。

あとで、トモさんを呼んできて、交代しようか、と考える。

考えて辺りを見回すと、リエさんと目が合った。

3秒ほど、見つめ合ってしまい、思わず目をそらしてしまい、そのときにはトーヤはドキドキしていた。


「あ、たしかに、リエさんキレイだわ。」

「そうでしょー。」


ここにきてやっぱりニブイのか、と思いなおす。

やっぱりトーヤはかなり、ニブイのかもしれない。

あ、隠れていたトモさんの顔は発見。

移動して、少しだけつめてもらいながら、トモさんの側にいき、肩をつつきつつ、トモさんに声をかける。


「あとで、ヒカルさんのところにもきてね。」


と一言いいそえてみた。


「わかった。こっちが区切りついたらね。少し待っててもらって。」


という返事。


「わかりました。」


また、そこからヒカルさんの居る場所まで移動する。

ヒカルさんのとなりにいくと


「ハハッ、トーヤはおせっかい焼きだね。」

「ヒカルさんこそ、アルコール入れると、そんな感じですか。」

「わたしまだ飲んでないーしぃ。」

「いや、これは飲んでる勢いでしょう。」


でも、本当のところは分からないな、とヒカルさんの横顔を見て、ふと思う。

ヒカルさんと、ともだちになって少し経つ。

積極的で明るい。

話し上手でともだち想い。

きっとモテる。

でもときどき淋しそうにもみえる。


「ヒカルさんってともだち想いだし、きっとモテるし。」

「ともだち多いですよね。何で声かけてくれました、あのとき?」

「あのとき、はどのときかな、トーヤくん?」

「その質問ってホントは覚えていますよね。」

「いーや、覚えていないよ。」

「って、冗談、冗談。あれ、どの冗談だ?わからなくなったよ、トーヤ。ハハ。」


えーと、これは酔っている。


「いや、それとも酔ったフリした作戦行動か!」

「いや何の作戦よ。」


なかなかのつっこみだ。


「何か作戦をたててるのかと、思った、という話しです。」


だんだん、トーヤも周りの上気して、蒸気したアルコールの匂いで酔ってきた。


「よし、寝よう。」

「こういう時はリセットだ。じゃぁ、ヒカルさん、少し横になりますね。オヤスミー。」

「お、寝るのかトーヤ。わかったー。オヤスミ。」


このガヤついた席のところで、目の前のビンやコップを少しどけてみて、机の上で腕まくらをした状態で、少し寝ることにする。

ヒカルさんが席を立って、戻ってきたり、

トモさんが、近くにきたりする音がする。

何やら、トモさんとヒカルさんで話している。

途中リエさんがくる。


「やっとこっちこれたよー。トモさんとひーちゃんで何の話し?」


会話が始まりかけて


「あ、りぃちゃんこっちね。」

「呼ばれたー。またあとでねー。」

「いてら!」


またすぐに、リエさんは、主役スタッフに呼ばれていってしまう。

どのくらいトーヤは眠っていただろう。

いつの間にか、リエさんに肩をたたかれた。

次に、わきの下、お腹ら辺をつかまれる。

一瞬何が起きたのか、と思いガバッと、起きて、そしてのそっとした動きで起きた。

リエさんとヒカルさんと、トモさんが


「そろそろだよっ。起きなよ、トーヤ。」

「ほら、起きろー。」


と声で起こしてくれて、様子みつつ、トーヤの周りに集まってくれていた。

肩をたたいて、起こしてくれたのはリエさんみたいだ。


「ごめん。けっこう寝てたかも。」

「こういう雰囲気って、けっこう寝やすくってさ。それに意外に眠くってね。」

「お、そろそろ解散だよ、トーヤ。」

「二次会いくよー、トーヤくん。」


と、ヒカルさんと、リエさんが話す。

起き上がって、そろって四人となり、会計をみんなですませてきて、お店を出た。

たしか、再会のきみだったか、リエさんだったか、判別つかないけど、幸せな夢をみていた気がする。

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